アムトラックでの出会い
春分の日、決意めいた投稿をした。
その後しばらくしてFacebookでアメリカの友人からコメントがあった。
「(自動翻訳だから詳しくはわからないけど)あなたが自分自身の道を進んでいるということを受け取ったわ。あなたと列車の中で、同じ旅・道を歩む探求者として出会えたこと、嬉しい!」(意訳)
拙訳で意味が伝わるだろうか。まずは日本語で書き散らかした文章の自動翻訳を読んでくれたこと、そして応援メッセージでしかないコメントをくれたことがすっごく嬉しかった。
彼女、キャサリンとはサンフランシスコからポートランドに向かう列車、アムトラックの中でたまたま、隣り合った。世の中に偶然がないのだとしたら、やっぱりそれは必然だったのだろう。
2016年の春、弟がアメリカ転勤することになって初めてアメリカに行った。弟一家は東海岸・ヴァージニア州に住んでいてそこにも行ったけれど、わたしの主な渡米目的は西海岸と5Rhythms(ファイブ・リズムス)というダンスによる瞑想、ボディワークを使ったセラピーに参加することだった。
カリフォルニア州のビッグサー(Mac OSの名前にもなったためにすぐにBig Surと変換された)にあるエサレン・インスティトゥート(エサレン研究所)で一週間、5Rhythmsとゴスペルのワークショップ受講しながら滞在した後、一度サンフランシスコに戻った。サンフランシスコでも5Rhythmsのクラスに参加して、その後今度は当時、話題でもあったオレゴン州のポートランドを目指した。
アムトラックというのはアメリカの長距離列車のこと。その中で西海岸を南から北まで走る、コースト・スターライト線にサンフランシスコから乗り込んだ。ポートランドまで行くのは飛行機が一番、短時間だ。とはいえ、このアムトラックを使うルートは、日本を立つ前にたまたま寄った(けどいつも寄らないw)自宅近所のお店の人が新婚旅行でアメリカに行ったときのおすすめ、で教えてもらったのだった。
ロサンジェルスからシアトルまで全長2216kmを1泊2日、約35時間かけて進むコースト・スターライト。ロサンジェルスを何時に出たか知らないがサンフランシスコのエメリービル駅で乗り込むのは夜だった。
アメリカは日本やヨーロッパと違って都市間をつなぐ列車旅が盛んな文化ではなさそうだ。駅があった場所は夜だったのもあるけど、かなり場末感があった。乗り込んで、それが指定席だったか自由席だったかもう覚えていないけれど、誰かの隣の席しかなかった。防犯上の理由でそういう時は、見た目大丈夫そうな女性の隣に座る。
「ここ、空いてます?座ってもいいですか?」世界共通で、こんな感じ。
きっかけは何だったのだろう。隣に座っている女性と話しはじめた。
「エサレンというところに行ってきたんです」
「えーエサレン?知ってる!」
「へぇー」
「5Rhythms って知ってる?それのワークショップに行ってきたんです」
「知ってるー。わたしは5Rhythmsとは違うけどタマルパというダンスを使ったセラピーを学んでいるの」
「えー、知ってるの?面白い!タマルパは初めて聞いたけど、どんなの?」
5Rhythmsはアメリカ発祥のワークではあるけれど、アメリカ人全員が知っているものでもない。アメリカでもごく一部の限られた人だけが参加するワークだ。エサレンだってそうだ、ハリウッドスターがお忍びで来ることもあるそうだけどここだって知るひとぞ知る場所だろう。何という偶然!いや必然か!
サンフランシスコからポートランドまででも夜を越える。寝台車もない、ただの長距離列車の座席で長時間。アメリカ人であっても、見知らぬ東洋人と過ごすのは不安もあっただろう。それが、なんとこんなニッチな共通の話題があったなんて!
彼女が学んでいるタマルパのことを教えてもらったり(創始者が有名で高齢なダンサーである、日本人で学んでいる人もいるとのことだった)わたし自身のことも話したと思うけど、車中ずっと話していた訳ではない。
でもまぁ長い列車旅、話す相手がいて少しホッとした。どうやら他の乗客たちもそれぞれ、同乗した他のお客さんと話し始めていた。そういえばサンフランシスコの地下鉄でも誰かに話しかけられたり、バスの中では「あらーあなたのアウトフィット(格好)むっちゃおしゃれで似合ってるわー」とゲイっぽい兄さんに言われたこともあった。見知らぬ他者には無関心を決め込んで話さないのは日本、特に都会だけのマナーなのかもしれない。
たぶん、キャサリンとは別れ際にFacebookの交換をしたんだろう。彼女はアーティストでもあって、その後時々アップされるちょっとした小物がかわいくてコメントしたり、作品展をオンラインで見るの楽しみにしているよ、とコメントしたりの交流?があった。
「キャサリン、コメントどうもありがとう!ほんと、あれは列車での素敵な出会いだったよねー、今でも覚えてる。わたしは随分と長い間葛藤していたような気がする、けど最近ちょっとは楽に軽くなってきたよー」
冒頭のわたしの投稿へのキャサリンの応援コメントに、わたしはこう返事をした。
すると彼女はこう返してくれた。
「あなた自身だけじゃなくてあなたを取り巻くコミュニティ、地球自身さえもヒーリングする深いワークをまず、してきたんじゃないかしら。あなたは強いよ!」(意訳)
いやいやいや、それはいい過ぎだよー。とも思いつつも、やっぱりいろんなことがあったから今がある。(それは彼女自身がたしか闘病経験を経ての現在だと思うので同じ思いなんだろう)
そして、今わたしが取り組みたいことって言葉はどう選んだらいいのかわからないけどヒーリングだったり、その人がその人の自然になる、自然を発揮することをお手伝いすることだ。
わたしと出会ったのはわずかな時間、わたしの言語を100%理解していない相手であっても「あなたは強いよ!(もうすでに十分な癒しを終えているよ)あなた自身の道を歩んでいるのが嬉しい」。
そう言ってくれる人がいる、そう言ってくれる人に出会えた。
わたし自身の長い旅のすべてを受け入れ、認め、祝福されているんだなぁ。
旅先のアムトラックで隣り合った、海の向こうからの同志のコメントにものすごーく励まされた。