JW216 九代目即位
【開化天皇編】エピソード1 九代目即位
紀元前158年、皇紀503年(孝元天皇57)9月3日。
第八代天皇、孝元天皇(こうげんてんのう)こと、大日本根子彦国牽尊(おおやまとねこひこくにくる・のみこと)(以下、ニクル)が崩御(ほうぎょ)。
日嗣皇子(ひつぎのみこ)である、稚日本根子彦大日日尊(わかやまとねこひこおおひひ・のみこと)(以下、ピッピ)が、跡を継ぐことになった。
ところが、異母弟の武埴安彦(たけはにやすひこ)(以下、安彦)が異議を唱える。
悩んだピッピは、二人の大臣(おおおみ)に相談するのであった。
ちなみに、舞台は軽境原宮(かるの・さかいはら・のみや)である。
ピッピ「・・・というわけで、安彦は、厳正な末子相続(まっしそうぞく)を求めておるのじゃ。」
相談相手の大臣、物部鬱色雄(もののべ・の・うつしこお)(以下、コー)と磯城大日彦(しき・の・おおひびこ)が感想を述べる。
コー「せやけど、『記紀(きき)』にも『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』にも、こないな、やり取りは書かれてまへんで?」
大日彦「そうですね。何の支障もなく、ピッピ様が即位(そくい)されてますけど?」
ピッピ「そうなのじゃが、作者が、安彦に嗾(けしか)けてきおったのよ・・・。」
コー「そりゃ、ホンマでっか?! 何を考えてんのや?」
ピッピ「とにもかくにも、この不毛な論争を終わらせねばならぬ。如何(いかが)すべきか・・・。」
大日彦「そんなこと、簡単ですよ。即位してしまえば良いのです。」
ピッピ・コー「あっ!」×2
紀元前158年、皇紀503年(孝元天皇57)11月12日、ピッピは大王(おおきみ)となった。
第九代天皇、開化天皇(かいかてんのう)である。
ピッピ「安彦・・・。すまぬが、台本通り、大王となったぞ。」
安彦「ピッピ兄上・・・いや、大王・・・。あまり気にしないでくださいね。僕も、そんなこと有り得ないと思ってましたし、そうじゃなきゃいけないとも思ってたんで・・・。」
ピッピ「では、なにゆえ、あのようなことを?」
安彦「作者の見解によると・・・なんですがねぇ。僕の母は、川内(かわち)の豪族でしょ? そういうことで、川内の豪族たちと、中(なか)つ国(くに)の豪族たちの勢力争いが有ったんじゃないかと・・・考えてるみたいなんですよねぇ。」
ピッピ「なるほどのう・・・。されど、所詮(しょせん)は、作者の妄想よ。争いなど、有ろうはずもない。」
安彦「そうであれば、良いのですが・・・。」
ピッピ「ん? 何か含(ふく)みの有る申し様(よう)じゃのう?」
安彦「ま・・・まあ、杞憂(きゆう)に終わると思いますんで、気になさらないでください。」
するとそこに、二人の大臣がやって来た。
コー「大王! おめでとうございますぅ。」
大日彦「おめでとうございます!」
ピッピ「おお! コー! 大日彦! これからも頼むぞ!」
大日彦「かしこまりました・・・と言いたいところなんですが・・・。」
ピッピ「なっ!? よもや、引退すると申すのでは有るまいな!?」
大日彦「その『よもや』なんですよ。ついに、磯城(しき)一族終了のお知らせとなります。」
ピッピ「なにゆえじゃ? 汝(いまし)の孫である『ケニー』こと、物部建新川(もののべ・の・たけにいかわ)が、跡を継ぐのではなかったか?」
安彦「大王・・・。『ケニー』は、磯城の領地と、三輪山(みわやま)の祭祀(さいし)を受け継ぐだけだと思いますよ? 磯城の名前まで受け継ぐ必要性って、あんまり無いですからねぇ。」
ピッピ「なっ!? そうなるのか?」
大日彦「まあ、そういうことなんですよ。その証拠というわけじゃありませんが、愛しの『ケニーちゃん』の氏(うじ)は、物部(もののべ)のままですからね・・・(^_^;)」
コー「すまんなぁ。磯城を名乗らせても、ええんやけど・・・。」
大日彦「いえいえ、お構いなく・・・。どうせ、磯城を名乗ると約束しても、私が死ねば、反故(ほご)にされることくらい分かってますから・・・(´;ω;`)ウッ…。」
コー「せやなぁ。まあ、しゃあないわな。なんてたって、物部やからなぁ。((´∀`))」
大日彦「そうですね。この戦い、物部の勝利で終わったってことですね・・・。」
ピッピ「ま・・・まあ、とにかく、大儀であった。大日彦・・・汝(いまし)の忠義、忘れぬぞ。」
大日彦「お・・・大王・・・(´;ω;`)ウッ…。く・・・悔しいですっ! ( ノД`)・・・。」
大日彦は、泣きながら走り去っていったのであった。
一方、そのころ、ピッピの伯父、彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)(以下、芹彦)の屋敷では、異母兄弟の稚武彦(わかたけひこ)(以下、タケ)が来訪していた。
芹彦「まさか、それがしより先に、『ニクル』が逝ってしまうとは・・・。」
タケ「そのことで、汝(なれ)の屋敷を訪れたのじゃ。」
二人の傍では、芹彦の妻、百田弓矢姫(ももたのゆみやひめ)(以下、ユミ)が、酒の肴(さかな)を運んでいる。
ユミ「タケ様・・・。ごめんさないね。いろいろ探したんだけど、こんなモノしかないのよぉ。今度、来る時は、あらかじめ教えてくださいねぇ。」
タケ「い・・・いや、酒を酌(く)み交わしに来たわけではないのじゃ。」
芹彦「されど、呑むのであろう?」
タケ「ま・・・まあ・・・・・・話が終わったら・・・。」
芹彦「して、その話とは何じゃ?」
タケ「じ・・・実は、此度(こたび)の八代目崩御によって、生存している兄弟姉妹は、私と芹彦、そして、倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)こと『モモ』だけとなった。」
芹彦・ユミ「は?!」×2
タケ「とにもかくにも、そういうことなのじゃ。」
芹彦「で・・・では、チチ、かた兄、ワカヤ、そして、汝(なれ)の兄である、歯黒(はぐろ)・・・。皆(みな)、逝ってしまったのか?!」
タケ「仕方ない・・・。ク・・・クランクアップと申すそうじゃ。」
芹彦「お・・・おのれぇぇ!! 作者めぇ! この怨(うら)み、忘れはせんぞっ!!」
こうして、ニクルの兄弟姉妹も、幾人か逝ってしまったのであった。
つづく