【エッセイ】会話(1000)
深層心理の考え方のひとつに顕在意識と潜在意識というものがある。顕在意識つまり我々が自覚できる意識はほんの一部に過ぎない。意識というのは氷山にたとえると浮いて見えている部分が顕在意識で潜在意識は海中に見えない巨大な塊として沈んでいるという考え方である。
我々は一日2万回の決断をしているらしい(研究者によっては最大3万5千回と言う説を唱える人もいる。ここでは話を簡単にするために2万回で話を進める)。
枝分かれした道の左右どちらを選ぶかっていう細かいものにはじまり、誰と結婚するかっていう人生の結末を決めかねない重要なものまで、毎日毎日飽きもせず無数の決断をしている。それらの決断に平均1秒かかるとする。合計2万秒である。2万秒はおよそ5時間半。8時間寝るとしたら起きている時間は16時間。1日のおよそ3分の1以上を決断に費やしていることになる。さらに平均3秒以上を決断に使用しているとしたら、考えているだけで1日が終わってしまうことになる。そこで登場するのが潜在意識だ。高頻度で同一の決断は潜在意識で行う。いわゆる慣れというやつだ。その決断が95%とも言われている。
昔Twitterでエセインフルエンサーどもが言っていた。
「人間は一日平均2万回の決断をします(恥ずかしくもこの説は連中のツイートで知った)。それらの多くは潜在意識下での決断です。潜在意識下でポジティブな決断をできるように訓練すればあなたは前向きに幸せな人生を送れます!私のサロンに入って(もしくは情報商材を買って)人生を豊かにしましょう!!」
はぁ?そんなわけあるか。それは神がいないってだけでカルト宗教と全く同じだ。
潜在意識はコントロールが不可能なので潜在意識なのである。コントロールは不可能だが、掘り起こすことはできる。その手段のひとつに他者の視点がある。その最も効率いいのが「会話」だ。
先日、次女と買物に出かけたドライブ中の会話。
クスクスと笑い出す娘。
「お父さん、おばあちゃんの話し方と同じやな」
「どういうこと?」
「おばあちゃん、相手の言ったことを肯定する時2回繰り返すねん。さらに2回目は歌いながら言うねん。それを今お父さんがしてた」
全く意識していなかった。私が潜在意識を掘り起こせた瞬間だ。潜在意識の恥ずかしい習慣、ボソボソ喋るとか鼻をほじるとかは身近な愛する人が注意してくれるから顕在意識にアップデートして修正することができる。
何気ない娘との会話からも潜在意識を顕在意識に上らせられるらしい。これこそまさに意識のアップデートだ。身近な人と会話しよう。