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永遠に生きたいか?【エッセイ】八〇〇字

朝井リョウさんの小説「正欲」の冒頭は『人は明日死なないために生きているのです』というような内容の文章ではじまる。

Audibleで聴いたのだが圧倒的だった。とても良かった。朗読がクソ下手だったが内容が良いので苦にならなかった。アマチュア作家の率直な感想として「これは勝てない、さすがプロの作家だ」と思った。

熟読派の私が一瞬で読み終わった一文いちもん小説「世界でいちばん透きとおった物語」の薄っぺらさとは大違いだった。比較すら失礼だ。

ガッキー(新垣結衣さん)主演で映画化されるのがまた嬉しい。観に行きたい。

「正欲」の冒頭部分を聴きながら共感した。確かにほとんどの人の振る舞いを見ていると「いつ死んでもおかしくない」などということを考えて生きていないように感じる。

おおよそ日本人なら80歳まで平均で生きるとしたら今日死ぬ確率はだいたい0.003%ほど(1÷80年の日数×100)。

そりゃ誰も「今日死ぬかも?」と怯えて生きるなんてしないだろう。同等の確率をググったら(ネットでGoogle検索したら)「オスの三毛猫が生まれる」だそうだ。イメージしずらい。

その他、興味深い低確率事象が載っている。

さて、「メメント・モリ」というラテン語がある。「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」「人に訪れる死を忘ることなかれ」(Wikipediaより引用)と言う意味だ。

私が傾倒する村上春樹の作品にはこの「死を忘れるな」が根底に流れている。と言うか村上春樹作品が貫くテーマは「死は生の一部であり、分離できない」というものである。どうも彼はこのことを長編小説の長い文章を通して述べたいというように感じる。だから多くの人の心をとらえるのだろう。その比喩を表現するため、極端に性に奔放な人間や想像を絶する金持ちなどが彼の小説ではキーパーソンになるのだろう。

ま、小説なので好きに読んだらいい。あくまで私の感想だ。考察ではないので悪しからず。

芸術の考察ほど野暮で無意味でくだらないことはない。


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