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突然の怪我 in NY
2024年11月15日(金曜日)
秋学期11週目の終わり、教員が振付をしてくれる舞台に出演した。
講義、リハーサル、アシスタント、課題、論文読みと、睡眠時間4-5時間で何とか乗り切っていた毎日だった。
(あと少し、あと2日舞台で踊れば、もう少し落ち着いた日々が迎えられる…!)
そんなことを思いながら1日目の夜の舞台で、2演目めが踊り終わるその瞬間の出来事だった。
(あとは舞台袖に捌けるだけ。)
そう思いながら立ち上がろうとした瞬間、膝がガクンと中に入ってしまい、ハムストリングスと内側の靭帯が一緒にグイーンっと引っ張られた気がした。
と同時に、激痛が走り脚に力が入らなくなってしまった。
(え…?いやでも、考えてる暇はない。どうにかして袖に捌けなければ…)
歯を食いしばり、意地でも何とか何事もなかったかのように…と思いながら舞台袖まで歩いていったが、直後は膝を抱えてうずくまった。
お辞儀のために舞台に出ていくことも出来ずに、ただ丸まっていた。
一緒に出演していた同期全員がお辞儀後に声を掛けてくれて、そばにいてくれた。
なにか様子がおかしいと気付いたのだろう。
舞台袖にいた舞台マネージャーがやっと異変に気付いてくれて、車椅子と15分ほど使える仮の氷パックを持ってきてくれた。
本来であれば、私はその後すぐに早着替えをし、3演目めに出演する予定だったので、
「大丈夫。着替えて次の踊らないと。痛み治まってきた気がするし。プロはここで頑張って踊らなきゃ。」とみんなに話していた。
しかしみんな口を揃えて、「そんなはずないでしょ!さっきまで膝抱えてお辞儀にも出てこられなかったのに無理しない方がいいに決まってる。プロならなおさらやらない!」と怒られてしまった。
(まあたしかにそうか…)
大人しく黙っていたら、みんなに抱えられて車椅子に乗せられた。
そして手当てを受けに、1階の舞台から12階までエレベーターに乗って、みんなで向かった。
しばらくしていると、行き違ってしまったアドバイザーが走って来てくれた。
「何があったの?」
私にも分からなかった。
だから私は、「分からない。立ち上がろうとしたら膝がクルッと捻って…激しい痛みがあって、息ができなかったから舞台裏で転げ落ちてた。多分。」
と答えた。
すると周りの同期が、
「言ってる通りだよ。」と言ってくれた。
アドバイザーは、「ひとまず氷で冷やしてるから分からないかもしれないけれど、テーピングをしてみましょう。」と声を掛けてくれた。
そして教職員のオフィスへ入り、車椅子に乗せられたままテーピングをしてもらった。
氷を外してしばらくして、(すこし痛みが出てきたかな…)と考えているところに、アドバイザーが「お水と鎮痛剤飲んでおく?」と尋ねてくれた。
痛みが酷くなる前に飲んだ方がいいだろう、と考えた私は、「そうですね。もらってもいいですか?」と答えた。
念の為、アドバイザーは私の目の前にいてくれることになり、近くにいる同期達が別の部屋へ、水と鎮痛剤を取りに向かってくれることとなった。
お水と鎮痛剤を待っている間、アドバイザーが話してくれていた。
「朝から子供のショーでも踊ったから頑張りすぎたのかもしれないね」
声を掛けてくれている最中、急にめまいがし始めた。
「あれ?なんか、クラクラしてきて、意識失いそうな気が…」
そうアドバイザーに話したあとは、記憶がない。
気がついたときには救急隊員が目の前にいて、同期みんなが心配そうにこちらを見つめていて、それから振付家やアドバイザーが「良かった…」と安堵した様子だった。
5分ほど呼んでも反応がなかったらしい。
結局倒れた原因は分からなかったが、恐らくショックか疲労で迷走神経反射が出たのだろうと救急隊員は話した。
救急隊員は一応救急車で運ぶ必要があると思うと何度も話してくれていたが、大学院の保険には入っているものの、高額請求されることの方が過ぎり、それが恐怖で救急車に乗ることを断り続けた。
「でも…」と話す救急隊員に、
「今までにもコロナのワクチンを打ってから何度も予兆なく倒れるんです。それがもしかしたら今来たのかも。」と答えた。
そう答えると、アドバイザーまで
「彼女は日本の正看護師なの。だから彼女が1番自分のことを分かってて判断してると思うわ。」
と話してくれた。
それを聞いた救急隊員は安心した顔をして、「なんだそうだったのか。もっと早く言ってくれよ、僕達よりも知識持ってるんじゃないか。」と苦笑いで話してくれた。
その頃には私も意識がはっきりとしてきていたので、自身の個人情報とサインを書き、救急車には乗らない旨を承諾して、救急隊員には帰ってもらった。
ちなみに救急車に乗りたくなかったのは、正看護師の免許を持っているから、とか、今まで倒れたことがあるから特に問題がない、とかではなく。
アメリカで救急車に乗ることで請求額がとんでもないことになるのが怖かった、というのが本当に真っ先に出てきた理由だったのだが。
さて、話に戻る。
ここからどうやって家へ帰ろうか。
問題は膝が痛くて歩いて帰れない。
そう考えていると、同期みんなが「車椅子に乗って。家近いんだから送ってあげる。」
と言ってくれた。すでに23時半頃でとても申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、背に腹はかえられない。
潔く「ありがとう。」とだけ言って、みんなに送ってもらった。
「明日も迎えに来てあげるから、無理しちゃだめだよー!またねー!」
そう言いながら、みんな帰っていった。
ありがとう。ありがとう。本当に感謝しかない。
その時の様子がこちら。ルームメイトもびっくりしただろうな。⬇️
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いつも通りの日々の予定が、思わぬ展開で終わった日だった。
次の日へ続く…