今日から"また"、『エアドア』が、お部屋探しをより良いものにしていきます。
一昨日、オンライン賃貸プラットフォームの「エアドア」がリリースされましたので、より多くの人に知ってもらえればと思い、noteを書くことにしました。
諦めたくなかった、"より良い"お部屋探し体験の追求
改めまして、菊川航希と申します。以前は「OYO LIFE(オヨ ライフ)」というオンライン賃貸サービス(現在は他社へ事業継承し、サービスはクローズ済。OYO Japanとしては引き続きホテル事業を運営中)に従事しておりました。その時の学びを綴ったnoteを昨年夏頃に書かせていただきましたが、改めて、読んで頂いた方々、シェア頂いた方々、誠に有難うございました。少しでも誰かの参考になっていたら嬉しく思います。
残念ながら終了してしまった本サービスですが、個人的には、この事業領域の課題に引き続き向き合えないかと思い、今回の学びを活かして、より良いサービスを新しく作れないか、と考えておりました。
そんな時に、出会ったのが、賃貸業界特化型SaaSをやられている会社に約10年いた後、OYOに移られた鬼頭さんでした。そこから二人で、ユーザーのニーズ、管理会社・仲介会社様のニーズ、これまで取り組んできたこと、当領域における課題感、世の中がどこへ向かうのか などを、業界の方々と対話してきました。
そして、ユーザーにとっての賃貸の体験を少しでも良くできればという思いと共に、この「エアドア」を作りました。今日からまた、お部屋探しをより良いものにしていきたい。そんな思いで立ち上げています。
自分も再度挑戦したい領域でもあったので、経営体制についても議論を重ねましたが、結果としては、鬼頭さんを代表とし、私は創業出資という形で、歩むことを決めました。不動産領域で10年以上の経験があり、今後もこの賃貸領域のために進んでいくという、大いなる決意をされている鬼頭さんの創業noteはこちらになりますので、宜しければぜひご一読ください。
今後も私ができる範囲で貢献していきますが、一方で、私自身もフルコミットできる別の事業領域を模索しておりますので、お互いで切磋琢磨しながら、より良い世の中を作っていきたいと思っています。
さて、どんなサービスを作ろうか
とはいえ、「エアドア」を作っていくにあたり、どのようなサービスにしていくか多く悩みました。むしろ今も大いに悩みながら進んでいます。今回はそのことについて、誰かの参考になればいいなと思い、悩んだ点について書いてみることにします。
以前関わっていたOYO LIFEでは、敷金・礼金・仲介手数料無料、家具家電付き、1ヶ月からの契約が可能、オンラインで契約・クレカ支払いOK、などのサービスを展開していました。これらは全てユーザーが一定課題に感じているものであり、サービスの特徴はその課題に対する私たちなりの解決策でした。
しかし、それら全ての要素が全てのユーザーに刺さっているわけではないですし、もちろんトレードオフ的にユーザーにとって利便性を下げている部分も多くありました。もっと直接的にいうと、後から振り返ってみると、当時は様々な要素を足しすぎて、誰の何の課題を解いているのか定まっていない状況だったと思います。
どの課題にフォーカスするのか
その中で、今回新しくサービスを作っていく時に、誰のどんな課題にフォーカスをするのか、何は要素を増やすのか、減らすのか、を考えました。課題自体も多岐に渡るので、それぞれがどの程度の大きさか、どのような質の課題か、を見極めた上で、取捨選択をする必要がありました。例えば、下記のような整理です。
1. 課題の大きさ
= [ユーザーの数] × [課題の重さ] ÷ [現状のソリューションの対応具合]
2. 課題の質
= [課題の解決しやすさ] × [隣接する課題の大きさ] ÷ [解決のためのコスト]
その上で、プロダクトにおけるどんな要素を増やしたり、減らしたりするべきで、それらがどのくらいユーザーの意思決定に影響を与えるのか、について検討しました。
例えば、ブルーオーシャン戦略などでも、よくこのようなマッピングをしていたりするのを目にしますが、サービスにとっての競争要因を横軸に、ユーザーが享受している満足レベルを縦軸にとり、各サービスを比較検討したりします。実際にはこんなグラフまでは書かなくとも、このようなことを頭の中では考えながら、議論しているケースをよく目にします。
その時に陥りがちなのが、例えば、上記のグラフのようにサービスαとサービスβを比較する場合に総合点や平均点などをひたすらに上げていくことを良しとし、その結果として、だからこの要素を足そうとか、この要素を強くしよう、といった足し算的な議論があると思います。そうすると、総合点や平均点としては、どんどん高くなっていき、サービスとして良いものになっていくと思いがちです(実際にそうなるケースももちろんあります)。
一方で、特に初期のプロダクトでは、様々な要素を足すことによって合格点に届かない要素が増えてしまったり、要素が減ることが不安で、やっぱりこの要素は保持しようとして強みにフォーカスできなかったり、というような状況になったりします。それは、時に結果として、ユーザーにとっても非常に中途半端なサービスになっているケースもあります。
それをきちんと見極めるためには、その要素が増えること・減ることがどのくらいクリティカルなのか、を検討することが非常に重要だとだと考えています。先ほどの図で言うと、例えば、下記のA〜Dのような要素をみること、だと感じています。
例
A. 享受している利便性との差分がクリティカルな程度にならないか
B. 少しでも下がるとユーザーが利用意向を失うほどのクリティカルな要素ではないか
C. クリティカルなほどに不利益をもたらす要素にはならないか
D. 加わった/取り除いた要素はスイッチングするのにクリティカルなものになるのか
上記はあくまでイメージで、実際にここまで詳細にグラフ化することを毎回やっていたわけではありませんが、そのような観点で、ああでもない、こうでもない、と議論を続け、最終的に大事にしたことは、捨てること、やらないを決めるという引き算的な思考でした。どうしても総合点や平均点を上げたいので、要素の付け足しや強化といった足し算的な思考に目がいっていたのですが、むしろ引き算をしてシンプルになった時に、よりサービスとしての魅力度を上げる結果に繋がったりしました。
引き算的にできあがった『エアドア』
具体的には、「エアドア」は、1ヶ月から契約が可能といった短期賃貸の要素を大きく捨て、また、敷金・礼金無料という要素も捨て、さらに家具家電込みの要素も大きく捨てることにしました。そして掲載は管理会社様のみに絞り、店舗も捨てて、内見はエアドアのパートナー仲介会社様との現地集合・現地解散とする、など多くの引き算をしました。
その結果、出来上がったのが現時点でのコンセプトは下記の通りです。
エアドアの特徴
・仲介手数料 0円 or 2.2万円(現在 全て仲介手数料無料キャンペーン中!)
・店舗に行かずオンラインで完結
・管理会社からの直掲載なので、物件は最新情報で、おとり物件もなし
・初期費用クレカ払い または 分割払いも可能な物件が多数
もちろん資本力の違いや本国のビジネスモデルへの拘りなど他にも要素はありますが、3年前にオンラインの賃貸サービスを始めた時と、本領域における課題感はほとんど変わらないにも関わらず、当時とは大きく異なるサービスコンセプトになったのです。
もちろんこのコンセプトも初期的なもので、これから多くのユーザーや管理会社・仲介会社様の声を聞いて、多くの改善をしていく必要があると思っています。ただ、同じような課題を感じていてもどの課題のフォーカスをするのか、どの要素を足すのか引くのかで、最初のプロダクトは異なるんだな、ということを身をもって実感をしました。
不動産業界出身のメンバーを中心に、不動産会社様と共に作る「新しい未来」
そんな「オンライン(長期)賃貸プラットフォーム」であるエアドアのメンバーは、多くが不動産出身者たちです。具体的には、いい生活、SUUMO、LIFULL、goodroom、at home、OYOなど、業者間システムからメディア、リノベ、サブリースなど様々な領域の出身者たちで日々サービスを作り上げています。(今度は「黒船」ではありません!笑
上の方にはつらつらとこねくりまわして色々と書いていましたが、実際に出来上がったモデルは、不動産賃貸業界にいらっしゃる方なら一度は考えたことのあるものかと思います。かつこれまでも複数のチャレンジがあったと思います。
実際、リリースに至るまでもいくつも壁があり、これからも、既に見えているものだけでも多くの壁が待ち受けております。ですが、リリースまでの目標として掲げていた「空室1万部屋の掲載」を達成できており、良いスピード感を持って、「オンライン賃貸プラットフォーム」の構築に向かって進んでいます。
とはいえ、この目標はまだ第一歩目に過ぎず、ユーザーさんからすると、住みたい物件が見つかりきらない、サービスとして使いにくい・分かりにく、などの声が多くあるとも重々理解しています。今後はそのようなユーザーの方々の声を聞きながら、さらに多くの管理会社様・仲介会社様に使っていただけるような形を実現しなければいけないです。まさに、エアドアは、そのチャレンジができる稀有な組織だと思います。もし少しでもそんな未来を作るのに一緒に歩みたい人がいれば、ご連絡ください。
私はこれからは後方支援的な形に移ってしまいますが、道半ばで終わってしまった事業領域において、次にやるならこのモデルだなと思っていた形を、実際にプロダクトとして世の中にリリースできたこと、それに少しでも当事者的立場で関われたことは素直に嬉しいです。有難うございます。
そして、何より、鬼頭さん、花島さんを始めとしたエアドアチーム、リリースおめでとうございます。まだまだここからですが、引き続き応援しております。
頑張れ、エアドア!
2022年2月2日 菊川 航希