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実存の不在 東京都現代美術館 坂本龍一展感想
東京都現代美術館の坂本龍一展を見てきた。音楽普段さっぱり聞かないし、坂本龍一のことも全然詳しくないけれど、感想を書いてみる。
もっと少人数で作品と向き合いたかったよ
なんと言っても人が多すぎる。。。平日の午後に行って、入場までの待ちとかはなかったものの、展示はかなりの混雑の中見ることになった。作品たちは時の流れであったり人物不在の風景であったり、1対1でじっくりと作品、あるいは自分自身と向き合うようなものが多く、ここまで混雑して鑑賞されることを想定されていないものが多いように思えた。
現実からの飛躍による功罪
彼の作品によって象られた空間は、どこか現実から切り離されたような感覚があり、そこにピッタリとマッチした音楽が流れていて、そこまで作り込めることは大きな魅力に感じた。一方で、その特徴は当事者意識の薄いところでもあるように感じた。震災による津波で被災した宮城の高校にあったピアノによる作品は、しんしんと雪が降り積もる中で音を出していた。彼にとっての東北のイメージ、津波、震災のイメージだったのかもしれないけど、山形と宮城に長く住んだ私には少しピンとこないところもあった。宮城の冬、あるいは震災の日のイメージは、雪のない孤独な寒空というイメージで、雪とはどうしても結び付かなかった。震災の日雪が降っていたという話もあるし、まあ難癖に近いけれど、私にとってはあの表現は言語化しきれない違和感のあるものに映った。
彼の創作のメモからも、「計画と推理ではうまくいって50%しか実現しない カンは50%を越える」「誠実は悪徳だ」というような言葉があった。
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その言葉通りそこには現実の泥臭さみたいなものを払い落とした面もあるけど、だからこその洗練された音楽で成功をしたのも事実なのだろうと思った。
一方で、音楽の中霧に包まれるインスタレーションは、大人数でこそ意味のある作品だったと思うし、映えだけじゃ無く、体験してみてこその感覚もある作品だった。
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展示全体として、彼についてはある程度知っていることが前提というか、これまでの経歴や音楽の特徴についての詳しい説明はそれほどないので、現代美術、現代音楽を楽しむのが目的なら知らなくても良いけど、彼のことを知りに行くという目的ではオススメできないかもしれない。
とにかく人が多いのでせめて平日に行くのがオススメ。それでは。