下町のバーに2人で
待ち合わせまで時間あるから飲もうよと妹に外に連れ出された。
2人で行動してると仲良いですねと言われるが、そうでもないと思う。
月に1、2回一緒に行動すればいい方で、同じ家にいておはようとおやすみすら言わない日もある。だからこそ、何かに誘われたときは断らないようにしている。
行ったことないところがいいんじゃない?と妹がGoogleマップを開く。
白っぽい外壁とコンクリート打ちっ放しの中にシンプルな木のカウンターの写真を見て、ここにしようと歩き出した。道案内は妹に任せて、お店をBAR-NAVIで確認する。アメリカンウイスキーを中心に置いてあるらしい。禁煙席なし。お酒が飲めてタバコが吸えれば、今日の目的は達成できる。
店に入ると、坊主頭でメガネをかけたマスターが迎えてくれた。
両端に男性客が座っていたので、真ん中の席に座る。お酒は端の方に5本くらい並んでいるだけで、メニューもない。
「水割りで甘くて飲みやすいものと、しっかりしたウイスキーをロックで。あと灰皿ください。」
妹はお酒が弱く、ストライクゾーンがかなり狭い。甘いのは大前提だ。私は基本的になんでも飲める。出てきたお酒を嫌がったら私が2杯飲んで妹は別のを頼めばいいと思うくらいには強い。
真ん中に緑と白の市松模様の小ぶりな灰皿が置かれた。妹はマルボロのアイスブラスト5ミリ、私はコイーバのショートシガリロに火をつける。男性客とマスターの親し気な会話をBGMに、嗅ぎなれた煙が私たちを包む。
「ブランデーにイチゴをつけたお酒の水割りと、ブレットバーボンのロックです。」軽やかでしっかりした香り、すっとしたのど越し。
妹は、あま~うま~と満足そう。飲めない心配はなくなったので、名前を忘れないうちにホームページを調べる。「喉を焼かない柔らかさ」で高品質のライ麦使用、と書いてあった。確かにライ麦パンの香りに似ているような気がする。
新しく入ってきたお客さんが、もともといた男性客と会話をしながら隣に座った。遅い夕飯を食べて、家に帰る途中らしい。妹に言われなければ利用しない、ターミナル駅への通過地点だったところで、前言ってたあれどうなったの、とぽつぽつ会話をする。アルコールと煙が間にあるくらいが、ゆっくりできてちょうどいい。
お酒を飲み終えると店の前で別れ、待ち合わせ場所に向かう妹の背中を見送って駅に向かった。