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27歳無職が痔で入院したレポート・1日目
コロナ禍による自宅勤務や自宅待機で座りっぱなしの時間が増加したことで、いまコロナの次に最も水面化で人々を蝕んでいる病、それが痔ではないでしょうか。
まあ私は万年無職なのでそんなの関係なくただただケツを虐待して来ただけのウンカスなのですが、やはりコロナは関係していると思います。因果関係はきっとあると思います。
私は祖父の代から連綿と続く痔の家系——即ち
『宿業の血族』
のもとに生まれたジョジョにも等しい運命の人間なのですが、
それに加えて辛いものと冷たいコーヒーが大好き、オタクニートなのでPCの前で座っている時間が圧倒的に多く、それにもかかわらず腹筋だけは無駄にあるという痔にならんほうが難しい痔のサラブレッドエリートキャリアみたいな生活を送っていました(大腸の動きと腹筋に関係があるらしいです)。ウマ娘だったら⭐︎5ですね。(にわか失礼します。)
事の始まりは20歳前後だった気がします。
誕生日にクシャミをした拍子にウンコが漏れるという悲劇に見舞われました。この時点で括約筋の弱体化が始まっていたんですね。
それからというもの、排便時に痛みを伴うようになりました。
祖父は日記に痔の苦痛を綴り、
父からは度々「俺のようにさっさとケツをサイボーグ化しろ」
「人間はちくわ」「上から入れたら下から出る」
と言われ、
地元で横浜のローカルバスの後部ガラスにデカデカと宣伝が貼られている“港北肛門”という広報の時点で既に有能な病院に駆け込み注射一本で帰って来た兄は、
その時お医者さんから聞いたらしい
『肛門括約筋の残機にまつわる話』
を延々と繰り返していました。多分相当なトラウマになったんだと思われます。
それでも尚私は「まだ大丈夫だ」と思い込んでいました。
これは痔の患者全てに共通すると思うんですがギリギリまで自分を正当化するんですよね。
医者に行きたくないわけです。何としても。他人にケツを見られるくらいなら死を選ぶという“キマった”連中が多いのです。
しかし私は気づいてしまったのです。
ウォーキングから帰るたび、“死の肉腫”が疼いていることに。
ケツ毛を剃ろうがワセリン塗ろうが痛み続ける。
無価値な私に面白属性を付与してくれる相方として半ばアイデンティティと癒着気味だった痔と別れることを決意しました。
満を辞して病院へ。
全ての恥をかなぐり捨てて診察室に向かうと、クソデカサングラスをかけてロマンスグレーのソバージュをそよがせた褐色肌の壮年とかいうシャーマンキングのキャラみたいな造形の先生が待っていました。
「その歳にしては括約筋が緩い」
「まあ手術しても再発はしますよ、あなたみたいな肛門はね」
とややdisられ、その場で手術が決まりました。
私は内痔核といって、内側になんというかその、肉の芽が育ってしまっていたわけですね。それがポロリと露出して擦れて死を呼んでいたと。おのれDIOめ。
いやいやいうてもいきなりそんなん言われても戸惑いません?そんなに急いで手術やらなきゃならんもんなのかと縮み上がっていると、
「ここに来る人たちはね……もう……最後の手段として来てるわけだから…“覚悟”してるんですよね… …あなたもそうでしょう?」
とジョルノ・ジョバァーナみたいな言葉で納得させられました。やっぱりジョジョじゃねえか。
ここまでが前日譚です。
当日まではもうヤケクソでした。どうせ手術するんだから体に悪いこと全部やってやろうと思っていた気がします。
その日の朝に点いていたテレビ番組でIKKOさんが出演されていたのを見かけたので、痔の手術をする前になんとなくラッキーだなと思いました。
病院に到着し、PCR検査ののち、個室へと案内されました。
5時に夢中の中瀬ゆかりさんみたいな看護師さんがマスクの苦しさにハアハアと息を切らせながら私のケツ毛を剃る。
窓のほうを向いてくださいねと言われたので横たわる。
爽やかで明るい春の青空の下で大人がケツをアレコレ弄られている光景が客観的に見て面白すぎてずっと爆笑してしまいました。
正直何が怖いって浣腸されてブリブリに垂れ流すことが一番の不安だったんですが全然そのままの形で恐怖が具現化しました。
「ホゲーっ怖いよーッッッッッ!!!!」と叫びながら浣腸を注入され、
「5分〜10分待っててくださいね」と声を掛けられたにも関わらず、1分と経たないうちに
物凄い身に覚えのある痛み
が身体の中心を駆け巡るわけですよね。しかもあの、足に来るタイプの時 本当にヤバい時のやつがね、お腹緩い人には伝わると思うんですけど。
電車乗ってて冷や汗止まらん時みたいな“ヤバさ”に耐え切れず速攻トイレに駆け込むと、前日のハンバーガーが全て水となって排出されました。
そのあまりの奔流に現実を直視することすら憚られ、誰も聞いていないのに「俺は見いひんぞ」と謎の宣言をしてから目を瞑って全てを水に流しました。人間は正気を保つのが大事です。
頭の中ではなぜかperfumeの『ポリリズム』が流れていました ブリリズムみたいなことだったんですかね。
さあこれで俺も念願のケツボーグやと思ったところで障害が立ちはだかります。
点滴の針が刺さらねえ。
子供の頃もそんなんだった気がするし、今も通院している心療内科でたまに「今日は針通らないんで帰ってくださって大丈夫です」と遠回しに追い返されたりするレベルのクソザコ血管だったんですが、更にくわえて数年で20kg前後太った疑いがあり追い討ちをかけて腕に頑強なアーマーを纏う形になってしまいました。
一回失敗したところで中瀬ゆかりさん似の看護師さんが病室の外にSOSを求めます。
すると、樹木の精霊の長みたいなベテランの看護師さんが颯爽と登場しました。
ベテランさん、「待ってね 待ってね 待ってね……」とブツブツ呟きながらそれでも一回ミスられる。私の腕はどうなってるんだ。よく生まれてすぐの姿をボンレスハムに例えられていたのですがもしかしたら年を重ねるごとにボンレスハムへと退化しているのかもしれません。来年くらいには生肉で出来たマシュマロマンみたいになっていても不思議ではありません。
しかし流石ベテラン看護師さん 苦戦しながらもドンピシャの場所に針を通して、無事に点滴も成功しました。
準備が整ったところで処置室に案内され、手術台にあがります。
下半身麻酔ということで腰というか、脊髄かな?押されただけで気がぶっ飛びそうになるくらいの場所にぶっといお注射がぶっ刺されました。
ここでも髄圧が低いとかいじられた気がします。
枕を抱え込んでいたのですが看護師さんが支えてくれて正直もう泣きそうだった。やめましょうよこんなことと叫びたかった。
しかし次の瞬間には好奇心の方が優っていました。
麻酔すげー!!!!なんか刺された瞬間から神経がじわじわ冷えてく感じがする!!!!
そんで徐々に痺れて、足の感覚がそれだけに支配されていきます。
熱い冷たいは微妙にわからないでもないんですが、ケツをバチバチ叩かれても身体の上でゼリーが揺れてるような感覚しかない。
おお〜とか思っているとついにオペが始まります。しかしうつ伏せなので何が起きているかは全く把握できません。
ついでに手術中うとうとする薬とやらを点滴してもらったのですが、思ったよりも眠くなりませんでした。
しかしながら大人数人に囲まれて、自分の臀部付近で一時間ほどガチャガチャと作業されていても
「ケツ毛」
というワードしか聞き取れなかったので、そうは言いつつ結構ちゃんとうとうとしてたんだなと思います。
その後特に痛みもなくな〜んだこんなもんか〜と思いながら呪術廻戦読んで寝たんですが…。
この時点までは点滴が一番痛いまであったんですね。
それが夜中になってくると麻酔が切れてケツの痛みが襲い掛かってくる。
はじめお尻が熱ぃよお母ちゃん!!!!くらいのものだったのですが
段々と激痛に変化していきます。
とにかく痛い。常に灼熱のウンコが半分出かかっているような、
熱した鬼の金棒をスクリュードライバーで延々ねじ込まれ続けているような爆発的なケツの違和感に心身がじわじわ削られていく時間帯です。
なぜかときメモGS1の夏美ちゃんの幻覚を見ました。あの世から川上とも子が呼んでたんか?
真夜中にナースコールをし鎮痛剤を注射してもらったんですが、一向に良くならない。
なんなら薬が体に入ってくる瞬間がありありと分かる自分の感覚過敏に嫌気がさしました。
冷たい液体が喉まで上がってきて、苦い味を残していくんですよ で、直後にもう目が回ってくるんです。それでも痛みは抜けません。大きな痔、完。
殴って気絶させられた方がなんぼかましという苦痛の中で、翌朝のお粥だけを楽しみに朝日が昇るのを待ち続けました。
あと友達から心配のLINEが結構来てたんですが全てに対して逆ギレして返信しました。
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