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【エッセイ】正体がわかっても恐ろしいもの(1000)

夜空を明るく照らす雷光。轟く雷鳴。きっと鬼が実在したらあんな風に鳴くのだろう。

しかし自分に直撃さえしなければこんなに美しいものはあまりない。

雷の正体は雲の中の水滴や氷など同士がぶつかって発生する静電気がたまって放電される自然現象というのを知らない現代人はほぼいない。*諸説あり

ただ、このような詳しい説明ができる人は生徒時代に理科のお勉強を興味を持ってしていた人くらいだろうが、電気ってことくらいはほぼ全ての人が承知しているはずだ。

電気の存在など想像さえできなかった昔は神の怒りなどと考えられていたが、電気だとわかった現代においても恐ろしいものは恐ろしい。

正体さえわかれば恐怖が克服できるとかいう心理学的な説明をする人がいる。そういう説明ができるのは群衆の前で喋ることが緊張するとか些細なことだけである。

自然現象の恐ろしさの前には指をくわえてたたずむしかない。たとえばホットな話題では迫り来る台風十号。

もちろんできるだけの対策をした方がいいんだろうが、実際に直撃したら被害を被らぬよう祈るしかない。

最も確実に台風の難を逃れる方法は予測台風進路外への国外逃亡だが金も時間もかかる。また新たなリスクと手間が発生しどちらの方が得かを確率や労力を加味して判断して日本に留まり家でじっとしているのが最も賢い選択となるだろう。ほとんどの人たちにとっては。

さて。「雷に打たれたような衝撃」と言う表現がある。
雷に打たれたことがある人はほとんどいないだろう。結構高い確率で死ぬはずだ。

Google先生!!
「落雷 直撃 死亡率」・・・70から80%!

半端ねー!

しかし、とてもうまい表現だ。想像ができる。

ブラック企業の歯抜けの能力ないのに偉そうだったオッサンが言ってた。

「経験せんとわからへん!」

それはあんたがバカだからだ。もうちょっと本質的で含蓄のある意味合いで言った可能性はあるが、あんたの勤務態度とチンピラみたいな言い方なら多分伝わらない。少なくともこの賢い私に伝わってない。

シェイクスピアはベネチアに行ったことがないのに「ベニスの商人」を書いたと言われている。思えば全ての創作物がそうだ。サスペンス作家が全員殺人者であるはずがない。

自分の実経験したことだけを題材に生きるほど愚かな事はない。何も実体験を否定はしない。実体験はマジで本当にすばらしい。空想の中でした何万回の・・・。辞めときます。

しかし、世界は広く意見は無数。実体験には限界があるのだ。

そこで想像力を働かせる必要がある。

それこそが思考である。


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