JW86 速瓶玉の神社
【綏靖天皇編】エピソード14 速瓶玉の神社
紀元前577年、皇紀84年(綏靖天皇5)。
一人の男の子が産声を上げた。
磯城津彦玉手看尊(以下、タマテ)である。
父親は第二代天皇、綏靖天皇こと神渟名川耳尊(以下、ヌンちゃん)である。
そして、それからしばらくして、出雲から一人の人物がやって来た。
出雲の君主、伊佐我の息子、津狭命である。
津狭「遥々来てやったぞ!」
ヌンちゃん「どういうことやねん?! 『記紀』に、こないな話は載ってへんでっ。」
津狭「そうなんじゃが、出雲でも代替わりがあったということを伝えておく必要があったんだに。」
ヌンちゃん「・・・と言うことは『神武東征編』に出てきた伊佐我殿が亡くなられたっちゅうことかいな?」
津狭「うむ。そして、息子のわしが、後を継いだんだに。」
ヌンちゃん「せやけど、いつ亡くなったとか、いつ代替わりがあったとか、一切記録に残ってないんやろ?」
津狭「確かに、いつ代替わりがあったのか、全くの謎じゃが、系譜は残っちょる。それを、事あるごとに伝えていこうと思っちょるんじゃ。」
ヌンちゃん「系譜? ほな、わての子孫と並列して、代替わりの報告をしていくっちゅうことですか?」
津狭「そげだ。出雲でも、世代交代がおこなわれていた事、知ってもらいたいと思ってな・・・。」
ヌンちゃん「まあ、そこまで言うんやったら、別に止めはしまへんけど・・・。」
津狭「では、そういうことで、今後も頼むぞ!」
ヌンちゃん「こちらこそ・・・でんがな。」
こうして、代替わり報告を終え、津狭は出雲に帰っていったのであった。
そして、紀元前568年、皇紀93年(綏靖天皇14)8月15日、予定通り、一人の人物が世を去った。
健磐龍命こと『たつお』である。
その報告に来たのは、『たつお』の息子、速瓶玉命(以下、パヤオ)ということにしたい。
パヤオ「御尊顔を拝し奉り、恐悦至極に存じ申し上げ奉りまする。パヤオばい。」
ヌンちゃん「予定通り『たつお』が常世(あの世のこと)に旅立ったんやな?」
パヤオ「はい。今後は、オルが阿蘇を守っていくばい。」
ヌンちゃん「せやな。気張りぃや!」
パヤオ「はいっ!・・・と言うことで、オルを祀った神社ば、紹介したか思うとりまして・・・。」
ヌンちゃん「パヤオを祀った神社? エピソード84.8で、ちょっとだけ紹介されてた、国造神社のことか?」
パヤオ「そうたいっ! そん神社のこつ、まだ詳しく話せとらんとです。」
ヌンちゃん「ほうかぁ。ほな、解説しておくんなはれ。」
パヤオ「国造神社は、熊本県阿蘇市は一の宮町の手野に鎮座しとる神社ばい。父上の最初の根拠地やった手野です。」
ヌンちゃん「ほんで、御祭神は?」
パヤオ「オルと家族ばい。」
ヌンちゃん「国造神社は、二世帯住宅みたいな感じなんか?」
パヤオ「そうたいっ。では、紹介します。オルの家族ばい。まずは、妻の雨宮媛ばい。カマチと呼んではいよ。」
カマチ「お初にお目にかかります。妻の雨宮ばい。」
ヌンちゃん「ん? なんで、呼び名が『カマチ』なんや?」
カマチ「オルの別名が蒲智比咩だけん、呼び名ば『カマチ』にしたとよ。」
パヤオ「次は息子の高橋と火宮ばい。」
高橋「高橋神です。お初にお目にかかります。」
火宮「火宮神ばい。よろしく!」
パヤオ「この四人・・・もとい四柱が祀られとるばい。」
ヌンちゃん「せやけど、高橋っちゅうんは、苗字みたいな名前やなぁ。」
高橋「仕方ないです。そういう名前ですから・・・。でも、こっちの方が苗字より早いんですよ。」
ヌンちゃん「ま・・・まあ、言われてみたら、そうやな・・・。」
パヤオ「ちなみに、オルの長男、健渟美命は、妻の若比咩と一緒に、阿蘇神社に祀られとるばい。」
そこに遅れて、健渟美命と妻の若比咩がやって来た。
健渟美「オルが健渟美ばい。父上ではなく、おじい様の方に居るとよ。」
若比咩「ほして、オルが若比咩ばい。お初にお目にかかります。」
ヌンちゃん「長男夫妻は『たつお』のところに居るんやな。」
カマチ「ほしてかっ、オルを祀った神社も有るとよ。」
パヤオ「熊本県宇城市の三角町郡浦に鎮座されとる郡浦神社ばい。」
ヌンちゃん「他にも神社が有るんかいなっ。」
カマチ「こっちの神社は、オルと旦那様、ほして、旦那様の父君の『たつお』様と御初代様こと神武天皇が祀られとるばい。」
ヌンちゃん「ほうかぁ。『おとん』は、いろんなトコで祀られてるんやなぁ。それに比べて、わては・・・(´;ω;`)ウッ…。」
パヤオ「仕方なか。初代っちゅうのは、そういうモンたい。では、神社紹介も終わったけん、帰るばい。」
ヌンちゃん「お・・おう。達者でなぁぁ。」
こうして、パヤオは家族と共に阿蘇に帰っていった。
つづく