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綺麗な月も近づけばただの塵

布団に身を投げる。

腕をのばし。手をかざして。

指の1本1本。爪の1本1本。
手の甲の骨。掌の肉感。
 青白い皮膚の下を巡り突起を見せる血管。
ポツポツと小さく目立つ毛穴。
近付けるとぬめった温かさを感じる。

目が見える。見慣れたはずの天井。

頬をつねる。私のからだはここにある。

血が流れている。生きている。皮膚がある。
内蔵がある。感覚がある。生きている。

画面に収められた私を見る。

立体から、平面へと。

嗚呼これだ。

美しかった。

画の様だ。

さらさらの髪の毛。長い睫毛。絹のような白い肌。

ゴワゴワと広がる髪。抜け落ちる睫毛。浮いて滲み出る隠し痕。

ずっと不思議だった。

自分に実体があることが。

ずっと奇妙で気味が悪かった。

自分が実在することが。

私の居場所はここじゃない。

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