
野党間予備選のメリットとリスク
橋下徹氏は政界引退後、幾度となく国政選挙において野党間予備選の導入を模索すべきだと発言している。立憲民主党の泉代表や日本維新の会の松井顧問も、今年4月に予定されている衆議院千葉5区補選では野党間予備選に前向きな発言をしている。
しかし私は当面、予備選は導入すべきでないと考えている。それは、得られるものよりも失うものの方が大きいと考えているからだ。予備選を導入した際のメリットとリスクを挙げてみよう。
メリット
・基本的には与党候補1名 対 野党候補1名という構図を作り出すことができ、与党候補への信任投票となることで有権者に分かりやすさを提示できる
・野党が注目され、各党の政策を有権者に伝えられる機会が増える
リスク
・民意の反映が低下する
・敗れた候補の所属政党は比例票を稼ぐことができなくなる
・予備選で敗れた候補に投票予定だった票が、与党候補に流れたり白票になる可能性がある
・与党候補、野党候補A、野党候補Bの三つ巴が予想される選挙区などでは、実施効果が弱まったり反作用が起きる危険もある
・衆院選の場合は予備選に敗れると比例単独の出馬となることが想定され、党内で名簿順を決めるのが困難になる
・有力な無所属候補がいたり、予備選に敗れた候補が離党し無所属で出馬すると成立しなくなる
本来、予備選というのは米大統領選に代表されるように、党内の候補者を絞るために実施されるものだ。日本では、大阪維新の会が大阪市長選挙の公認候補予定者を決めるために実施したり、自民党が総裁選において実施した事例がある。
しかしどちらもあくまで党内予備選であり、政党間で、かつ全国一斉に国政選挙で活用するというのは極めて困難だ。全野党の足並みが揃うとは到底考えられないし、政党間で結んだ協定を反故にされても罰則などを下すことはできない。
実施するメリットがリスクを上回ることは当面考えられず、乗り越えないといけないハードルがあまりにも高すぎる。
以上の理由から、野党間予備選の実施はあまりにも非現実的であると言わざるを得ない。