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映画「南極料理人」

堺雅人主演映画の「南極料理人」が好きだ。

この物語は、あの「南極物語」で有名な「昭和基地」からも更に遠く離れた陸の孤島「南極ドームふじ基地」へ、堺雅人演じる料理人が派遣され、おじさんだらけの観測隊メンバーに料理を振る舞いながら過ごす日々を描いている。


随所随時に出てくる料理は丁寧に作っている場面から入っていて、どれも本当に美味しそう。綺麗な盛り付けからして、美味しそう。
夜ご飯に作って食べたいなって思っちゃう。

そして、堺雅人の料理作業中の所作がいい。顔付きがいい。

普段はダランとしていて、瞼は重たそうだし、口はへの字みたいな気の抜けた顔してんのにさ。
お皿にバルサミコ酢垂らす時のシュッとした手際とか、キリッとした口元とかさ。ハッとするよね、感心しちゃうよね。
堺雅人って俳優さんすごい。


極地でもイベント事はちゃんと把握していて、豆まきしたり「ミッドナイトウィンター祭」に合わせて豪華なフルコースメニューにしたり。
日常生活じゃありえない伊勢海老フライとか、朝からカニとか出てきたり。
退屈で窮屈な南極での生活に、いいアクセントを与え続けている絶妙な雰囲気が堪らない。


私はこの映画を、なんだか心が疲れたときにふと観たくなるのだ。話や個性豊かな登場人物もさることながら、あの口笛オンリーの緩いBGMだって好きなのだ。
おそらく全てに癒されている。


先日も、また久しぶりに観ててさ。
物語の後半で、いろいろあったせいで観測隊の皆が苦労しながらベチャベチャの唐揚げを作るんだけど。

それを堺雅人が食べて「胃にもたれる」って言いながら涙流してて。
きたろう演じる隊長に「泣くこたぁないでしょ〜」って言われて、ティッシュ箱をバトンリレーで回されてくるあたりでさ、なんでかしら、なんかもらい泣きしちゃった。

妻が作った唐揚げを思い出しちゃってんだろうなぁって思ったのもあんだけど。
あのストレスしかなさそうな閉鎖的空間で、トラブルありながらも「何突っ立ってんの?」の一言ですんなり皆の中に入れて。それから後腐れ無く元通りにできるお互いの人間性とかさ、きたろうのさりげない優しさとかさ。
なんだかちょっとかなりいいなぁと思ったら涙出てきちゃった。

たぶん、自分周りの人間関係に疲れてたんだろうな。私は閉鎖的な生活なんかしてないのにさ、閉鎖的な人間関係に窮屈さを感じていたのかもね。


そんなきたろうが「オーロラよりも今はラーメンだ!」ってなるシーンなんかは、特に好き。
「メシ食うため」じゃなくて「南極の気象観測」の為に来てるんだから、「そんなもん知るか」じゃ絶対あかんのに、オーロラ無視して手作りラーメンにがっついちゃってて。

この映画、不思議と「美味しい」とか「旨い」って誰も一度も言わないんだけど、(正確には、たった一人が一度だけ言います。)「美味しい」って言われるよりも最高に嬉しい褒め言葉だよなぁと思ってすごくいい。

堺雅人もきたろうも、あんときめちゃくちゃいい笑顔するしね、「これ、ラーメンだぁ❤︎」ってなるの、食べる人も作った人もまるっとハッピーよね。
ラーメンは王道スタイルでちゃんとチャーシューも入っていて、すこぶる美味しそうなんですよ。


そして、ラストの長尺シーンにはあたしゃぐっときちゃうのよね。
堺雅人が肝っ玉母さんにしか見えないの。割烹着着ちゃってるし。扉はずっと足で開けちゃってるし。
ほいで、会話がもう家族そのものになってる。
「ゆうべ遅かったの?」とか
「も〜!7時に起こしてって言ったじゃん!」とか
「それ、俺のジャージ」とか。
これはこれで、もうこの人達は家族になっちゃってんだなぁ、って思う。

南極での非日常な暮らしが終わり、日本に帰って皆それぞれの家族がいる日常に戻って行く前のシーンだから、余計にぐっとくる。


この映画は、大きな事件があるわけでも大きな盛り上がりがあるわけでもない。いろんなオヤジの詰め合わせ。華もない。
でも、それがいい。それでいいのだ。

頭アワアワで貴重なお湯のシャワー出しっぱなしで、尾崎豊と思われる歌をノリノリで歌っちゃってる、めたくそ気持ち良さそうなおじさんとかさ。
だから、お前なんやねん!wwなんですよ。


そんな緩い映画がほんと好きです。

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