【エッセイ】靴底と人の心(500)
靴を履く時にふと底を眺めるとゴム底が減っていた。
それは私の身体に負担がかからないように徐々にその身をすり減らせたのだろう。歩き方や重心のかけ方によって歪な形に変化した様を眺めながら心の中で「ありがとう」と感謝を込めた。
「人間関係の衝突は心の硬い人同士がぶつかって起こるのです。だからあなたは心の柔らかい人になりなさい」
って言うようなことを意識高い系心理学型自称インフルエンサーの連中が呪文のようにほざく。
ちょっと待って。
たしかに心の柔らかい人と心の硬い人がぶつかっても衝突は起こらないかもしれない。しかし、心の柔らかい人つまり優しい人は少しずつその心をすり減らせているのだ。靴のゴム底みたいに。
そして、衝突が何度も起こればなくなってしまう。
心の硬い人はどうだろう。心の硬い人同士でぶつかった場合、硬さによるだろうが鈍感な連中は擦り傷程度で済むだろう。もしかしたら硬すぎて擦り傷すらつかないかもしれない。
圧倒的に心をすり減らしているのは優しい人だ。なんともかわいそうである。
一体私は何を言いたいのだろうか。
そうそう。
優しい人に甘えっぱなしじゃ、あなたの人生がままならないと言いたいのだよ。