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ベルリン旅行記⑥2022/7/18 晴れ

 たくさん寝た。
 朝7時頃に目が覚め、布団の中でスマホを見ると、佐々木さんから連絡が入っている。今日は佐々木さん、Kさん、Dさん父子の4人はラウリーさんから教えてもらった近くの古城へ行ってみるとのことだ。そこまでは特急電車で片道2時間、往復150ユーロ程かかるとのこと。
「一緒に行きたい人は10時にロビー集合」とある。多少回復したとはいえ、明日はまる一日飛行機に乗るわけだし、我々は遠慮させていただく。
 今日はとうとう、ベルリンで過ごす最終日となる。昨日は体力のなさを痛感した。精神的疲労だって馬鹿にできないレベルで溜まっていることも分かった。今日は一日、ホテルの周辺を探検しつつ、のんびり過ごすことにしよう。

 朝ご飯を食べに、1階へ降りる。混み合っていた昨日に比べ、朝食会場はガラガラに空いている。そうか、今日は月曜日だものな。
 いつも通りの朝食ラインナップにも、もうすっかり慣れた。昨日は昼・夜と粗食だったためさすがにお腹が減っているので、もりもり食べよう。夫は、黒胡椒の効いた丸パンが大変気に入ったらしく、おかわりをしていた。
 お腹を満たし、支度を調えて外へ。昨日と同じ川沿いの道を歩いて、イーストサイドギャラリーへと向かう。同じ道を歩いていると、昨日と比べて格段に足取りの軽い自分に気づく。やはり睡眠は大切だ。

イーストサイドギャラリー

 イーストサイドギャラリーは、ホテルからほんの5分程度歩いたところにある。昨日電車に乗る時にも、遠目に見えていた。連結バスや電動キックボードの行き交う横断歩道を渡るとすぐ見えてくるベルリンの壁を、カラフルなグラフィティアートたちが彩る。

これらの作品は著名な芸術家によるものらしい
壁に扉なんてあったのか… それとも後付け?

 シュプレー川沿いに、かつてはベルリンの壁があった。他にも壁の一部が残っているところはあるが、このイーストサイドギャラリー周辺が直線距離では一番長く壁を残してある場所らしい。
 描かれているアート作品は自由や平和を主題に描かれたものが多く、日本をモチーフにした作品も数点ある。最も有名なソビエト連邦と東ドイツの首相同士によるキスの風刺画の前は、記念撮影をする観光客で賑わっていた。

タイトルは『神よ、この死に至る愛の中で我を生き延びさせ給え』というらしい(Wikipedia調べ)
日本モチーフの絵も

 それにしても、『分断』の目に見える形である「壁」に絵を描いて残そう、というダイナミックな発想がすごい。この街はあちこちにアートや、アート未満の落書きが点在しているが、そういう場所だからこそ生まれる発想、文化なのだろう。

かわいい…

 しかしたったこれだけの厚さの壁に、街(というか国)が分断されていたのだと思うと、気が遠くなる。有刺鉄線や監視塔等で厳重に警戒されている中、それでも壁を越えて自由を得ようとした人たちが大勢いたということだ。壁が崩壊したのはわたしが8歳の時だったが、壁によじ登ってハンマーで打ち壊し、気勢を上げる人々を映像で見た記憶が漠然と残っている。あの時、よく分からないなりに「世界では何かすごいことが起きているらしい」と感じたあの場所に、こういう縁で今立っているのだと思うとなんだか不思議である。

 イーストサイドギャラリーを壁沿いに見ていくと、道の向かいに巨大なスタジアムがあることに気づく。メルセデスベンツがネーミングライツを持っているアリーナと、大型のシネコン。アリーナにはバスケットコートがあるらしい。欧州のスポーツといえばサッカーが群を抜いて人気なのかと思っていたが、こんなに立派なバスケットスタジアムもあるんですね。

流石の資本力
「SHIBUYA」という日本料理店が入ってた

 ここに入っているテナントのスタバ(アイスコーヒーはびっくりするほど不味かったがスターバックスラテは安定の美味しさであった)で休憩してから、ショッピングモールに乗り込む。
 メルセデスベンツアリーナに付属している、いわゆるボールパークのような感じだろうか。

カラフルなモール内の様子
エスカレーターは吹き抜けになっている

 ショッピングモールの構造は、ほとんど日本と同じである。一階に大きなスーパーマーケットが入っており、上の方にフードコートがある。
 ユニクロのテナントも入っていた。入店こそしなかったものの、見慣れたいつもの看板のお陰で、昨日の強烈なホームシックが少しだけ和らいだ(かもしれない)。

世界的ブランドなんですねえ

 ふらっと入った服屋で、たまたま目についたデヴィッド・ボウイのTシャツを購入。ロックTシャツが好きでよく集めているが、ボウイのシャツは持っていなかったのでホクホクである。自分への良いお土産になった。

 いろいろ見て回っていると、このモールにも本屋を発見。小さいテナントだが、それでもちゃんとボードゲームを扱っているのがさすがボードゲーム大国である。
 SdJのコーナーもあった。2日経ったおかげで、SdJのマークを見てももう心を抉られたりはしない。睡眠は大事。

今年の受賞作品は欠品が多いのかしら


 軽くお腹がすいたので、ここのフードコートでお昼休憩とする。もうどうしても米が食べたいが、日本料理のお店はガッカリなこと請け合いなので、フードコートを一周し吟味した結果カレーライスのお店を選んだ。
 愉快な暖簾のラーメン屋も、奇天烈な看板の寿司屋もスルーである。心と身体に余裕があったら、謎トッピングのラーメンとか、カリフォルニアロールのお寿司とかを食べて食レポしてみてもいいんだけど、心弱っているときにやることではないですね。ここは無難を選択。

ラーメン
チーズラーメンとは?
BOX SUSHI

 いやこのカレー、めっちゃくちゃ美味しかったです。巨大パスタの手痛い経験から2人で1つにしたが、それでちょうどいい量だった。タイ米みたいな細いお米が、サラサラのカレーと最高のマリアージュ。こういうカレー日本でも食べたいけど、こういうほっそいタイ米って、意外とお店で出て来ないんですよね。わたしはナンより好きだな。また食べたい。

見るからに美味しそう(実際美味しい)

 日本のお米とは違っても、米は米である。とっても美味しく、生き返ったような気持ちで足取り軽くモール内を歩く。
 ここで、この旅初めてのチップトイレ(入り口でチップ代を払わないと入れないトイレ)に入ってみたが、これまで入ったどのトイレよりボロかった。なんせ鍵が壊れていて、閉まらないのだ。嘘でしょ、と他の個室を試してみようとしたら、扉を開けたところに買い物袋が掛けられていて、中に人がいると分かり「Sorry…」と謝ること数回。
 もう鍵がかからないの前提で、みんな対策してトイレ入ってんじゃん。勘弁しろし…と思いつつ仕方なく自分もその流儀に従って急ぎ用を足し、這々の体でトイレを出る。無料のところならまだしも、金払ってコレはしんどい。これまで入った飲食店のトイレは、どこもすごく綺麗で衛生的だったのだが、やっぱり高級店だったからだろうか?

 とか何とかトイレの感想を話しつつ、次は夫の希望で、近くにあるらしいボードゲームカフェへと足を運ぶことに。
 ボドゲカフェへは、モールから歩いて約10分ほど。月曜だが通りは混み合っており、いかにも雑踏という感じだ。壁の落書きも、道に落ちたビールの空き瓶もかなり多く、行き交う人々は心なしか、少々いかつい雰囲気を漂わせている。

プロレスの広告がめちゃくちゃカッコよい

 ちょっと怖いストリートをずんずん進み、カフェのある場所へと辿り着いたが、残念ながらお休みだった。そっか、まあ月曜の昼だものな……。
 18時開店のようだが、あんまり遅くなってからこの通りを歩くのは怖いし、あえなく断念。外のガラス越しに店内の様子を伺うだけとした。もしまた来る機会があれば、是非立ち寄りたい。

閉店中 無念…
窓際に置かれているゲームたちを外から眺める

 途中、ドラッグストアを冷やかしつつ、再びショッピングモールへと戻ってくる。ここで休憩がてら、先程のフードコートでTwitterのスペースを開くことに。
 日本時間はちょうど月曜夜の22時くらいということで、夫がスペースを立てると、少しずつ友人たちがリスナーに入ってくる。気の置けない友人と軽口を叩きつつ、近くのお店で買ってきたスムージーを飲んで、のんびり過ごす。こうしていると、日本との距離をまったく感じない。インターネットってすごい。
 なおこのラズベリースムージー、めっちゃ美味しかったです。ここでもGoogleの画像翻訳でメニューが読めたから、まったく苦労なく注文することができた。

フローズンヨーグルトも美味しそう
ちょい高だったけど美味しかった


 今日が最終日なので、このモールで友人や家族へのお土産を買うことにする。化粧品やらゲームソフトやらなんでも売っているでかいお店で、一通り買いそろえる。お土産はやはり、もらって困らない物がいいだろう。ドイツのメーカーであるクナイプの入浴剤と、海外旅行土産の定番・チョコレートなどを、ガサガサと大量買いする。
 ボードゲーム仲間たちには本場のゲームが一番喜ばれると理解しているものの、彼らが所望するゲームたちはいかんせん箱がでかすぎて、スーツケースに入りきらない。申し訳ないが、いい香りの素敵なバスタイムで我慢してほしい。
 今回スーツケースを貸してくれた我が弟君にお土産をあげたいが、彼の希望の品である「スーツケースに貼れるようなステッカー(できればビールメーカーのロゴのもの)」は、いかにもありそうなのに全然見つからなかった。
 そもそもステッカーというものがまったく売っていない。お土産屋さんも結構見たんですけどね。ステッカー、流行らないのかなあ……。『BELRIN』と書かれたクソダサいマグネットならたくさん売っていたのだが、悩んだ末、不要なら気軽に捨てられるコースターを購入。要らなかったら捨てちゃっていいからね(私信)。

おもちゃ売り場は日本のキャラグッズでいっぱい
任天堂はすごいなー

 細々としたお土産品をたくさん抱え、昨日と違って軽い足取りでホテルへ戻ってくる。
 この時点で夕方16時くらいだが、まだまだ外は明るい。でも今日は無理せず、のんびり過ごすのだ。とりあえず夕飯前に、明日の出立に備え荷物をまとめてしまうことにする。
 先程買ったお土産を入れ、明日着る服と飛行機で使うリラックスグッズを除いた全てを、スーツケースに詰める。圧縮袋が大活躍してなんとかうまく収納でき、ほっと一息。その後シャワーを浴び、18時前にオインクメンバーズとベルリン最後の晩餐をご一緒するため、階下のロビーへと降りる。

 最終日なので、やはり遠出せず簡単にホテルのレストランで済ませることになった。
 とりあえずみんなビールを注文。佐々木さんたちに今日行ったお城の感想を伺うと、なんと彼らも特急券の購入がうまくいかず、帰りの時間も遅くなってしまいそうということで、お城行きは断念して、近隣の古い町を周ったりモールを見たりして帰ってきたとのこと。旅慣れた彼らでも、そういうことがあるんだなあと思う。
 今回の旅では、しつこく誘わずにこんな感じに別行動をしたりと、ほどよく距離をとってくれて非常に助かった。もっと一緒に回ったり色々話したりしたかったけど、このアクティブな人たちとずっと行動を共にしていたら、恐らく身が保たなかっただろう。本当に本当にみんな元気である。やばいな、わたしたちももっと運動して体力つけないとな。

 ビールがやってきたので、全員で乾杯する。ここのビールはピルスナーとエールが選べて、わりに大きめのサイズだ。わたしは明日の飛行機に備えて1杯だけにしようと思っていたのに、名残惜しくて結局3杯も飲んでしまった。とっても美味しく、楽しかった。

瓶もかわいいクラフトビール

 ビールが口に合わないLちゃんは、ここでもまた強いお酒をオーダー。今度は40度である。注文をとるお兄さんが「ベリーストロング!」と警告し、我々も「明日飛行機だしやめておいたほうが…」と怯える中、「いや行くね」と押すLちゃん。酒豪かよ。実際来たお酒は、香りからして強さが分かる代物だったが、ここでも彼女はその場にあるレモンをグラスに投下するなどの策を用いて、なんだかんだと飲み干した。豪傑かよ。
 ラストナイトということで、ベルリン名物・カリーブルスト(30インチ)をオーダー。美味しくて、おかわりする。 

30インチのカリーブルスト
サラダにサーモンが豪快にインしている
このバーガーめっちゃ美味しかった


 昨日の、我々が参加できなかった夕飯は、ラウリーさんが予約してくれたスペイン料理のお店に行ったとのこと。ピンチョスやアヒージョも美味しかったけれど、なんといってもパエリアが出てきたときに全員一丸となって「お米だー!!」と食らいついたとのこと。やっぱり日本人はお米が不足すると駄目なんだねえ、と笑い合う。
 オインクのイベントスタッフ・トビーさんとニックさん(※2日目参照)も、ベルリンコンの打ち上げということで昨日の夕餉にご一緒したそうだが、「ドイツ人とイギリス人のどちらがよりジャガイモを愛しているか」というテーマでフリースタイルバトルが勃発したとのこと。なにそれ、楽しそう。聞きたかった。北海道出身のうちの夫も、もしその場にいたら飛び入り参戦できただろうか。

 旅の思い出やボードゲーム談義に再び花が咲き、最後の晩餐はいつまでも終わりそうにない。

外が暗くならないのでいつまででも飲めてしまう気がする

 ようやく舌が慣れ、現地飯を楽しめる精神状態になったタイミングで帰らなければならないのが、大変惜しい。昨日はあんなにホームシックだったのが嘘のように、本当に「帰りたくないな」と思う。もうあと1週間くらい居たい。でも、Iさん曰く「慣れた頃に旅は終わっちゃうものですよね」とのこと。そういうものかなあ。
 SdJならずとも、またふらっと遊びに来たいものだ。ベルリンは公共交通機関が充実していて、時刻表通りにちゃんと電車が動いていて、海外旅行初心者の我々にもとても過ごしやすい街だった。
 結局22時くらいまでゆっくり飲んで、名残惜しく解散。明日は朝イチで空港へ向かわなければならない。
 今までの旅を振り返りつつ、横になるとすぐに眠ってしまった。

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