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映画『his』を観てきた

#his  観てきた!

藤原季節さん、脚本アサダアツシさんの舞台挨拶上映回。

まだ余韻に浸ってる。

「これを“いい映画”って言っていいのかな?」と藤原さんは言ってたけど、観終わった今確信を持って言える。
凄くいい映画だった!

たくさん感じたり考えたりしたので、感想は気持ちまとめてから改めて

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というツイートをしたので、今まで何度もやろうやろうと思ってやっていなかった映画の感想記録を、ちゃんとしたためました。
あまりまとまってないけど、まずは書くことが大事だと!
初めての映画レビュー公開投稿なので、大目に見てね。

映画を観てわたしが感じたことをつらつら書いてるだけなので(読んだ人が映画観たくなるようにとは思いながら)ネタバレしない内容だけど、少しのネタバレでも気になる人は読まないでください。

まず、この映画は同性愛の2人を映してはいるけど、描こうとはしてないという気がした。こう言うと語弊があるかもしれないけど、同性愛である部分はさほど問題じゃないと思った。

もちろんその部分での生きにくさとか偏見も描いてるし、そのメッセージの重要性もわかるけど、そのステップをクリアしている人にとってはそれはもう通り越してて、ごく普通の恋愛とか愛の話としてスッと入ってきた。
ていうか普通ってなに?だけど。
自分は物分かりのいい人間と言いたい訳でもないし、この時点で、自分に偏見がないとは言い切れない。でもこの映画を観て「気持ち悪い」という感想もあったと聞いた。でもわたしにはふたりが本当に自然に映ったんだよなぁ。もしかしたら宮沢氷魚さんの浮世離れして見えるほどの透明感あってこそ、というのもあるかもしれない。

同性愛やLGBTに限ったことではなく、人種や貧富の差や通っている学校や趣味嗜好まで、人間は自分の生きてきた中で何かしらの常識を身に付けてしまって、気づかないうちにフィルターがかかる。それは逃れられない事だからそのこと自体が間違いではないと思う。ただそれを自覚出来て、いつだって自分の側とそうじゃない側があると思えることが大事なんだろうな。

映画を観ていると自分に近い誰か1人に感情移入しがちだけど、今作では、迅、渚、玲奈、それぞれに感情移入して共感できる部分があった。
渚と迅の白川町での暮らしを描いていた前半から、玲奈との離婚調停を描き出した後半はぐっと、玲奈の視点に寄って観ていた。自分は結婚をしたこともないし、こどももいないけれど、自分もいつかこの立場になり得るかもしれない、とも思いながら。
そして玲奈を演じている松本若菜さんがとても綺麗で、でも説得力があって、よかったな。ファンになりました。
一人で働きながら子どもを育てるというのは、女だから男だからではなく、気持ちや気合いの問題でもなく、物理的にどうしたって不可能なことで誰かの協力が必要なんだと思った。玲奈がヒステリーになってしまうのは良くないけど仕方ないことだと思える。渚だって、ただ迅に会いたいという思いだけでなく、無意識に子供を育てるにはパートナーが必要だという思いがあったから迅を訪ねたんじゃないだろうか。

一方的な視点だったものが、相手の立場に立ったときに見えてくるもの。それが様々なちょっとした場面や台詞でちゃんと回収されていて、それがとても優しくて、愛だと思った。
ストーリーの中で、玲奈の母親については一面性しか描かれていなかったように思うけれど、彼女にだって彼女の信じる愛の形があって、“毒親”の一言で片付けることは出来ないかもしれない。映画を観ながら、わたしの母は、わたしにこういう事を言ったことないな、うちの母ならあり得ない言葉だなと思った。同時に、わたしの母がわたしの母のような人で、よかったと思った。

猟師の源さんも、麻雀と噂好きのオバちゃんも、パイプオルガンの職人さんも、みんな愛のある人。持ってるだけじゃなくて、その愛情をさりげなく惜しみなく分けてくれる。
心が硬くなっている人には、その僅かな愛情がどれだけ有難いものか。
都会で気持ちをすり減らしながら暮らしている毎日で、そうした愛情のおすそ分けがどれだけ難しいことか、と自分を省みる。

つまるところ、恋愛だろうが、親子愛だろうが、同性愛だろうが、愛にいくつも種類なんてなくて、愛の種類は“愛”、ひとつあればいいんじゃない?ということ。

そして、こどもはいつだって、シンプルだ。
何かに迷うことがあったら、こどもに相談したらいいんじゃないかな。

上映後、久々にパンフレットを買おうと思い売店に行った。
涙目のまま、「パンフレットを一部ください」と言って、恥ずかしいな〜なんて思ってふと近くに並んでいたお客さんを見たら、その人も涙目だった。

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映画上映前には、藤原季節さん、企画・脚本のアサダアツシさんの舞台挨拶があったので、舞台挨拶について。

前述したように、藤原さんはこの映画を“いい”映画ということに躊躇したようだけど、これは傑作です。胸張って言っていいと思う。あと撮影が終わって1年も経って、公開された今、藤原さんは渚を再び愛せるか分からないと言っていたけど、わたしは渚はすごく正直で純粋な人だと思った。何なら、空ちゃんの次くらいに。自分勝手で嫌な奴とは思えなかったな。

そして、話題は藤原さんから見た、宮沢氷魚さんについて。
恥ずかしかったり怒ったり、感情が昂ぶると顔も手も驚くほどみるみる真っ赤になって痙攣するのが、「こんな役者見たことない」と思ったそうで。迅と渚が言い争うシーンは思わず見入ってしまった。

渚がお風呂からあがってくるシーンで、脚本では全裸だったはずなのにバスタオルがあったという話。藤原さんとしては全裸を氷魚さんに見せつけるつもりで反応を見ながら演じてたという気持ち、それを聞いていたのでそのシーンもわくわくして氷魚さんの反応を見てしまった。

上映前に宮沢さんが舞台挨拶の最後に言った、
「僕は、今もまだ、渚はあの工場で働いていると思いますよ」
という言葉の意味がわかって、観終わった後にその言葉を思い出して優しく響きました。

そして今泉監督について。
今泉監督がTwitterやめるやめる詐欺みたいなことしてるのは、フォローしているのでわたしもよく知ってるけど、それが“絶好調”のサインだというのは知らなかったな。笑
これからは、Twitterやめますというつぶやきをみたら、あぁ、監督今日も元気にしてるなぁとあったかい気持ちになれます。よかった。

昨年『愛がなんだ』を観たのをきっかけに、今泉監督の作品が気になってそれ以降の新作は『アイネクライネナハトムジーク』『街の上で』そして今作と、ぜんぶ映画館に観に行ってる(『街の上で』は劇場ではなく下北沢映画祭のプレミア上映にて鑑賞)。友人と最近観た映画の話をしていたら「今泉監督すきなの?」と聞かれてハッと気づいたけど、そう意識していたわけではないのです。でも映画が観たい。次は『mellow』を観ます。
また映画の中の人達に会えるのがたのしみです。