甘美なパラソムニア
薬を飲んで眠りにつく。
しばらくするとぐわっと廻って。
心地の良い感覚が脳から全身に伝わる。
恍惚として力が抜ける。
朝目が覚めると。
覚えのない身体の傷。
覚えのない煙草の吸殻。
覚えのない血塗れのティッシュ。
覚えのないSNSの投稿文。
目を瞑り。
息を吸って。
ゆっくりゆっくり数えて深呼吸する。
朧気な。
夢のような記憶の欠片。
嗚呼。
私がやったのか。
洗面所に向かい。
鏡に映る虚像。
唇に触れる。
朱殷色に染まった口周り。
視線を手首に落とす。
同じ色。
触れると傷は腫れ膨れ上がり。
皮がめくれチクチクと。
鏡に映る虚像。
光のない眼。
晩にはあんなにも美しく見えたのに。
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