2024年ベストアルバム第2位 - 『The Sun Doesn’t Think』 Margaret Glaspy
「そうそう、ギターって綺麗な音がするし、いろいろな響き方をするんだよな。いい楽器だな」
そんなふうに改めて感じたいなら、このアルバム(正確にはEP)を聴いてみてほしい。ギターというシンプルな楽器が、どれほど豊かな表情を見せるかを教えてくれる作品だ。
マーガレット・グラスピーはギターの人だ。決して派手さを追求したものではなく、一音一音を丁寧に弾くタイプのギターの人だ。音の大きさ、弾くタイミング、選ばれる音色――そのすべてが自然でありながら、強い意図を感じさせる。
このEPはアコースティックギターと歌声だけの弾き語りが中心だ。とてもシンプルな構成だが、そこに漂う静かな存在感は非常に印象的だ。歌声が素晴らしいのはもちろんだが、弾き語りぢからこそ味わえるギターの素朴な音を是非感じて欲しい。マーガレット・グラスピーに好感を持つだけでなく、ギターという楽器の価値をも改めて見直すだろう。
また特筆したいのは、その録音の質だ。指が弦に触れ弦の上をスライドする微かな音、弦が振動して生まれる響き、そしてギターのボディに反響する音――そういった繊細な音がしっかりと捉えられている。派手な音作りではないが、音そのものが持つリアルな質感や存在感が際立っている。あらゆる録音物はフェイクだが、フェイクの中にリアルを感じられる作品だ。
マーガレット・グラスピーについては、柳樂光隆さんがされたインタビューが素晴らしいので全人類是非読んで欲しい(というか、このインタビューではじめてマーガレット・グラスピーを知りました)。
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/41084