うちら花街の人間はお月さんやで、責任を教える教育
いつもおきに~菊乃です。ちょっと重たいテーマですが・・・
うちら花街の人間はお月さんやと、これは、お日様と違って自分で輝けるものじゃないという意味です。どちらが素晴らしいというわけではなく、うちらは、周りのスタッフやご贔屓さんたちに輝かせてもらって初めて輝けるんやからと。
それが通用しない、理解してもらえないことが多くなっているような気がしてなりません。
うちの店、つるやでは、新しい舞子育成の形という事で、「舞子塾」というのを独自に考えこの10年それを運営してきました。
どういうものかというと、本来舞妓という仕事はあくまで芸妓になる為の過程で修業期間なのです。丁稚奉公ですね。というのも、舞妓さんを教育し世に育てると言うのは、一人育成するためのコストがすごくかかります。どこの街もあきらめていくのはそこが一番大きいと思います。
衣食住の手配。稽古代。接客教育。そして着物(これが一番高いかもしれませんね)着物については、通常の着物と裾引きは反物の量で2倍。作れる方もどんどん減ってきています。そこにポッチリ、花簪。最低12か月分必要で、汚すと洗い張り代、クリーニング代…半年~1年修行さして、そこからのプロモーションにかかる費用。最低でもその他もろもろ考えると1000万~2000万近いコストがかかります。それを全て、屋形が立て替えます。そして、舞妓さんとして働きながら返すのです。京都ではその期間を奉公と言います。
うちの舞子塾はというと、簡単に説明させていただくと、最初3か月は、体験期間として、最低限の塾費を徴収し、その期間に、お互いに見極めます。
そして、3か月目以降は、どうするのか協議の上、続けるのであれば、仕事があれば、女中としての時給をバイト代としてつるやから支給します。
寮費、食費、稽古代は最低限かかるコストは、立て替え、バイト代と相殺にします。足りない分が出ても請求はせず、立て替えておいて、バイト代が多い月から徐々に返してもらいます。そうすれば、生活苦が最低限無くなるかな?と。
一昔前は、親に売られてきたり、色々な家庭の事情から花街に売られてきた子もいたでしょうが、現在は、それを、自分で覚悟して自分で決めて入ってくるんです。そこには、覚悟と責任が必要だと思います。それを、バイト感覚で舞妓のコスプレしたいから、それがかなったら、辞めますじゃ、いけないと思います。
最近、世間を暴露で騒がせた舞妓がいましたね?彼女たちの言い分もわかりますが、今の時代、そんな性風俗や売春、飲酒の強要を屋形がするとは思えないのも事実です。旦那さん、お風呂入り等、確かにうちも耳にしたことはあります。
ですが、それを実際してるって同業者にはあったことがないのも事実で、あ、旦那さんのいる子は結構いたかも、でもそれは、自ら選び、旦那をとった子しかいませんでした。
話を戻しますが、うちの店では面接時、明確な当店のルール。
①自分を守るための嘘をつかない
②失敗や悪いことをしたら「ごめんなさい」をすぐに。
③どんなささいなことからも決して逃げない。
そして、必ずするのが、親御さん同席での面接。これは、特に高校卒業したてのお子様、子供の性格。考え方を育成する教育の場は現在、学校にはなく、家庭教育でしかないと思います。しかし、その面接時に、平気で噓をつく親御さんの多い事…その結果お子さんも嘘をつきます。
「ごめんなさい」が言えない
↓
だから嘘をつく
↓
嘘を重ねてどうしようもなくなり逃げる
そのループが発生します。舞子塾は、本来先ほど述べた、奉公や借金制度を無くしてあげたいとの思いで考えた仕組みなんですが、やはり、現在の子供たちには通用しないという事がよくわかりました。平気で逃げる。嘘をつく。それを親御さんは怒らない。それに、自分の商品価値を正確に自分で判断できてない。すべて自分の実力だと思っている子ばっかりで・・・
そうなると、例えばアイドルのように、スカウトして、ほんとに磨けば光る原石を芸能プロダクションのように契約で縛り、その代わりに企業として投資を行い、数年かけて回収するという形でしか成立しなくなると思います。
うちは、よく若い子に話すんですが、
うちら花街の人間はお月さんやと、これは、お日様と違って自分で輝けるものじゃないという意味です。どちらが素晴らしいというわけではなく、うちらは、周りのスタッフやご贔屓さんたちに輝かせてもらって初めて輝けるんやからと。だから、この仕事を選んだんなら、その人達を裏切らない。かけてもらったコストはきちんと恩返しする覚悟を持てなかったらうちの業界にはこん方がいいよ~って。
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