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ベルリン旅行記②2022/7/14 晴れ
朝6時前に起床。アラームが鳴る前に目が覚めた。調子が良いからというより、時差ボケもあるのかもしれない。
さっそく朝ご飯を食べに行く。
朝食会場は中庭に面したお洒落なカフェ空間のようになっていて、生搾りフルーツジュースやボタンひとつでできる全自動パンケーキ焼き機などの豪華なビュッフェラインナップに、テンションが爆上がりする。
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パンやチーズ、ハムにオムレツなどを思う存分食べ、コーヒーを飲んで満足して部屋に戻ると、Iさんから「8時に近所の小さなマーケットに水を買いに行きたいが同行しませんか?」との連絡が入る。ホテルの売店で売っている水はお高いので、是非にと返事をする。すると我も我もと人が増え、結局(急な仕事の対応が入ってしまった)Kさんを除く全員で行くことになった。
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お店までは、公園を通って5分程度の道のりだ。朝の公園を歩くのは、とても気持ちが良い。広々とした芝生が広がる綺麗な公園に、安全設計はちゃんとしているのか? と言いたくなるような振り幅のブランコが2脚置いてある。Rくんでは足がつかないような高さで、明らかに大人用である。
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しばしブランコで遊び、変なテンションになって笑う。のびのびとした開放感を感じる。ようやく旅が始まったという実感が湧いてきた。
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ブランコからすぐのところにお店があった。規模的には、日本のコンビニエンスストアのような感じのお店だ。生鮮食品やお弁当などはなく、ペットボトルの飲み物やお酒、スナック菓子やちょっとした日用品が売られている。
ホテルのシャワールームにはシャンプーだけでコンディショナーがなかったのでここで買おうと思い探すが、いくつかのシャンプーはあってもコンディショナーが売っていない。言わずもがな、トリートメントもない。こっちの人たちは、髪がキシキシになっても気にしないのだろうか?
カルチャーショックを感じつつコンディショナーについては諦めるとして、とりあえず大きめのお水(炭酸なし)とビール2本、スナック菓子を購入。アイスでも買おうかと思ったらハーゲンダッツが売られており、そうか、ハーゲンダッツってドイツのメーカーなのかと気づく。考えてみればドイツ語っぽい名前だが、しかしでかい。日本のハーゲンダッツの3倍くらいのサイズである。ホテルの冷蔵庫には入らなさそうなので、諦める。
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マーケットを出てホテルに戻る前に、しばし公園を散策する。子どもには大きすぎるサイズのアスレチックのような遊具に上り、高い! と悲鳴を上げては笑う。
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トランポリンではしゃぐ子どもたちに混じって、大人たちが飛び跳ねる。間隔を開けて5つのトランポリンが配置されており、トランポリン間をタイミング良くジャンプして渡る遊びに興じる子どもたちに混じって参戦するが、大人のジャンプ力でもとても届かない。現地の子どもたちは身体をバネのように使って、ぴょんぴょんとトランポリンを移動していく。うまく飛べたら歓声が上がる。言葉が通じなくても、こういう遊びの感覚はちゃんと理解できる。楽しいが、大人がトランポリンを跳ぶと5回くらいでヘトヘトになってしまうため、ほどほどに遊んだところでホテルへ戻り、支度をしていよいよベルリンの街へと繰り出す。
一人ホテルに残って仕事を片付けたKさんは、ふらりとポツダム広場方面へ出掛けたとのこと。残りのメンバーも彼女を追ってポツダム広場へと繰り出す。空がすっきりと晴れていて、湿度もなくからっとしており、日陰に入ると肌寒いほどだ。
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ぶらぶら歩いていくと、賑やかな通りから高層ビルが立ち並ぶ近代的な町並みへと姿が変わっていく。東京都内で言うと、さながら丸の内の辺りといったところだろうか。ガラス張りのビルの一階がお洒落なカフェになっていて、テラス席で軽装の人たちが朝から優雅にビールを飲んでいたりと、見ているだけで心楽しい。
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カジノやソニー広場といった建物を眺めつつ、少し開けた広場に出る。芝生の広がる坂のところに、Kさんがのんびり座って景色を見ているのを発見。
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近づいていくと、その芝生の傾斜のてっぺんから向こうはかなり急な崖になっていることが分かる。芝生を駆け回るRくんがうっかり足を滑らせたら落ちてしまいそうで、恐ろしい。当然仕切りも、注意書きもない。このへんの緩さが、日本にはない大らかさという感じがする。
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全員集合して、ベルリンの壁の一部が残っているところを見学したり、カフェに入ってビールやジュースを飲んだりしつつ、のんびりとブランデンブルク門を目指す。
途中、『HUNTER×HUNTER』の幻影旅団の証である蜘蛛タトゥーを入れている女性とすれ違って、一人でテンションが上がる。蜘蛛の腹に「4」と入っていたから、ヒソカのファンなのだろう。(もしかしたら、タトゥーでなくどっきりテクスチャーかもしれない)他にも、ポケモンのバッグを持っている男の子や、「亀」とプリントされた巾着を背負った男性などをたくさん見かけた。ジャパニーズマンガの認知度は、本当にすごい。
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ブランデンブルク門の手前にある「虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑」に立ち寄る。写真で見る以上に、現地で体験した記念碑は圧巻である。
外側から内側にいくに従って、棺桶のような石碑が少しずつ大きくなり、中央付近まで行くと、大きい大人の姿をすっぽり覆い隠すほど巨大な石碑群が整然と、不気味なほど静かに立ち並ぶ。何人かでばらばらに歩いていると、すぐ近くにいてもはぐれてしまう。ふと気づけば、記念碑の中で一人になっている。不安にかられ「みんな、どこ?」と大声で呼びかけたくなる。それでもわたしたちは口を噤み、それぞれに思いを馳せながら石碑の間を歩いた。
かつてこの場所でどんな残虐が行われたのか、何をモチーフにしてこの記念碑を建てたのか、等の説明書きは、一切ない。それでも、モニュメントの間を歩いていると、言葉にはできない思いで胸が詰まる。
アートの持つ力に畏敬の念を覚えた。
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ブランデンブルク門は、そこから少し歩いたところにある。
スケールの大きさに驚くが、それよりわたしたちはここ1週間くらいずっとブランデンブルク門前に設置されたライブカメラで現地の様子を観察していたので(まる3日くらいずっと、YouTubeのライブカメラを流しっぱなしにしていた)、「ここかー! あのライブカメラの場所は!」という、誰にとっても至極どうでもいい感慨を覚える。
ライブカメラの映像をずっと流していると、わりと面白いです。とくに深夜。
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ブランデンブルク門脇のお土産屋さん(観光地の土産屋というのは、世界中どこでも似たような変なものを売っている)に寄った後は、ランチを食べにオーストリア料理のお店へ。
オーストリア料理なんてほとんど何も分からないので、メニューを見てもさっぱりである。ここでGoogle翻訳の画像翻訳機能が活躍した。ちゃんとした訳でなくても、なんとなく何の料理か漠然と分かる程度にはメニューが読める。
ウインナ・シュニッツェル(仔牛のカツレツ)を二人で一つ注文。案の定ビッグサイズのカツレツがやってくる。が、これが実にサクサクとした食感で、驚くほど美味い。付け合わせの、キュウリのピクルスみたいな漬物も美味い。ラズベリージャムみたいなのがついていて、こんなの肉につけて食うの? と思ったがせっかくなのでトライしてみると、これもさっぱりしていてなかなかいける。
ドイツには何度か来ているというDさんも「このウインナ・シュニッツェルが今まで食べた中で一番美味い」とのこと。グッドチョイスであった。
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昼ご飯を済ませた後は、繁華街へショッピングに繰り出す。ドイツのブランドであるビルケンシュトックでサンダルでも買おうかと立ち寄るが、現地だからといって特に安い訳ではなく、日本で売ってるのと変わらない価格であった。ビルケンシュトックのサンダルってどうしてあんなに高価いんでしょうね? たしかにかわいいし、質もいいんだけど、やっぱり高い。
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その後、佐々木さんたっての希望で大型書店に向かう。一同のお目当ては、もちろんボードゲームだ。大きな書店だけあって、ボードゲームの売り場もかなり大きかった。オインクゲームズの商品も何種類か置かれていて、感動する。
SCOUTは欠品中なので当然置いていないが、今回のノミネート作のライバルであるTOP TENは早くもSdJロゴ入りで置かれていた。仕事が早い。
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日本では出回っていないゲームに釘付けのギークたちを置いて、他のフロアもぶらぶら回ってみる。Kさんは、海外旅行に行くといつも料理本を買って帰るのだとのこと。使うかは別として、キッチンに置いてあるとオシャレとのことだ。なるほど。
マンガコーナーに立ち寄る。「COMIC」というコーナーにアメコミ、「MANGA」というコーナーに日本のマンガが置かれていて、明確なジャンル分けがされている。『ONE PIECE』『Dr.Stone』等の少年マンガが人気という印象だったが、少女マンガもたくさん置かれていた。特にシュリンクはされていないが、誰も立ち読みはしていない。ドイツでも、やはりマンガを手に取っていく人は多い。クールジャパンである。
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そんな感じで思い思いに過ごしていると、今回授賞式で通訳をしてくださる予定の、オインクゲームズドイツ支社・ラウリーさんが近くまで来ていると連絡が入る。せっかくなのでと合流する。
ラウリーさんは闊達で気さくな女性で、日本語がとてもお上手で大変話しやすい方であった。ご主人は日本人で、3歳の息子さんと一緒に来られている。
これで旅行団は一気に11人の大所帯となった。街を歩くにしても、誰かはぐれていないかと振り返り振り返り進む。Iさんがお土産に買いたいというチョコレート屋さんにやってきたが、さすがに疲れが出てきたのでここで一旦解散とし、夕食前にホテルに荷物を置きに帰ることに。
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海外旅行で初めて電車に乗る。
ドイツの電車は「Sバーン」と「Uバーン」という2種類しかなく、また、どちらを利用しても一律に移動する範囲によって料金が決められている。乗るときに切符を買うが、一定の範囲内ならどこまでいっても何回乗り換えても同じ料金ということだ。また、一日何回でも同じ券で乗車できる。そのため、入り口にも出口にも改札というものがない。その代わり、乗る時に乗車駅証明の印字をする必要がある。うっかりこれを忘れて抜き打ちの切符検査にひっかかってしまうと、多額の罰金を払わなければならないという制度だそうだ。つまり、バレさえしなければタダ乗りができるらしい。ううむ、日本とはだいぶ感覚の違いを感じる。
電車は小さく、大柄な人々で混み合っており、またエアコンが効いていないのか、かなり蒸し暑い。しかし外ではノーマスクで歩いている人々が、電車に乗るときはマスク着用のルールを守っている。電車の本数も多く、ちゃんと正確な時刻に電車がやってくる。なかなか暮らしやすそうな環境だ。
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数駅乗って、ホテルの最寄り駅に戻ってくる。電車に乗って無事に帰ってこれたというだけで、かなり自信がついた。ホテルの部屋に戻り、荷物を置いて、また夕飯を食べに繰り出す。
エレベーターに乗り込むと、途中階で一人の男性と乗り合わせる。このホテルのエレベーターは変わった作りをしていて、ドアが二つあり、それぞれの階ごとにボタンも二つある。例えば「3」を押すと「3階」の扉が開き、「3A」を押すと「3階のA扉」の扉が開くのであるが、このボタンと扉の連動が非常に分かりにくい(そもそも、3Aとは何だ?)。
どうやら今日から宿泊するらしい乗り合わせた男性は、見慣れぬボタンを押しては、首を捻っている。わたしたちに目を合わせて笑い、「よく分からないね、これ」というようなジェスチャーをする(この国の人たちは、目が合うと本当によく話しかけてくる)。
そのときふと、その人が着けているマスクにミープル(ボードゲームでよく使われる人型のコマ)のマークがついているのに気がついた。わたしがマスクを指差して「Meeple?」と言うと、彼は「君たちも、ボードゲーマーか?」と訊いてきた。
「Yes! Do you know ”Spiel des Jahres”?(そうだ。あなたは、ドイツ年間ゲーム大賞を知っているか?)」
「Sure!(もちろん!)」
「Do you know "SCOUT"? I'm designer!(スカウトは知ってる? 僕が作者なんだ!)」
「Oh! Congratulations!(おお、おめでとう!)」
だいたいこんな感じの会話だったと思う。英語ができないので文法が合っているかは分からないが、本場ドイツでたまたま会ったボードゲーム好きと話ができて、しかも彼がSCOUTを知っていて、名前を出した途端に即「コングラチュレーション!」と言ってくれたことに、我々はいたく感激した。
本当にドイツでSCOUTが売っているんだ、ドイツのゲームの中でも最高の権威である賞にノミネートされたんだという実感が一気に湧いてきた。昼間歩き回った疲れも吹き飛び、スキップしそうな足取りで、晩餐へと向かう。
夕食のお店は、ラウリーさんが予約をしてくれたドイツ料理のお店だ。テラス席に通され、大変気持ちがいい。18時を回っているが、まったく日が暮れる気配がない。日本でいう15時頃の明るさである。ホテルに戻らず街を探索していたメンバーも、ぼちぼちお店に集まってくる。
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ここで、更にメンバーが増える。7月16日・17日の二日間にわたり、「ベルリンコン」という小規模なゲーム即売会イベントが行われるのであるが、そこに出展するオインクゲームズのブースを手伝ってくれる現地アルバイトの二人だ。ドイツ人のニックさんと、イギリス人のトビーさん。いずれも男性。トビーさんのほうがよりコアなボードゲームギークだとのこと。失礼ながら、たしかにトビーさんからは、国籍は違えど消せないオタク感が漂ってくる。一目で理解る、この人は同志であると。
ただ、トビーさんの英語の発音はかなりクセが強いらしく、ただでさえ英語ができないわたしたちにはさっぱりヒアリングできない。佐々木さんとラウリーさんが通訳してくれて、なんとかコミュニケーションをとることができる。ビールを飲みながら今回のSdJノミネート作について、現地での肌感覚というか、下馬評のような話を聞く。だいたいどこでも言われていることは同じような感じだ。「まあ、本命はカスカディアでしょ。スカウトが獲ったら面白いけどね。僕は好きだし、応援してるよ。でもなあ、カスカディアもいいゲームだからねえ…」
不思議と初めて会った気がしないのは、日本の友人であるオタクたちといつも話している感じに近いせいだろうか。一度話し出すと止まらなくなり、どんどん熱が入っていく。夢中で好きなボードゲームについて話している彼を見ていると、こちらも嬉しくなってしまう。どこの国の人ともゲームを共通言語にできるなんて、とても素敵なことだ。オタクというのは世界共通である。
初対面の人とでも、ミープルのアイコンひとつで打ち解けられる。会ったこともない――SCOUTがなければ一生会うことがなかったであろう――全然違う場所で暮らしている人たちと、こうして夕餉の卓を囲み、ボードゲーム談義に花を咲かせている。ゆっくりと暮れていく夕陽の下で、巡り合わせの不思議と幸運について、しみじみと噛み締める。
そんな風にロマンチックな感傷に浸るうち、どんどん外の空気が冷え込んできた。ドイツの緯度は日本より高く、気温は北海道並みである。陽が暮れると20度を下回り、外で飲むのはかなり寒い。日本人一同が震えながらブランケットを貸してくれるよう頼むと、お店の人は(夏の間は当然仕舞い込んであるらしく)荷物庫から何枚かのブランケットを引っ張り出してきてくれる。それにすっぽりと包まり、雪ん子みたいになりながらガタガタとビールを傾ける。
トビーさんもニックさんも、もちろん他のテラス席のお客たちもみんな半袖で、ガッハッハとビールを傾けている。改めて、体質の違いを思う。っょぃ。かてない。
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21時半頃にお開きとなり、ラウリーさんたちとは、一旦ここで別れる。寒いが気持ちはハイな我々は、二次会と称して隣のホテルのバー(昨日、佐々木さんたちオインクメンバーが寝酒を飲んでいたお店だ)で飲み直すことに。
二次会のメンバーは、我々夫婦に佐々木さんと、それにDさん親子の5名。一度ホテルに戻った我々と違い、DさんLちゃん父子はまる一日外を歩き回った上で更にお酒を飲みに来ている。一次会でもDさんが一番多くビールを頼んでいた気がするのに、すごい。
Lちゃんがお酒チャレンジで、名前は忘れてしまったが割と強めのカクテルをオーダーする。リキュールをそのままグラスに注いだ、ほぼ割り物の入っていないお酒である。即興の酒レポをしながら、なんだかんだでちゃんと飲み干していくLちゃんはまだ20歳になったばかりだが、アルコール耐性は確実にありそうだ。とはいえ、せっかくの旅行が二日酔いの思い出になってしまうのはもったいない。遂にウトウトし始めたDさんを連れ帰ってもらい、そのままLちゃんも二次会を離脱する。
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佐々木さんと我々の3人は、もうしばらくその場に残ってビールを飲み続けた。オインクゲームズの飲み会はいつも終電ギリギリまで続いてしまうというが、たしかに佐々木さんは大変聞き上手・話し上手で、口調は常に穏やかだが語り出すと熱い人だ。酒の勢いもあってつい話し込んでしまい、長い夜は更けていく。
ふと気づけば、周りのテーブルがボードゲームを遊ぶ人たちで埋まっている。我々が来た時にはまだ空席が目立っていたバーが、今やほとんど満席状態である。
実はこのホテル、前述したボードゲーム即売会「ベルリンコン」の会場真向かいという好立地なのである。だから、ここに今日宿泊しているのは、明日から開催されるベルリンコンに参加する人ばかりなのだ(隣接する我々の宿泊先も、同様である)。だから、みんな翌日のイベントを前にして、前哨戦とばかりロビーでボードゲームに興じているのであった。
これだけ遊んでいる人が多いのだから、もしかしたらSCOUTを遊んでいる人も……? と思ってウロウロしてみると、いた! 我々のすぐ後ろのテーブルについた女性3人組が、SCOUTで遊んでいる!!
これには感動した。ドイツで、全然知らない人たちが、自分たちの作ったゲームを楽しんでいるのだ。ソワソワ、チラチラとそちらを見ていたので、恐らく彼女たちも我々の視線に気づいていたと思う。
折角だから声を掛けようよ! と酔いに任せて捲し立てたわたしに、夫も佐々木さんも「いやいや……」と引き気味である。でも、こんな体験は普通に生きてたらなかなかできるものではない。先程エレベーターで交流した男性との思い出が脳裏を過ぎり、ままよ! とわたしは夫の制止を振り切って彼らのテーブルに近づいた。すると、隣のテーブルの人に「ちょっと、足下気をつけて」と注意を促される。ふと目をやれば、テーブルの間に一匹の犬がじっと蹲っていた。すぐ足の横にいたその子を、もしかしたら踏んでしまったかもしれない!? と気づき、青くなって「SORRY!」と謝りその場にしゃがみ込み、犬の様子を伺う。大人しい子だった。
わたしが犬の様子を見ている間に、隣のテーブルの人たちと佐々木さんが話している。やはり彼らは我々の視線に気づいていたようで、「あなたが作ったゲームなの? とてもいいゲームだね。うちの両親とよく遊んでるよ」というような会話を交わしている。ワンちゃんには申し訳ないことをしてしまったが、会話のとっかかりになれたようだ。
どうやら、隣のテーブル(ワンちゃんの飼い主が座っている方)のグループはYouTuberの集まりだそうで、SCOUTの動画も撮ったよーと話し、夫に名刺を渡していた。更にサインをと請われ、夫は家で一生懸命練習していたサインを、ドイツに来て初めて書いた。スマホにストラップとしてつけている落款を押すと、感動の声が上がる。サインも落款も、準備してきてよかったと喜びがこみ上げる。
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「SCOUTが大賞を獲ることを祈っているよ」と激励を貰い、御礼を言って夢見心地のままホテルへと戻る。
フロントでバスタオルを受け取り(タオルがないのはうちの部屋だけだった)、シャワーを浴びて、長かった一日が終わる。