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4話: 「んちゃんちゃ」4歳吃音児の支援:行動抑制気質とタイミングに気づいた話

おはようございます、吃音のある医師の菊池良和です。
今日も皆様に幸せがありますように。

吃音診療は2歳から70代まで幅広い相談があります。興味ある医師、言語聴覚士、公認心理師(臨床心理士)、園や学校の先生など、医療福祉教育関係者が増えることを期待しています。

4歳3ヶ月の吃音症+自閉スペクトラム症のお子さんと関わる機会があったので、備忘録として、記載させていただこうかとは思います。

初回面接の問題点
・4歳3ヶ月の吃音症+自閉スペクトラム症
・お母さん抱っこで診察室に入る。
・名前が言えない。年齢に比して、語彙が少ない。
・療育を受けているが、「吃音については最初の1音目を伸ばす喋り方の指導を受けているが、することはできない」
・話始めに「んちゃんちゃ」を付けてから話し始めるが、連発の吃音あり


1. 抱っこで診察に

初回面接、まず、診察室に歩いて入れず、お母さん抱っこで診察室に入る
母親に「幼稚園に行くのも、嫌がるのではないでしょうか?」と尋ねると、毎朝、幼稚園に行くのに、ギャン泣きとのこと。

私は「不安を感じやすい体質で、行動抑制気質という10人に1人の特性を持っているのですね」と伝え、母親はホッとした顔をする。

名前を聞いても答えてくれないので、母親に好きな絵本を尋ねると、「虫の絵本が好きです」と。

ASDで療育を受けているが、「吃音については最初の1音目を伸ばす喋り方の指導を受けているが、することはできない」と言われる。


2. 非言語的コミュニケーションを開始

母親と話している途中で、
「タッチ」
と私が手を出す
と、恐る恐る手を出す。

母親と会話中に何回か
「タッチ」
と手を出すと、次第に強くタッチしてくれるようになりました。

ある程度、話せるかな、と思った所で、吃音検査法の絵の名前を声に出してもらう。

ひこうき →「んちゃんちゃ」ひこうき
バナナ →「んちゃんちゃ」ばなな
ゾウ →「んちゃんちゃ」どどどう

ん?

話し始めに「んちゃんちゃ」と付ける珍しいタイプだなと思う。

多くの吃音の子は、「えっと」「うーんと」と話したい言葉を言う前に挿入を付けます。これは、言いたい言葉のタイミングが合わないので、タイミング合わせに使っているのかもしれないと思う。

20単語中、10単語くらいしか知らないので、教えることと、ついでに色の名前も教えていっていきました。言葉の遅れはあると。


3. 2人で声を合わせることで、流暢形成

20単語、1回名前をすべて教えた後、
「じゃあ、先生と一緒に言おうか」と一緒に言うことを誘導し、

「せーの、ひこうき」
と声を合わせると、「んちゃ、んちゃ」を付けずに、

「ひこうき」
すらっと言える。

「せーの」との掛け声で、
バナナ
と2人で声を合わすと、やはり、「んちゃ、んちゃ」をつけずにすらっと言える。
20単語、すべて声を合わせると、吃音や「んちゃ、んちゃ」が出ずに、母親はびっくりする。

これが、吃音です、と説明。最初は「せーの」と声を合わせますが、そのうち、声掛けを使わずに話します。

吃音がこれで根本的に治る方法ではないですが、子どもの吃音を変えられると理解していると、吃音についての理解や支援が深まると思います。

例えば、お遊戯会でセリフが言えないと予想される場合は、2人でセリフを言うことで、支援につながりますよ、と伝えました。

語彙を増やすことについては、本人の好きな絵本などを使ってみることが良いですよ、と伝える。

初回の1時間の診察ですが、母親にとても感謝されました。新しい気づきが得たように感じます。


4. ことばのビル

言語聴覚士の中川信子先生から「ことばのビル」の話をしていただいたことを思い出します。発語というのは言葉のビルの一番高いところで一番難しい部分。

<引用文献>中川信子. 子どものこころとことばの育ち―親子を共に支援するために. 小児耳 2013; 34(3): 234-238

「言葉が出ない」
という最終段階のみに注目するのではなく、それより下の、

規則正しい生活
十分な運動
情緒の発達
手を使う
ことばが分かる
などのステップが発語には必要だと。

情緒の問題のある子でしたが、いきなり発語を誘導するよりは、「タッチ」で非言語的コミュニケーションが有効だったと感じました。

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菊池良和/吃音のある医師
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