ヤバ写真集1 『少年緊縛〜緋〜』について

『少年緊縛〜緋〜』(北村ケイ)
実に美しい、フェティッシュで、マニアにはたまらない一品だろう。黒黒とした画の中に浮かび上がる美男子の艶姿。それは真っ赤な縄に拘束され、無残にも痛めつけられている。しかし、その人の顔は凛々しく整って、超然とどこかを見据えている。超越的美の世界。構図的にもバランスが取れ、小物の選択、配置もアングラ的、耽美的な要素が整然と取り入られている。静止した美の均衡がそこには有る。
褒めて貶すのが世の流れ。何が駄目?この画は完全すぎるから。またある面でまったく不完全だから。表現はあらゆる文脈で溢れている。この写真集はその中でアングラ的なもの、サブカル的なものを綺麗に組み合わせているが、破調、乱に欠けている。崩れそうで崩れない、ぎりぎりのバランスにエロティシズムと緊張は潜み、崩れた醜悪さは美をそそるものにするスパイスである。ただ砂糖を舐めさせるが如き写真では心に響かない。更にだ、この美男子は居そうにない。この世にではない。あらゆる世界に於いて、この存在は安い虚構となっている。ちぐはぐ。この舞台装置は作為不足を示しながら世界を構築し損ねている。その上ここに至る経過も、ここからの未来もこの写真からは見えてこない。この写真は物語を紡ぎ損ね、またこの美を真実として包み込む宇宙はどこにもないのだ。

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