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【エッセイ】芸術家の元教え子(1000)

先日、学生時代に家庭教師の生徒だったギタリストの左賢志チョアヒョンジ氏と居酒屋で飲んでいた。

左氏、我がエッセイに三度目の登場である。

一度目(リンクにあるサブスク、聴いてあげてください。めちゃくちゃいいです!)

二度目

ふたりで10人前食べた左氏おすすめの鉄なべ餃子

左氏は勉強を教えていた小中高時代に比べたらとても明るく愛想がよくなった。ギター教室もやっていていろんな人間と付き合う内に人格が出来上がったのだろう。

こどものころの彼はほとんど無愛想でいつも何かを考えているような感じの子だった。ただし、ゲームや漫画やアイドルの話になると楽しそうだった。多分私がこどものころと似ている部分があった。だから彼のことは特別に気にかけていた。

遺伝子が半分以上同じ彼の兄が東大に行ったほどなので頭は相当キレる。娯楽の与えるその楽しみが虚しいものであることは悟っているように見えた。生涯を捧げる価値のあるものを見出したいと考えていたに違いない。そして彼はギターに出会った。

それは高校生の時である。

私は彼のお母さんと彼との進路希望の思惑のいざこざに巻き込まれた。そこそこの大学に合格する卒業生(私もそのひとり)を排出するような地方の私立中高一貫校に在籍しているというのに。

ある日彼は「ギターを極めたいから音大に行く」と言い出したのである。

お母さんとしてはせっかく勉強するために私立高校に行かせているという気持ちが強い。私も小学6年生の時、かなり熱心に彼に勉強を教えたので確かに少しだけ淋しい気分になった。

私も当時軽く説得を試みた記憶がある。

しかし彼の信念は固かった。半ば黄金に近い意思を持つ子だった。

そんな彼も30代半ば。ギターで生計を立てている。真に尊敬する。彼の兄が異次元の天才であるとは先のエッセイに書いたが、彼もまたすばらしい人間だと思う。

私のこども頃のことを思い出す。私は世に不満しかなかった。今は少し成長して「不満の方が満足より多い」という思考状態になった。

彼とは取り止めのない話をした。別に何か話す話題があるわけじゃない。私たちにはあまり共通点がないのだ。

共通点があるとしたら・・・。

すけべなことくらいかな。

否。イエスへの信仰。これ以上の共通点はない。

ケンジ。また飲もうぜ。

ふたりでアメージング・グレースを超える有名なゴスペルを創ろう!約束だぜ!!



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