気胸ジェンヌ誕生秘話④ーードクターショッピングのはじまり
気胸手術からもうすぐ半年が経とうとしている。以前は感じていた、大きく息を吸い込んだときの肺の違和感もほとんどなくなった。
現在、病院には「気になる症状が出たら行く」ということにして、定期的な通院はしていない。そこに至るまでの顛末をまとめておく。
横隔膜で「ブルーベリースポット」発見!?
手術してみてわかったことだが、気胸を起こしていた私の右肺には、病変が3箇所あった。
ひとつは右肺の上部。ここは肺が1回破れてそれが治った跡と考えらえ、癒着を起こしていたという。今回の「空気もれ」も、どうやらここから来ていたようだ。
もうひとつは右肺の真ん中あたり。ここには「ブラ」と呼ばれる小さな風船のようなものができていた。このブラが破裂することで気胸が起こるため、切除した。
この2つについては、術前のCT検査で指摘されていた。
3つめの病変は、手術してはじめてわかった。横隔膜に赤紫の斑点ができていたのだ。これは「ブルーベリースポット」と呼ばれ、子宮内膜組織が飛んだものと考えられる。
子宮内膜組織なので、生理のたびに出血して炎症を起こすと、それがきっかけで肺が破れる可能性がある。「ブラ」とは別の理由で、気胸の原因となるのだ。
今回の気胸が子宮内膜症、つまり婦人科系の疾患と関係している可能性があることは、実は術前に知らされていた。女性であること、そして右肺に気胸が起きているからだ。この女性特有の気胸は「月経随伴性気胸」と呼ばれ、なぜか右肺に多いことがわかっている。
実際に手術してみて、その「状況証拠」が出たことになる。主治医からは、切除した組織を病理にまわすといわれ、結果は後日、外来で聞くことになった。
しかし、病理では何も出ず…
手術から約3週間後、抜糸のために再び病院へ行く。傷の経過は順調だった。
気になる病理の結果はシロ。つまり、子宮内膜組織は出なかったという。
気胸は原因不明の疾患なので、手術をしたら、その後予防的にできることはない。ただ、もし月経随伴性気胸の可能性を疑うなら、婦人科でホルモン治療をおこなうことを勧められた。生理がなければ、気胸も抑えられると考えられるからだ。
しかし、3年ほど前に子宮筋腫・卵巣嚢腫の術前に3カ月ほどホルモン治療を経験した私は、その副作用のキツさをよーく知っていた。いわゆる更年期障害と同じ症状が起こるのだ。
それが本当に効果があるならやらざるを得ないけれども、そうでないなら、毎月薬代を払ってわざわざキツい思いをすることはないのではないか。
セカンドオピニオンという選択
実は退院後、月経随伴性気胸の確定診断が出た場合のことを考えて、いろいろと調べていた。すると、都内に気胸の症例がダントツに多い病院があることを知った。
その病院の医師は、気胸の再発予防に必ずしもホルモン療法を推奨してはいないようだった。
もし、ホルモン治療を受けるにしても、いろいろな情報を調べたうえで最終的にどうするか決めたいと思った私は、主治医が気を悪くしないかと内心ドキドキしながら言った。
「ほかの先生の意見を聞いてみたいので、紹介状を書いていただけないでしょうか……?」
すると、あっさり主治医が言った。
「ああ、いいですね! こちらでもどうしようかな、と思ってたんで」
その病院で診てもらったあと、主治医に報告に来ることになった。そして私は紹介状を手に、気胸の名医がいるという病院を訪れることになったのだった。
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