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事故物件巡りの話【番外編 タワマンの女性 後編】

突然の調査対象の登場にびっくりして、後ろの方で尻もちついてる藤原さんには申し訳なかったが、彼のことはしばらく放置することにして、視れるうちに彼女を観察することにした。
いつまでも視れるわけではなく、すっと消えるときが多いからだ。
年のころはそうだな、20代中ごろから後半ってとこ。
髪の長さはあごから肩くらいのボブ。
色は栗色にしている。
座っているから正確にはわからないけれど、背は低そうな感じ。
ジロジロ見られているにもかかわらず、彼女は気にする風でもなく、さっきから紅茶を嗜んでいる。
綺麗にティーカップを持ち、上品な感じがする。
小柄で華奢な感じだな。
女優でいうと、浜辺美波ちゃんのような・・
やばい、好みだ。笑
そういうときは気を付けないといけない。
過去にえらい目に遭いかけている。

俺が視える人は、基本、俺に無関心である。
いつも心ここにあらず、といった感じだ。
ただ過去に一度、すごい好みの女性が視えたとき、あまりにもまじまじと見すぎて、向こうが俺のことに気付いてしまった。
その女性はまったく別の方向を向いていた顔を、ゆっくりとゆっくりと俺の方に向け、俺と目が合ったときこう呟いたのだ。

「視えるのね、あなたは。。」

そのときのうれしそうな顔が忘れられない。
相思相愛で俺もうれしかったから、とかじゃなく、そのあと、クビだけになって俺を追い回してきたからだったのだが。

その恐怖体験から、観察するときは注意深く、且つ気づかれないようにそっとするようにしていたが、目の前の美波ちゃん似の美人は一向に俺に興味なく、午後のティータイムを楽しんでいた。

「あの、桑津さん・・大丈夫ですか?
 さっきから何もしゃべらなくてなって、
 逆に怖いんですが・・」

あぁ、藤原さん、ごめんね。忘れてたわ。笑

「すいません、この子、ちょっとタイプ
 だったのでつい・・」

なんて言えようもなかったので、藤原さんの方を振り返って、

「すいませんすいません。
 だいたい、特徴はつかめたんで、
 これからその先生に会いに行って、
 心当たりがないか聞きたいんですが、
 ご都合、どうでしょうか?」

といって誤魔化した。
そして藤原さんが開業医の先生に連絡を取っている間に、もう少し彼女を観察しようと部屋の中を歩きながら、彼女の様子を見ていた。
窓に向かっていったとき、窓にカーテンが掛かっているのがみえた。

「せっかくのタワマンやし、
 絶景を拝むくらい許されるやろ。」

と独り言を言いつつ、一斉にカーテンを引いた。
大阪の町を一面に見渡すことができる絶景がそこに広がっていた。

「くぅぅ、たまんねー!!
 これはちょっとした王様気分やなぁ。
 おねえさんもそう思いませんか?」

って心の中で呟きながら、彼女の方を振り向くと、
彼女はさっと消えていった。

「かわいかったのに。
 もう少し視たかったなぁ。」

それぐらい、今回の調査対象はチャーミングだった。

それから4219号室の主、若い開業医の先生のところへ向かった。
ちょうど午後から休診の曜日で、予定もなかったとのこと。

「あの件でといったら、すぐに来てください、
 と言われましたよ。
 相当まいってるんでしょうねぇ。」

運転席でハンドルを握りながら、藤原さんは本当に心配している様子でそう言った。
いい人だなぁと感心した。

「あんだけ可愛かったら俺なら毎日
 出てくれてもいいんですけどねぇ。」

とは言えず、

「そうですよね。帰っていきなり人が
 いたらビビりますよね。」

とだけ答えた。
俺だって相手に合わせることぐらいはできるのだ。

そうこうしているうちに、阿倍野区にある大きくも小さくもない内科医院に到着した。
看板は「伊藤医院」となっている。
オーナーは伊藤さんか。
入り口で軽い挨拶を済ませた俺たちは、待合室へと通された。
午前中だけの診療だったせいか、受付の人や看護師さんはもうおらず、伊藤先生がお茶を入れてくれた。
この医院はお父様からの代から医院を開業しており、お父様が高齢のため、急遽引き継いで開業医をしているそうだ。
それまでは府立の急性期でER担当をしていたとか。

「僕はそういった現場の方が向いていると
 思ってるんですけどね。
 親父の言うことには逆らえませんから。苦笑」

30代前半くらいの年齢の伊藤先生はサバサバした性格で、俺は好感を持った。

「ほんまはここに住め、って言われてる
 んですが、僕はずっと戸建に住んでた
 せいか、マンションに憧れがあって。
 景色がいいじゃないですか、
 マンションって。
 しかもタワマンだとほんと絶景です。
 ここを引き継ぐ条件の一つとして、
 少し援助してもらってあそこを
 買ったんです。
 それぐらいは言っても怒られないかなって。」

前言撤回。やなやつだこいつ。笑
天然系で悪意がないけど、人をイライラさせるタイプだ。しかもイケメン。(許すまじ!)

「念願叶ってあんな高いタワマン買ったのに
 住めないんじゃあ、そら困りますよねぇ。」

嫌味の一つを言ったつもりだったが、伊藤先生は一向に気にしていない様子で、会話を続けた。

「ほんまそうなんですよ。どうしようもなくって。
 いや、最初私の脳に何か障害が発生
 したのかって真剣に悩みました。
 それこそMRIやらCTやら受けましたが、
 まったく問題なしで。」
「さすが本職ですね。
 俺も自分で言うのも何なんですが、
 頭がおかしいんやと思います。
 語弊とかではなくて、脳みそに問題が
 あるから、視えるんやと思っています。」
「桑津さんは何か事故にあったりしたんですか?」
「えぇ、まぁ。15歳のときに、3階の窓から下に落ちましてね。」

いつもの鉄板ネタをひと通り話してみせた。
藤原さんも伊藤さんも驚愕の瞳で俺を見ている。
そうなのだ、「視える」なんていったら人はかなり訝しがるが、3階から落ちたからそうなったのだ、と筋道つけて説明してあげるとすんなり受け入れてもらえる。過去の調査報告などで学んだことだった。

「というわけで視えるんです。
 まぁ、時が経つにつれて脳の損傷部分も
 回復してきているみたいですから、
 昔ほど頻繁に視ることはなくなりました
 けどね。
 そうそう、伊藤先生、
 紅茶ってお好きですか?」

ネタの途中で突然核心に迫ってみる。
これもいつも使うテクニックの一つだ。
こういう聞かれ方をすると、人はとっさに嘘はつけない。

「え、紅茶ですか?どうして紅茶のことを?
 うーん、滅多に飲みませんねぇ。
 僕はコーヒー派なので。」
「なるほど。では、先生が感じた女性の
 気配ですが、特徴とかはっきりと視えたり
 しましたか?」
「いえ、いつも気配や後ろ姿だけで。。」
「ではなぜ、女性が、と思ったのですか?」

伊藤先生は少し考えてから、こう答えた。

「すみません、それもそうかなと思った、
 としか説明できないんです。」

「じゃあ、女性じゃないかもしれないじゃないですか」なんて無粋なことは俺は言わない。

そもそもどうして俺が視えるのかってことを説明せよって言われたって、正確には説明できないんだし、世の中は説明できないことだらけだ。

しかも、先生の勘は当たってる。今回は女性だ。

「なるほど。先生の直感は当たっていますよ。
 これから少し込み入った話になりますが、
 よろしいですか?」

伊藤先生の喉ぼとけが上下するのを見届けてから、俺は言葉を続けた。

「伊藤先生の周りで、紅茶に凝っていたり、
 好んで飲む女性で、小柄、髪の毛は
 これくらいのボブ、体格は瘦せ型で華奢で、
 俗っぽい言い方で申し訳ありませんが、
 女優の浜辺美波ちゃんのような、
 先生テレビとかみます?あ、みますか、
 先生もタイプですか?俺もです。
 脱線しましたが、そんな可憐な感じの
 女性、覚えがないですか?」

一気にここまで伊藤先生に問いかけた。
沈黙が続いた。
これは何かある。

「伊藤先生、大丈夫です。
 彼女から悪意は感じられませんでした。
 心当たり、あるんでしょう?」

そう促すと、伊藤先生は椅子の上で深くうなだれてから、こう言った。

「はい、たぶん・・菜々美だと思います。
 桑津さんが紅茶のことを聞いてきたとき、
 内心とても驚きました。
 桑津さん、さっき僕に、
「なぜ姿が視えないのに女性だとわかるのか」
 って聞きましたよね。理由があるんです。
 紅茶の匂いがするんですよ。
 僕の家には紅茶のパックすら置いてないのに。
 それで思ったんです。
 彼女かもしれないって。」

それから伊藤先生はゆっくりと「彼女」とのいきさつを話してくれた。
「彼女」こと、篠田菜々美さんとは伊藤先生が以前勤めていた病院で出会ったそうだ。
深夜の緊急で運び込まれてきた。手首を切って自殺を図ったらしい。
たまたま傷が浅く、心配して見に来た友達が発見したのが早かったため、一命を取り止めた。出会いは患者とその担当医、の関係だった。
順調に回復した菜々美さんは退院後、伊藤先生にお礼を言いに来たそうだ。
そこからお付き合いが始まったとのこと。
(「だから医者はモテるからいやなんだ!!クソクソクソ!!!」という思いが俺の中でふつふつと湧かなかったかというと嘘になる。苦笑)

話を聞くと、伊藤先生、かなりモテるらしい。
そりゃそうだよなぁ。
若いし、清潔感あるし、実家が開業医で太いし。
モテない要素がない。
ただ、どちらかというと「モテようとしてモテる」タイプじゃなく「モテようとは思ってないけど、モテちゃうし、面倒見がよくて相手にしちゃうタイプ」らしく、お付き合いするのはいいが、うまく続かないようだ。

「僕、どっちかというと独りが好きなタイプで、お付き合いにかける時間をあまり持ちたがらないというか、なんというか。めんどくさがりでして。
今も彼女がいないのはそういうところなんだと思います。
その当時はER(緊急救命室)担当ということもあって、激務に次ぐ激務で、菜々美ともろくに会う時間も作れなかったと後悔しています。」

そんなこんなで、元々精神的に脆かった菜々美さんとはうまくいくはずもなく、伊藤先生が病院勤めをやめて開業医になってすぐぐらいに、すれ違いのすえ別れたらしい。

それから一度も連絡を取っていないから、今はどうしているかわからないのです、と言っていたが、おそらくもうこの世にはいないんだろう。
俺が視えているくらいだから。

それにしても、解せないのはなぜ4219号にしか菜々美さんが現れないのかということだ。
その点を伊藤先生に聞くと、おそらくだけど、と前置きした後、こう話した。

「彼女ね、大の高所恐怖症やったんです。
 それは知ってたんですけど、せっかく
 タワマンを買うたんやし、一度あの部屋から
 見える絶景を見せてあげたくて、連れてきたん
 ですけど、マンションの前について、
 ほら、あそこの部屋だよって
 二人で見上げたとたん、
 「これから42階まで行かなあかんと
 考えるだけで死にそう。。」
 とか言い出して。。
 冬の寒い日でしてね。
 料理も用意してあったし、どうしても
 今回だけはがんばってあがってって、
 頼み込んだんですよ。
 立ちすくんでいたのがマンションの真下で、
 タワマン風(かぜ)っていうんですか、
 あの吹きさらしの風が当たって、
 寒すぎでしたし。」

凍えてしまえばいいのに。。

「それで僕はこう言ったんです。
 目をつぶっていればいいよ、僕が手を
 引いていくから。
 それなら怖くないでしょう?って。
 それでなんとか部屋の中に入れることが
 できて、二人寒さで凍ることは免れました。」

「それはすてきなおはなしですね。(棒)」

そこで思わず聞くのやめて帰ってやろうかと思ったけれど、男の嫉妬ほど惨めなものはあらへんで!っていうオカンの教えを思い出して、俺は最後まで聞くことにした。

「結局彼女、行きも帰りも部屋の中に
 入るまで、一度も目を開けていないから、
 エレベーターや廊下の印象はまったく
 なかったんやと思います。
 だから、あの部屋の中でしか彼女は
 出ないのかと。
 結局、部屋の中でも、夜景など一切
 見てませんからね。
 考えてみたら、高所恐怖症の彼女にとって、
 あの部屋からみる夜景など恐怖の対象で
 しかないわけです。
 よくもまぁこんな苦痛を味合わせて
 くれたなと呪って出てきたのかも
 しれませんね。
 そういう点でも、あの夜景をこよなく
 愛する僕とは相性が最悪でしたね。」

ガッテンガッテンである。
藤原さんも妙に納得してうなずいていた。

「でも困ったなぁ。
 まったく知らない人ではないと確信は
 持てたものの菜々美とはもう終わったんです。
 幽霊としてもあの家に居られるのは
 ちょっと・・。
 どうにかなりませんかね、桑津先生。」

はい桑津先生キター。
何度も言うが、俺は霊媒師やない。
藤原さんにも田澤の親分を通してそこは重々言うてもらってるし、藤原さんもこの伊藤先生に言うてるはず。
俺は思いきり藤原さんを睨みつけたが、思い切り目を逸らしやがった。
こいつ・・伊藤先生にそのこと言うてないな・・。
さっきからびみょーにイライラしていたのが悪かったのか、俺は柄にもなく、伊藤先生に少しきつめの言い方でこういった。

「先生、よう考えてくださいよ?
 菜々美さん、高いとこ、怖いんですよね?
 そんな菜々美さんがわざわざ死んでまで
 42階に上ってきてるんですよ?
 そこんとこ、男やったらもっとこう
 漢気発揮してもええんちゃいますか!
 それにね、俺は霊媒師やないんですよ。
 除霊とかできませんしたとえ出来たとしても、
 何か思いがあって出てきてんのに、
 消えろとか俺の口からよう言いませんわ!!」

伊藤先生がきょとんとした顔をしている。
あまり普段、人から強く言われてないんだろう。
先生!先生!って言われる立場だろうし。
天然といえば、天然。
ただ、俺には関係ない。
言うことは言いますよ、ってのも調査の条件に入れてる。(藤原くん、そこも説明したのかい?苦笑)

「えっと、桑津さん。
 僕の言葉に気分を害されたのなら、謝ります。
 こういった調査をよくされていると藤原さん
 からお聞きしているので、つい、解決までを
 すがってしまいました。
 一般的なアドバイス?で結構です。
 調査費用に関しては、ここまでで正規を
 お支払いしますし、アドバイスでの
 追加費用もお支払いします。
 どうかお願いします。」

伊藤先生は姿勢を正して、こう言ってきた。
根は真面目な人のようなので、まぁいいか、と思い、俺はこう言った。

「俺もまぁ、言いすぎました。
 追加費用など結構です。
 ただ私ができることは少ない。
 一般的かどうかはわかりませんが、こういう
 ケースの場合、やはりあなたに何かを
 伝えたくて、菜々美さんはわざわざ
 怖い思いまでして、タワマンのあの部屋まで
 行ったんでしょう。
 何か心当たり、ありませんか?
 それが解決したら、すっといなくなった
 ケースが多いですよ。
 月並みな方法で、俺もほんまかなと思う
 とこあるんですけどね。
 あと俺の解釈としては、彼女側の問題だけや
 なくて、先生側の問題でもあるんちゃうかな
 と思うのです。
 先生としても、何か思い当たる節、
 ないですか?」

そう告げると、伊藤先生は少し考えたが、すぐには思い浮かばないようだ。

「また何か思い出したら、ここに連絡ください。
 相談相手にはなれると思うので。」

そう言って俺と藤原さんは伊藤医院を離れた。
(帰りの車内で藤原さんに人を霊媒師扱いしたことを責めた。苦笑)


後日、伊藤先生から電話があった。
あれから意を決して、数週間ぶりに自宅に帰ってみたとのこと。
俺は彼女がどこに座っていたかを伊藤先生に伝えていたので、その反対側に座り、誰もいない空間に向かって、伊藤先生はいろいろと話しかけたそうだ。
するとまた、どこからともなく紅茶の匂いがしてきたらしい。
匂いが濃くなる方へと歩いていくと、食料品のストックを置いてある場所へと行き着いた。中を探ってみると、ブルーのプレゼント用包装紙に包まれたスチール缶が見つかった。
そこで、あっ!っと記憶が蘇ってきたそうだ。
これは彼女がいつか何かの記念でプレゼントしてくれたものだと。
腐らない食料品だし、その時が来たら開けて、と言われていたので、とりあえずここに置いておいたんだっけ。
中を開けてみると、紅茶の茶葉だった。
匂いはここからしていたようだ。
そこにはメッセージカードが添えられていた。

「紅茶もたまにはいいものよ。
 私もがんばって高いところにも慣れるから、
 いつかあのテーブルで一緒に紅茶を飲もうね。
 そのときは、あなたが大好きな景色を私も
 楽しめることを願って。 菜々美」

不意に、伊藤先生の目から、涙が溢れてきたそうだ。
そうか、あの約束を君は覚えていてくれたのか、と。 

実は伊藤先生は紅茶を飲まない、のではなく、飲めないのだそうだ。
どうしてもあの紅茶特有の渋みが苦手だとかで。
それを事あるごとく、菜々美さんに揶揄されていたらしい。
あるとき、耐えかねた伊藤先生は菜々美さんにこう約束したそうだ。

「菜々美だって高いところがあかんやん。
 誰にでも苦手なことはあるわ!
 君が高いところ克服するんなら、
 僕も紅茶を美味しくガブ飲みしたるわ!」

そんな約束などすっかり忘れていた。
もう愛という感情を菜々美さんには抱いてはいなかったのだが、メッセージカードの内容から、その当時菜々美さんはそういう思いでいたのかと、なぜそれに気づかなかったのかと。
不意に出た涙は、そういう思いから出た涙だったのかもしれない。

そして伊藤先生は、正式な淹れ方などわからなかったそうだが、なんとかお湯を沸かし、家に会った茶こしを使って、紅茶を淹れた。
それはきれいな水色だったそうだ。

二つのティーカップを一つは自分の方に置き、もう一つは菜々美さんが座っているであろう席に置いた。
紅茶が苦手な伊藤先生には、やはり少し渋かったらしく、顔をしかめた。

「ほんと、これだからお子ちゃまは。苦笑」

そのとき、そう揶揄しながら笑う菜々美さんの姿が、はっきりと視えたそうだ。

その日からもう、彼女の気配を感じることがなくなったそうだ。
後日、彼女の知り合いに連絡を取り、菜々美さんが今どうしているかを念のため確認したところ、やはり亡くなっていた。
自殺などではなく、病死であった。
またその知人を介して、お墓参りに行く予定だと伊藤先生は言っていた。
桑津先生に頼んで本当に良かった、そう言って伊藤先生は電話を切った。

だから、先生じゃないってば。苦笑
先生との会話を思い出しながら、俺はさっき茶葉から入れたばかりの紅茶を楽しんでいた。
その後、伊藤先生は少しずつだが紅茶も飲むようになり、調査のお礼として俺の事務所にも高級なアールグレイの茶葉を送ってくれた。
俺は普段は豆から挽いて淹れるほどの珈琲好きなのだが、ときには紅茶も悪くはない。

そうそう、また藤原さんから連絡が来ていたっけ。
今度は彼の友人がボロ戸建を買ってリノベしようとしたのはいいけど、リノベの工事中ずっと視線を感じるので怖くて工事ができなくなっているっていう相談だったな。
だから素人のDIYはやめとけってあれほど。。
仕方ない、行ってみるか。
タワマンの次がボロ戸建って、不動産ってほんと、奥が深いなぁ。
そう呟きながら、俺は過ぎゆく秋を感じつつ、今は午後のティータイムを存分に味わうことにした。





この物語は、ほぼフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。



次回予告!

「事故物件巡り 番外編 
 ジャッキアップでコッカラッス?!の巻」


冗談です。笑

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