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『コーチ・プライム ~勝利の方程式~』S1-E4

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シーズン1, エピソード4「最高のシーズン」


いよいよシーズン1の最終回。冒頭ではチームミーティングの様子が映し出される。コーチ・プライム(ディオン・サンダース)はみんなの前で、いきなりこう切り出す。

「"I don't want to be a part of a family."(この家族=チームの一員でいたくない)と言っている選手がいる。この選手を"dismiss"(追い出す)か "give him a second chance"(チャンスを与えるか)で悩んでいる。君たちの意見は?」

時間をあげてみては、家族だから許してあげたい、家族の他のメンバーのことを考えるべきだ・・・と他のコーチや学生たちからいろいろと意見が出たあと、コーチ・プライムは多数決を取る。「退部」に賛成の学生が多かったので、コーチはその場でその学生に "You're out."(出てけ)と言い渡す。

背番号は6番を付けてるからオフェンスの重要ポジションの選手だったのだろう。彼は何も言わずに部屋から出て行った。ミーティングに出ていたので晒し者のようになった。事前にその学生と個別に話すことはできなかったのだろうか。教育者としてこの処分の仕方はどうなのかとちょっと疑問に思った。

だが、その後のインタビューでコーチが語っていたのはこういうことだ。「コーチとしては全体を見なければならない。チームにとって有害なものは取り除く。大事なことはあとになってわかる。そのとき後悔しても遅い」

ジャクソン州立大(JSU)の次の対戦相手はサザン大(SU)である。ホームでの試合で熱烈歓迎を受け、ご機嫌のプライム。試合は35対0と圧勝する。彼らが目指すのはプロのレベルである。

その後もJSUは快進撃を続ける。選手らは学生でもあるから、勉強もしなければならないが、週末の試合が終わるとまたすぐ練習の日々。大変な努力を強いられながらも、高い目標に向かって突き進んでいく。

イザイア・ボールデン*という選手がいるが、コーチから "He's a pay check." と言われている。checkとは「小切手」のことだ。アメリカでは多くの現金を持ち歩くのは危ないので、金持ちではなくても普通の人たちが日々の支払いに小切手を使っていた(今はきっとカードや電子マネーだろう)。この文は字幕では「金の成る木」となっている。彼は確実にプロになれる選手だ。

イザイアやトラヴィスの活躍もあり、チームはなんと11連勝!すごい記録である。一方、コーチ自身も来シーズンに向けて他のチームから引っ張りだこ。移籍先がどこになるかが話題となる。テキサス大やフロリダ大などからのオファーもある中で、コロラド大ボルダーが有力だと伝えられる。どこの国でもマスコミが嗅ぎつける力はすごい。

そして迎えたチャンピオン戦。相手は以前も対戦して圧勝したサザン大(SU)だが油断は禁物。前半は優勢で楽勝に見えたが、みるみる追いつかれそうになって焦るJSU。コーチの檄が飛び、後半持ち直して何とか勝利する。チームはついにSWAC(Southwestern Athletic Conference)で王者となった。

チームを率いて、無敗でSWACの優勝に導いたコーチ・プライムの実績は大きい。最後のミーティングで、コーチは自分の口から来シーズンは他大学へ移籍することを選手たちに話す。別れはどんな時もつらいものである。だが選手たちはコーチへの感謝の言葉を口にし、お互いを称え合うのであった。

(字幕翻訳 各務くみ子さん)

*イザイア・ボールデン選手は、翌2023年のドラフトでNFLのニューイングランド・パトリオットというチームに入団。契約金は4年間で約4億円を超えていたが、プレシーズンで大怪我をして故障者リストに載り翌年解雇されてしまう。その後、練習生として再契約に至った。プロになってもケガとの闘いは続き、生き残りは厳しい世界である。
参考:Isaiah Bolden - Wikipedia


著者:浦田貴美枝(映像字幕翻訳家)

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