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[ねこのピカ]しぶとい病気

恐れていたことが起きてしまった。
いや、むしろ考えてもなかった。
考えたら現実になりそうで、考えないようにしていたのかもしれない。

ピカのリンパ腫が、再燃してしまったようだ。

ようだ、というのは、今でもまだ信じたくないからだ。

2週間前6/8に病院に行って以来、直後から立て続けに気になる症状が現れ始めた。
その日の晩に、猫じゃらしで遊んだ後に開口呼吸になった。
さらには背中に10円ハゲを見つけた。

その時は、まさか再発だとは考えなかった。
開口呼吸は子猫の頃から激しく遊ぶと度々なっていたし、脱毛は抗がん剤の副作用が濃厚。でもがんとは関係のない皮膚病ってこともありうる・・と思い念のため受診すべきか翌日病院に電話したのだが、電話口の方への先生からの伝言は、「ひとまず様子見してください」ということだった。

その後も気になる症状が続いて出始めた。

6/10 
ピカが、横になって静かに座っているのに、どうも呼吸が早い気がする。
この前の開口呼吸で敏感になっているだけかもしれないと、念のため呼吸数を計測してみたら、1分間に45回呼吸している時もあった。猫の呼吸は1分間に通常で25〜40回、40回以上は病気などを疑う一定の目安となる。
さらにこの頃あたりから、ドライフードの食べが悪くなった。全く食べないわけではないのだが、食べ残すようになった。

6/13
深夜。ゴホッ、ゴホゴホと咳をしていた。くしゃみは度々していたが、こんな咳は抗がん剤治療開始後はしていなかった。

6/14
21時ごろ、吐いた。かなりがっつりと、しっかりした量。
ガスモチン(薬)とおやつをあげた2〜3分後に吐いたが、吐いたものはそれではなく、おそらく数時間前に食べていたドライフードがほとんどだった。
飲んだばかりの薬は不思議と見当たらなかった。

6/17
くしゃみを3回連続でしたあと、鼻をフゴフゴしている。
また、唾を飲み込む時(?)に、首を前につき出すような仕草を度々している。これも、リンパ腫発覚前の不調でよくしていた仕草だ。

6/21
ピカのしっぽの一部が変なはげ方をしているのに気づく。背中の10円ハゲみたいに地肌が見えてるわけでもなく、産毛が残った状態で、一部分がごそっと毛がない。
かなり前からハゲてて、産毛が生えたのか?でもこんなにごっそり抜けていたら、気づかないはずないんだよな。
思い返すと、金曜日にいつものようにキッチン台に乗って私の洗い物を見てる時に、しっぽをブンブン振って流しの中に入れるからびしょ濡れにしちゃって、濡れたしっぽを絞って拭いてあげて、その後ベランダで日に当たって乾かしていた。
(ふわふわだったピカのしっぽのボリュームが一気に減ったなと感じたのもこのあたりからだった。乾いた後、しっぽがひとまわり細くなったのを見て、さっき濡れて拭いたせいだ、濡らさないように見てあげれば良かった、と後悔したんだった)
だから、こんなに抜けていたら、その時にだって気づいたはずだから、金曜日よりも後のはず。
キッチンにのぼって、使ったばかりのガスコンロとかに触れてしまって溶けたとか?でも調理後は登らないように気をつけてるし、こんな風になるのかなぁ?と疑問しか残らない。

これらを、今日の診察の時に伝え漏れないように、先生に渡せるよう事前に簡潔に紙に書いてまとめた。
が、最新の21日のしっぽの異常な脱毛のことだけ書き損ねてしまった。
書いてないことは家を出る時に気づいていたので口頭で伝えようと思っていたのに、病院が混み合っていてバタバタの診察だったので言い忘れてしまった。(こういうことがあるから、やっぱり紙にまとめておくの大切だな・・)

そうそう。もうひとつ些細なことでいえばこの前の土日のどっちかに爪を切った時、肉球から変なトンガリが出ていた。
刺さってるのかと思って抜こうとしたら、くっついている。
これも、病院で聞くの忘れてしまったな、と思いながら今日帰宅後にネットで調べたら、「肉球からツノ」という記事がヒットした。確かに、ツノだ、これだ、と思った。
原因不明らしいが、何か危険なものではなさそうだ。

前置きが長くなった。

そして、今日の病院での診察。
待合の椅子で順番を待っている私のところに、先生がやってきた。
今日は病院が混んでいたので診察室が空いていなくて、この場で診察させてもらいます、と。
そんなこともあるんだとびっくり。確かに平日のわりに今日は混雑していて、ソーシャルディスタンスをとって1席空きの待合の椅子はすべて埋まっていた。

紙にまとめてきました、と渡すと、目を通す先生。
すぐそばに出入り口のある待合スペースなので、ピカをキャリーバッグから出すわけにもいかず、なんだかちょっと落ち着かない診察だなと思ったけど、その時はバタバタとした雰囲気に飲まれてしまった。
でも、後になって思えば、やっぱり診察というからには、一緒にまず猫の顔や様子を見て欲しかったな。もちろんピカを預けた後処置する時に触診はするんだろうけど、落ち着いて猫の体や様子を見ながら話せたら、尻尾の脱毛のことも忘れず伝えられたのにな。

咳をした時の動画を撮っていたので見せると、
「もしかしたら、”逆くしゃみ”かもしれない」とのこと。
発作的に起きるようで、それなら特に心配すべきものでもないっぽい。ちょっと安心した。

ピカをキャリーバックごと先生に預けて、一旦待ち。
同じくリンパ腫で通院していて仲良くなった猫さんの飼い主さんと引き続きおしゃべり。彼女はとてもポジティブな空気をまとっていて、話していて楽しい。先に診察を終えていた彼女のお会計が済んで、帰るのを笑顔で見送った。

そして、私の番がきて、診察室に呼ばれた。
その場にピカはいなくて、検査結果をのみを伝えられた。
パソコンの画面にうつる、レントゲン写真。
以前今日と、以前の寛解時。
胸のあたりに白いもやが写っていた。

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「以前は心臓がはっきり見えていたけど、境目がわからなくなってしまってますね」
先生が言う通り、寛解時のクリアなものと比べると、差は明らかだった。
まさかだけど、考えないようにしていた、再発しているようだとのこと。咳などの症状も、気道が圧迫されてきているせいかもしれないと。
そして、ずっと使ってきたオンコビンが効かなくなってしまっていること。
そして、血液検査の結果は数値的には投与可能なので、これまでメインで投薬していたオンコビンではなく、今日からロムスチンを投薬しましょう、ということだった。
「そういえば、ロムスチンって結局1回しか投薬してないですもんね!」
そう言った私の声が、やけに明るい声に聞こえるな、ともう一人の冷静な自分が聞いていた。

ロムスチンは、以前投薬した後に、ピカの白血球の値が激減してしまったこともあり、しばらく使用していなかった。
なので先生曰く、4週に1回ロムスチンというプロトコルも、続けていけるかどうかわかりません、とのことだった。
「もしロムスチンも耐性がついたり、できないってことになったら、他の薬はあるんでしょうか」
私の質問に対して「ありません」と先生ははっきり言った。

猫じゃらしでの開口呼吸になった時の動画を見せた。ピカがこちらを見上げながらハアハア息をしている。
「最初にここにきた時みたいになっちゃってますね」と先生。
でも最後まで見て「かわいい」と笑って小さくつぶやいて、そんなことが、すごく嬉しかった。

猫じゃらしで息がハァハァなることは、実は子猫の頃からあったのを話したと思う。その時のお医者さんからは、心臓が弱いのかな?とかアレルギーとか別の要因を言われたという話もした気がする。
だから、この呼吸は生まれつきのものでリンパ腫のせいじゃないかもしれないと私は思いたかったしそうじゃないのか聞きたかったのだけど、今日のレントゲン写真を見せられて、もうそれを聞けなかった。
再発のショックで、頭が回らなくなってたから、
細かいことをあまりちゃんと覚えていない。
ただ、衝撃は受けているのに、やけに冷静ではあった。

お会計の時、受付にちょうど先生がいて、
「ロムスチン、まだ効いてくれると思いますよ」と笑顔で言ってくれた。
元気付けてくれたのだろう。
わたしもそう信じてる。
でも、“まだ”って。まだ、が終わったら、どうなるのだろう。

土日に聞いた天気予報では今日は雨だったのに、朝からよく晴れていた。
帰りにいつも寄っていた公園。
今日はやめようか、と思ったけどやっぱり寄った。
いつもの公園。いつもの景色。だけど、毎回ちょっと違う。
いつものルーティンをすることで心を落ち着かせたかったのもあるし、変わらない行動をすることで、ピカの病気もこれまでの日々のように悪くならずにいてくれるかもしれないという願掛けみたいな気持ちだった。
この病院に通い始めてから、不思議なことにまだ一度も、通院の日に雨が降ったことがない。
天気雨のように診察中にサッと降ったことはあるけど、しっかりした雨は、一度もない。

今日が晴れていて、よかったと思った。

帰宅してから、自宅で服用する抗がん剤のプロカルバジンを飲ませた後、ピカが大好きなベランダに出してあげた。
外のいろんな刺激が楽しいんだろうね。
しばらく遊んだ後は、またいつものように玄関のキャリーバッグに入って寝ていた。
夕方、私が雑用をしていたら出てきてそばでみてちょっかい出してきていたけど、その後はまた、夜の0時近くまで、ほとんど玄関で寝ていた。

私が食事や勉強の時にだけ出す折りたたみテーブルに乗るのが好きなピカ。
テーブルから降りる時、以前はヒョイと飛び降りていたのに、テーブルの脚に手をかけて降りていた。
そうだ、これ土日にもやっていたっけ。
そういえば、今日は大好きなキャットウォークにもまだ登っていない。
運動がしづらくなっているのだろうか。
でも、病院で強い抗がん剤を飲んだから、気持ち悪いのかもしれない。
きっと数日したらまた元気になるよ。
そういえば、病院で先生と話していた時のことが思い出された。
「今朝も、猫じゃらしで誘ってもキャリーバッグになかなか入ってくれなくて」と言ったら、
「そういえば、いつもより元気がなかった気がします。検査とか注射の時にいつもは嫌がって抵抗するのに、今日は大人しかったというか」と先生が言った。
違うの、別に元気がないわけじゃないんだよ。
気になる症状は色々あったけど、それ以外の時は変わらず猫じゃらしで遊んで、元気だったもの。
ピカをそんなに弱ってると思いこまないで欲しいな、と後になって考えたり。

帰宅して、夜になるまで、ずっとピカのことを考えていた。
ピカのことを相談に乗ってもらったり経過を話している家族には診察後すぐにLINEで伝えた。
Instagramtのピカピカ日記もいつも通りに書いた。
夜遅くに、ツイッターにも書いた。
Twitterは、親身なコメントをくれる方たちがいるのはわかっていたので、かえって投稿しづらかったのだ。
やっぱり、優しい返信が返ってきた。
「こんなに小さい体で頑張ってるんですね」
今日初めて、涙が出た。

朝病院に行く前におしっこしてからずっとトイレしてないのが気になっていたけど、0時過ぎ夜寝る前になって、やっと、おしっことうんちをした。
トイレを片付けて、ほっとしてベッドに入ったら、ピカがキャットウォークに登っていった。登る元気ないわけじゃなかった。よかった。