静寂の図書室で2人は話す

その1:はじまりのはじまり


夕方16時30分
心地良い風がいつの間にか少し寒くなったのは秋の気配が急に来たせいだ。
そりゃ10月になったからな。
外からは野球部員の大きい声が響く
換気の為窓を開けているからか余計ハッキリ聞こえてくる。

図書委員で週3日当番をやっているのだが
来る人皆本読んだり宿題したり黙々と好きな事やっているので
静寂な時間が過ぎていく
それに図書室には常連の生徒ばかりで居心地よくて

ああなんて素晴らしい

そう思いながら私もカウンターで読書するこの時間が大好き
今日は昨日の続きを・・・と本を開こうとしたら

「後輩!!来たぜ!!!」

図書室のドアを勢いよく開け彼はやってきた。

「先輩。うるさいですよ。」
「あはは悪い悪い~つい癖でな」
彼はそう言いながらカウンターに居る私に近づく
「毎回注意する私の気持ちをいい加減考えてください。もう皆慣れてきてるから気にしてないですけどねえ~」
「分かった分かった!!ごめんて。ほら今日の報酬だ。カウンターの隣失礼するぜ」
学校の玄関に設置されている紙パックの抹茶ラテを差し出して、彼はいつものように私の横に座りに来た。
「ったく・・。今日は少し遅かったですね?いつもは16時過ぎなのに」
「おっ遂に俺を待つようになったか?嬉しいねえ~先生に頼みされててさ~早く終わらせたくて頑張って走ってきたんだ許してくれ」
「いや走っちゃダメでしょ怒られますよ。」
「真面目だな本当に」
「真面目ではなく当たり前です。」

彼は私の一学年上の先輩で・・

おっと私の紹介がまだでした。
私の名前は門崎 知恵(かんざき ちえ)
性別は生物学上女性
群馬県のどこかのとある高校1年生
当番は月・水・金
本が小さい頃から好きで勿論委員会決めの時全力で立候補
誰も居なかったのですんなり決まった。
業務は基本1人でやるので最初は覚えるのが大変だったけど半年経つと慣れてくるもんですね。

そして
大きな声で入ってきた彼は
同じく群馬県のとある高校2年生大山 匡広(おおやま ただひろ)
性別は生物学上男性
身長は185cm この前の身体測定で
「なあ?俺身長185.9だったんだけど卒業する頃190になってたらジブリの巨神兵ポーズするから一緒に撮ろうぜ」と意味分からないお願いされて思わず笑ってしまったのは一生の不覚
部活には入らず電車の時間まで暇つぶしの場所ふらふら探していたら図書室が妙にハマり常連の1人らしい。司書さん曰く

「漫画しか読んでないんだけど楽しそうにしてるから私も嬉しいの。」

だそうだ。
私は顔と名前覚えるのが苦手で常連さんと言ってもハッキリ答えられない
なので彼・・・いや先輩の存在は意識していなかった。
司書さんの話聞いてもふーんで終わっていたのだが

「後輩?何考え事してんだよ?あっ今日も面白い事あったのか~なんだよ!聞かせろよ!」
「別に~今日も色々ありましたよ先輩」
お互いの事を先輩 後輩 と呼び合う関係になるなんて分からないものだ。
これはいつの間にか仲良くなって
図書室が閉まる17時30分までの間に行われる
先輩がただ私の話を聞くだけの地味な物語である。







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