DJブース構築奮闘記 〜10年に渡る試行錯誤の末路〜 ❷スチールラック・メーカー4社を徹底比較
前回は私がDJブースに求める条件を6つ紹介しました。その結果、その条件に見合うものはスチールラックしかない!という結論を読者に押し付けたところで終わりました。
今回はスチールラックの代表的なメーカーを4社(ルミナス/アイリスオーヤマ/エレクター/メタルシステム)取り上げて比較・分析をしていきます。
果たしてDJブースに最適なメーカーはどれでしょうか。
◆ ルミナス
ルミナスは25年の歴史を持つ国内メーカーで、日本におけるスチールラックシェアは業界No.1です。
・棚板サイズ
幅は全部で8種。DJブースに適した100・120・150といったサイズもしっかり揃っています。
ちなみにDJブースに適した奥行きは、個人的には45cm以上を推奨しております。これはターンテーブル(Technics SL-1200系)を縦置きにした長さです。また、昨今のCDJ-3000やDJM-A9といった比較的大型の機材の奥行きも45cm前後です。つまり奥行き45cm以上の棚板を選んでおけば大抵の機材は載せられます。
ルミナスは全てのサイズの棚板で奥行き46cmが選べます。
また、何かと便利なハーフシェルフも一部サイズで取り扱っています。
・棚板耐荷重
DJブースにおける耐荷重は実際どのぐらい必要なのでしょうか。
例えば重たいターンテーブルで12kg、大型のDJミキサーは10kg前後です。つまりどんなに機材を載せても50kgを超えることはほとんどありません。
また、レコード100枚で約20kgといわれていますので、120cmの棚板にぎっしり並べたとしても400枚程度、つまり約80kgです。
ルミナスの耐荷重はレギュラーシリーズでで250kg。また、軽量化したスリムシリーズでも135kgと、DJブースとしては十分な強度です。
・デザイン/カラー
スチールラックはどうしても安っぽく見えてしまう、という欠点があります。
しかしルミナスではレギュラーの棚板以外に、ウッド系の棚板やサビに強く上質な光沢のあるプレミアムシリーズがあります。これらを選ぶことでデザイン性を向上させることができます。
・オプションパーツ
ルミナスには豊富なオプションパーツがあります。
耐振動性の要である突っ張りポールや、補強コの字バー。
ポール2本で固定できるハーフシェルフは頭上に設置するとちょっとした物置に便利です。
レギュラーの棚板に載せるウッドシート、ブースを安定させる円形アジャスター、落下防止の柵など、ここで紹介するパーツ以外にもかなり豊富に取りそろえています。
・価格
ルミナスの価格はどうでしょうか。
120サイズの棚板1枚の価格を見てみましょう(パーフェクトスペース本店で試算)。
幅121.5cm × 奥行き46cmの棚板で比較
・レギュラー(5,480円)
・ウッド(8,580円)
・プレミアムライン(6,980円)
・プレミアムラインソリッド(8,980円)
画像のような120×46サイズのレギュラー棚板3枚+90cmのポール4本で構成する、DJブースとしての基本最低限パーツセットの合計価格は21,560円でした。
まずはこの価格を頭の隅に置いておいてください。
◆ アイリスオーヤマ
収納家具や家電製品で有名なアイリスオーヤマはメタルラックも出しています。
アイリスオーヤマのメタルラックは、どういうわけかルミナスの製品に非常に酷似しています。以前、私はルミナスのつもりで買ってきたパーツが、よく見るとアイリスオーヤマだったことがあります。
噂によると、ルミナスと互換性のあるパーツもいくつかあるようです(互換性がないものもあるので注意)。
とりあえず、パ○リを疑う前にデータを見てみましょう。
・棚板サイズ
サイズの範囲はルミナスとほぼ一緒ですが、奥行き46cmの棚板においては幅の選択肢が驚きの20種類です!
例えば、ルミナスでは幅120cmの次は150cmですが、アイリスオーヤマには間に130cmと140cmがあります。これはブースの幅にこだわりのある人にとっては嬉しいサイズ展開です。
ただ、ハーフラックは幅61cmと91cmの2種類しかありません。これは少し寂しいです。
・棚板耐荷重
アイリスオーヤマの棚板耐荷重は、ざっくりですが小サイズでは250kg、中サイズで125kg、大サイズ100kgとなっているようです。ごく僅かに300kgや75kgがあります。
いずれにせよ、DJブースの耐荷重としては十分です。
・デザイン/カラー
デザインのラインナップもルミナスに非常に似ています。
標準のメタルラック以外に、木目調の棚板と光沢のある鏡面ホワイトの棚板があります。ただし、鏡面ホワイトは耐荷重が15.5kgとなっており、DJブースには不向きと思われます。
・オプションパーツ
アイリスオーヤマもオプションパーツが豊富です。ルミナスと比べると若干少なめですが、突っ張りポールやコの字バーなど、DJブースに必要なパーツは揃っています。
マウストレーはアイリスオーヤマ独自のパーツで、モニタースピーカーを設置する際など非常に重宝します。ちなみに、このマウストレーはルミナスのポールにも取り付けられます。
・価格
多くの部分でルミナスと酷似しているアイリスオーヤマのメタルラックですが、価格はどうでしょうか。120サイズの棚板1枚の価格を見てみましょう(アイリスプラザで試算)。
幅120cm × 奥行き46cmの棚板で比較
・標準(5,570円)
・ウッディ(7,770円)
価格もルミナスとほぼ同価格ですね。
しかし、アイリスオーヤマには以下のようなお得なセット商品があります。
こちらは幅120cm × 奥行き46cmの棚板3枚+90cmのポール4本がセットになっている商品です。
これがなんと驚きの13,800円!これは破格です。
このようなセット商品をベースに足りないパーツを継ぎ足しで購入すれば、ブースの費用をかなり抑えられます。アイリスオーヤマ、侮れません!
◆ エレクター
アイリスオーヤマはルミナスのパ○リ、なんてことを言いましたが、何を隠そう…ルミナスこそこのエレクターのまるパ○リなのです。というか、世にある全てのワイヤーシェルフ系スチールラックの本家大元はこのエレクターです。
米国初、50年の歴史を誇るエレクターを細かく見ていきましょう。
・棚板サイズ
エレクターのスチールラックには家庭用に最適な「ベーシックシリーズ」と、プロ仕様の「スーパーエレクター」という2つのシリーズが展開されています。
棚板の幅はベーシックシリーズでは150cmまでで6種と少ない印象です。ただし、ハーフラックは豊富なサイズ展開です。
逆にスーパーエレクターでは業務用なだけあって奥行きのサイズ展開が7種!かなり細かく奥行きにこだわれそうですが、DJブース利用として考えるとあまり意味はなさそうです。
ちなみにスーパーエレクターではハーフラックの取り扱いはありません。ハーフラック好きの私にとっては痛いマイナスポイントです。
ベーシックシリーズとスーパーエレクターはサイズの基本設定が微妙に異なるので互換性がありません。したがってベーシックシリーズのハーフラックをスーパーエレクターに取り付けることはできません。
ちなみに、エレクターには割高ですが2.5cm刻みでのオーダーメイドシェルフもあります。色やサイズにとことんこだわりたい人のニーズにもしっかりと応えます。
・棚板耐荷重
エレクターの棚板耐荷重はベーシックシリーズでは135kg、スーパーエレクターでは250kgです。
ホームユースを想定したベーシックシリーズは軽さを重視し、業務ユース想定のスーパーエレクターは堅牢さを重視しています。
・デザイン/カラー
エレクターのポール径は25.4mmと、25mmを採用している上述2社に比べて若干太いのが特徴です。数値ではほんの僅かな差ですが、実際に見るとエレクターのスチールラックはガッチリとしていて、かなりしっかりとした印象です。見た目も私の主観ですがエレクターの方が格好良く見えます。
エレクターのシェルフはベーシックシリーズだけでもベースのカラーがかなり豊富です(ブラック・ホワイト・ビンテージ等)。また、ウッドシェルフは天板だけでなくベースカラーが選べるのでラインナップの多さは4社の中でだんとつ1番。
さらに範囲をスーパーエレクターなどの別シリーズに広げると、防錆性能に優れたステンレスシェルフや金属製の天板のソリッドシェルフ、空気の流れを遮らないパンチングシェルフなど、機能性のある棚板がたくさん加わります。
少し脱線しますが、エレクターには棚板だけでなくポールもワイヤーフレームで構成されたスタンダードエレクターというシリーズもあります。
こちらは無印のユニットシェルフのイメージに近く、スチールラック特有の安っぽさはほぼありません。
エレクターは、各パーツのどれを取っても非常にしっかりとしていて高級感がありデザイン性が高く、安っぽい…というスチールラックのイメージを払拭してくれます。
・オプションパーツ
エレクターのオプションパーツはルミナスと同等のラインナップです。
転倒防止用の突っ張りポール(セーフティーポール)はもちろん、コの字バー、足回りのアジャスターなど、ルミナスにあるものは全てエレクターにもあります。当然といったところでしょう。
エレクター独自のユニークなパーツとしては、上段と下段で棚板の奥行きを変えられるベンドポールや、透明のスリーブなどがあります。
オプションパーツの作りも他社と比べるとどこかしっかりしている印象です。
・価格
スチールラックの本家本元であるエレクターの価格はどうでしょうか。
賢明な読者ならお気づきだと思いますが、エレクターのパーツは非常に高額です。まずは他社と同様に120サイズの棚板1枚の価格を見てみましょう(パーフェクトスペース本店で試算)。
幅120cm × 奥行き45cmの棚板で比較
ベーシック(6,600円)
スーパーエレクター(10,900円)
ウッド(26,928円)
耐荷重135kgのベーシックで他社より1000円ほど高く、これがスーパーエレクターになると桁が変わります。ましてやウッドシェルフにおいては少し躊躇ってしまうほどの価格設定ですね。さすが天下のエレクター。
画像のような120×45サイズのベーシック棚板×3枚+100cmのポール4本で構成する、DJブースとしての基本最低限パーツセットの合計価格は28,215円でした。
これはルミナスと比べた場合、約7000円ほど割高になります。
◆ メタルシステム
最後の1社はイタリアが誇る老舗ラックメーカー、メタルシステムです。
上述の3社とは全くコンセプトが違いますが、とにかく格好が良いので比較対象に取り上げました。
誰しもがいつかはメタルシステムでDJブースを作りたいはず!
・棚板サイズ
幅、奥行きともに細かく選べるのが特徴です。ちなみに45cmのターンテーブルを載せるためには奥行き50cmの棚板を選びます。
・棚板耐荷重
メタルシステムはこのような棚板をフレームに敷いていく構造です。見た目は不安ですが耐荷重は150kgとあなどれません。軽量と堅牢を両立しています。
・デザイン/カラー
メタルシステムはラインナップが2種類しかありません。
スーパー123は標準タイプ。ユニラックは表面の凹凸をなくしたスタイリッシュモデル、となっていますが正直どっちも同じです。
・オプションパーツ
メタルシステムはこれといって特筆すべきオプションパーツは見当たりませんでしたが、あえて取り上げるとするならこの3点です。
穴の空いたパンチング棚板は機材の熱を逃がすには良いかもしれません。マルチバーはフックなどを取り付けるベースになるようです。
メタルシステムには突っ張りという発想はなく、このブラケットを使って壁に直接ビスで固定しなさい、とのことです。ただし、ビスは各自で用意するみたい。
・価格
メタルシステムの価格はどうでしょうか。
構造が他社とは違いますが120サイズの棚板1枚の価格を見てみましょう(パーフェクトスペース本店で試算)。
幅127.7cm × 奥行き50cmの棚板で比較
標準(10,700円)
パンチング30cm4枚セット(7,800円)
メタルシステムには画像のような幅127.7cm×奥行50cm・高さ91.7cm・3段というDJブースに最適なセットがあるのですが、こちらのお値段は32,900円でした。思ったより手の届く価格な印象ですが、いかがでしょうか。
★総評〜どのメーカーがDJブースには最適なのか
メタルラックをDJブースにするならどのメーカーが最適なのかを検証する、という全くもってニーズのない企画もいよいよ大詰めです。
まずは定番の5つ星評価です。
・棚板幅
幅のバリエーションですが、DJブースとして考えたとき、どのメーカーもそこそこ選択肢がある印象でした。ブース幅を細かくこだわりたい人はアイリスオーヤマかオーダーメイドのあるエレクターでしょう。
・耐荷重
耐荷重もどのメーカーが極端に劣るということは特になく、全体的にDJブースとしては問題ない印象でした。ただ、アイリスオーヤマにおいては鏡面ホワイトの棚板耐荷重が15.5kgと、DJブースとして選択するには注意が必要です。
・デザイン性
メタルラックという安っぽいイメージは、近年メーカーの努力により大分払拭されてきた印象を感じました。逆にエレクターにおいては高級感すらも感じます。
また毛色はちがいますが、メタルシステムで組んだDJブースも非常にデザイン性が高いと思います。
・パーツ量
オプションパーツの豊富さは、ブースカスタムの楽しさに直結します。メタルシステムは例外ですが、その他3社はパーツが十分に揃っている印象です。
・価格
やはり価格は一番気になるところです。
とにかく安くしたい場合はアイリスオーヤマでしょう。逆に高くてもとことん格好良くしたいのであればエレクターです。価格とデザイン性のバランスの良さでいえばルミナス。
さて、では私は一体どのメーカーを選んだのでしょうか。時は遡ること10年前の2014年です。
私はルミナスを選択しました。
今思えばエレクターにしておけば良かったかも、などとちょっとだけ感じてますが(近年のエレクターは本当に格好良いので)、しかし10年経った今、全くもってルミナスに不満はありません。1回の引っ越しと2回の模様替えに余裕で耐えられる堅牢性と、10年で膨れ上がった機材群を全て収められる拡張性・カスタム性能がルミナスにはあります。
バランスの取れた価格設定も評価できます。また、ホームセンターによってはルミナスの取り扱いもあるので、気軽に購入ができるという点もメリットです。
さあ、みなさんはどのメーカーが気になりましたか。
次回はルミナスのパーツを使って実際にブースを組んでいきます。スチールラックでDJブースを構築する方、必見です。