見出し画像

第一回「集中力が8秒しか保たない時代の舞台芸術の効用」


人の集中力は今の時代8秒しか続かないらしい。

15年のマイクロソフト調査だ。8秒と言わずとも、インターネットが行き渡り、今や四六時中情報に晒されている現代の私たちにとって、スピード感というものはとても重要な要素になってきている。そんな時代に、2,3時間を拘束されハズレのリスクのある舞台より、次々とスワイプしていって数秒のうちに何度も笑ったり衝撃を受けたりするものの方が流行るのはなんの不思議もない。私も最近はチケット代の安価な映画ですら、2時間ほどを拘束されると思うと躊躇してしまうことがある。

そう思えば、舞台芸術(ダンスや演劇)というものは今やとても時代感覚と逆行している文化だ。

席数や公演回数が限られているので、良いものでも無限に多くの人に見てもらって収益を稼ぐということができない。身体的訓練にせよ、例えば学問のように先人が既に発見していることを体系化し、短期間に会得するということは難しく、全てを演者が一から泥臭く身につけるしかない。チケット価格、拘束時間、どれを取っても大量消費や資本主義のヨノナカでは張り合いにくい構造になっている。


漫才でもなんでもとにかくスピードが求められてる。そんな中、誰が悠長に落語なんか聞いてくれんねん。テレビではもう落語は保たへん。30分一本の落語で何べんか笑うより、10組の漫才を見て百ぺん笑てたいねん。今のお客さんは。


落語心中の漫画の1コマにはこんなセリフがある。これを読んだ瞬間鳥肌が立った。

ダンスでもそう。1秒面白くても、次の7秒何も起こらなければどんどんお客さんは離れていってしまう。そんな時代なんだ。
だから全国民的に簡単な振付でみんなで踊るダンスが流行ったり、数秒のうちにドカンドカンと盛り上がるダンス映像(主にMVやCMなど)が波及したり。

 ただ、落語を自分の代で終わらせようとした落語心中の八雲のようには、悲観しなくてもいいと思っている。アートがホワイトキューブから離れていったように、舞台芸術はブラックボックスから離れて時代に適した形態を模索しているし、場としての舞台芸術の在り方は、あだにもなるが、現代社会の寂しがりやの人間にとっては潜在的に必要としているものだ。私のような舞台に関わる(まだまだひよっこだが)者も指をくわえている訳ではなく、場に集った人のための様々な楽しみ方を試している。ハレとケの、ハレ(非日常)の部分を味わいに集う。拘束されるからこそ感じられる非日常がある。ボディーブローのように人生に効いてくる、現代の贅沢を味わいに。


私が2月に《現代の贅沢を味わいに》行くパフォーマンスはこちら▼https://fujiyamanet.wixsite.com/fognation 

何も見えない、霧で覆われた架空の国に観客が一人ずつ入り、各々の主義によって分かれた国を取り戻す為に動いて行くイマーシブ(没入型)・シアター。視界を奪われ分断された参加者達が、やがて見出す自身、国家、社会とは。

 TIME TABLE.
2/10(日/Sun)15:00 / 18:00 / 21:00
2/11(祝/Mon)11:00 / 15:00 / 20:30
2/12(火/Tue)11:00 / 14:30 / 17:30

 FEE.
一般/前売¥3000 当日¥3500
学生/前売当日 ¥2500(※要学生証/限定枚数)

 VENUE.
THE HALL YOKOHAMA
JR石川町駅/みなとみらい線 元町・中華街駅より各徒歩5分。

 Attention.
1.写真撮影可!
2.手荷物は受付へ!
3.動きやすい靴で!



この記事は、企画メシ4期生による合同コラム企画「コラム街」の1つとして書かれています。
「コラム街」 そのほかの執筆者のコラムはこちらから!
https://note.mu/bookandmusic/n/n918043f2d2f2

いいなと思ったら応援しよう!