世界バレエフェスティバル2018 ガラ - Sasaki GALA -
2018/8/15水 17:00- 東京文化会館
第15回世界バレエフェスティバルの最終日のガラに行って参りました。ファニーガラも入れると約5時間半の長丁場でしたが、楽しかったー!!!ガラはコンテ系の作品も多く、男PDDあり、ソロあり、トロワあり、とバラエティに富んでいたのもよかったです。
今年は佐々木さんが亡くなって初めてのバレエフェスということで、追悼の意味をこめて「ササキガラ」のタイトルが冠されました。第3部は彼に捧げた内容に。
客席もゴージャスで、ロパートキナとアナニアシヴィリが降臨されていました✨ロパ様、相変わらずお美しくて、会場ですれ違ったときはうっとりしてしまった。
以下、演目毎に感想を。
指揮:ワレリー・オブジャニコフ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル (「マルグリットとアルマン」より)
― 第1部 ―
■「ドリーブ組曲」
振付:ジョゼ・マルティネス
音楽:レオ・ドリーブ
レオノール・ボラック
ジェルマン・ルーヴェ
踊り込んでいるのか、この二人のフェスの演技の中では一番安定感があったように思います。ドリーブ組曲って美しい作品だなぁと、ジョゼのことを想ってしみじみしながら観ておりました。回転すると女性のスカートが波打つような形をつくるのが美しい。
■「ライムライト」
振付:カタジェナ・コジルスカ
音楽:ニュー・タンゴ・オルケスタ
エリサ・バデネス
タンゴ風の音楽と振付の作品。バデネスは何を踊っても上手いなぁ、と思って観ていました。彼女はかっこよかったけど、作品としてはちょいと中途半端な感じかな。黄色い衣装は可愛かった。
■「白鳥の湖」より グラン・アダージオ
振付:レフ・イワーノフ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オレシア・ノヴィコワ
デヴィッド・ホールバーグ
ノヴィコワ、旦那様と踊ると思い込んでいたのですが、ホールバーグとでした。今回、ザ・マリインスキーのスタイルのダンサーは彼女だけですが、本当にたおやかで美しいなあと。
■「アリシアのために―アリシア・アロンソに捧ぐ」
振付:タニア・ヴェルガラ
音楽:フランク・フェルナンデス
ヴィエングセイ・ヴァルデス
アリシア・アロンソご本人の映像も入った、彼女へのオマージュ。白いドレスのヴァルデスはアロンソ自身を表現していたのかな。ヴァルデスよりも映像のアロンソの方が印象に残りました。凄いテクニック、そして美形!ヴァルデス、もう少し表現力があればなぁとまた思ってしまった。私は彼女との相性はあまりよくないみたい。
■「タイス (マ・パヴロワより)」
振付:ローラン・プティ
音楽:ジュール・マスネ
マリア・アイシュヴァルト
ロベルト・ボッレ
美しいなあとため息をつきながら観ておりました。アイシュヴァルト、シュツットガルトを退団してからだいぶ経つというのに衰えないですね。彼女の、ちょっと大人で静かな雰囲気がとっても好き。タイスの瞑想曲とよく似合う。ラスト、ボッレにリフトされて光を浴びながらくるくる回るシーンは絵画のように美しかった。ボッレ様は、サポートメインの作品でも体のラインが美しく眼福。
■「グラン・パ・クラシック」
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
音楽:フランソワ・オーベール
ドロテ・ジルベール
マチアス・エイマン
ミリアムが怪我降板となり、急遽ドロテが踊ることになったこの作品。とってもよかったです!マチアス、バレエフェス参加の最初の頃がウソのように調子上がっていてよかった!彼のジャンプは余り力を入れて飛んでないように見えるのにふんわり滞空時間が長く、しかも爪先まできれいに伸びていて本当に本当に美しいと思います。マチアスと踊るのは初めて観たドロテ、強い踊りでこの作品にぴったり。また、彼女は、あでやかな人だなーと改めて思いました。
― 第2部 ―
■「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
サラ・ラム
マルセロ・ゴメス
サラのジュリエットは、これぞマクミラン!という素晴らしさ。彼女の全身から初々しく瑞々しいときめきが伝わってきて、完全にノックアウトされました。彼女の凄さは、役作りが知的に計算されており、更に、それが計算ではなく彼女自身の本当の感情であるというふうに伝わってくるところ。あーあ、ロイヤルエレガンスにも出てほしかったなー・・・。ゴメスとサラは初の組み合わせということでしたが、全く危なげなく。ゴメスも端正なロミオでした。今回は、単なるお支え役でないゴメスをたくさん観られて嬉しい。
■「デグニーノ」
振付:マルコス・モラウ
音楽:アレクサンドル・クナイフェル
マリア・コチェトコワ
やっと出た、コチェトコワのコンテ!彼女こういうの得意なはずなのにABプロでは観られなくて残念に思っていたのです。プログラムには載っていなかったけどデグニーノというのは彼女がボリショイバレエスクールや体操教室に通う時に使っていた地元の駅の名前なんだそうです。ソースは彼女のインスタグラム→ https://www.instagram.com/p/BmdoG_Phf9c/
ストーリー性はない作品のように思いました。コチェトコワの身体能力と雰囲気を活かした、ちょこちょこ動く、ちょっと小動物みたいな振付。衣装は黒のシースルーの総タイツで、胸のところに丸く、黒い布があたっていて、パンダみたいだなーと^^;
やや難解でしたが、古典では見られない彼女の持ち味を堪能。
■「タチヤーナ」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:レーラ・アウエルバッハ
アンナ・ラウデール
エドウィン・レヴァツォフ
タチアナは好きな作品ではないのであまり期待してなかったのですが、この演技は凄くよくて面白かった・・・!アンナのタチアナのものすっごく強いキャラクターが現代的でとてもいい。途中で多少迷いは出るものの、こんなにはっきりオネーギンを拒否するタチアナ像は、クランコ版でもノイマイヤー版でも観たことなくて、変な言い方ですけど爽快でした。とはいえ、最後は母のような優しさでオネーギンに別れのキスをするのですけどね。
タチアナはエレーヌが初演キャスト(DVDにもなっている)。私はエレーヌと、そしてハンブルクに客演したヴィシニョーワで全幕を観ています。エレーヌのタチアナは優しすぎて、オネーギンに翻弄される感が強く、あまり好きじゃない。ヴィシニョーワは流石で、前半は翻弄される少女でしたが、後半はすっかり誇り高い貴婦人になり、アンナほどではないですがオネーギンに毅然とした態度をとっていて、とてもよかった。アンナはさらに強い感じなので、彼女で全幕を観てみたいなあ。
■「モノ・リサ」
振付:イツィク・ガリリ
音楽コンセプト・作曲:トーマス・ヘフス、イツィク・ガリリ
アリシア・アマトリアン
フリーデマン・フォーゲル
フォーサイス風の作品、二人のめちゃめちゃ高い身体能力が活きていて物凄く面白かった。アリシアが開脚したままフォーゲルにリフトされるシーン、あれ足は何度開いてるんでしょう^^; これをABのどちらかに入れてくれればよかったのにー。
以前ジェイソンで観たことあるな、と思っていたのですが確認したら2015年のシュツットガルトの来日公演のときのガラでした。そのときの相手役はヒョ・ジョン・カン。
■「ワールウィンド・パ・ド・ドゥ」 世界初演
振付:ティアゴ・ボァディン
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ
ドロテ・ジルベール
マチュー・ガニオ
元ハンブルクバレエのプリンシパル、ティアゴが二人に振付けるというので興味津々だったのですが、うーん、作品としては凡庸(残念ながらティアゴの作品はいいと思った試しがない・・・)。彼はハンブルク退団後、しばらくNDTにいたのですが、あまりそれは感じられず舞踊言語は完全にノイマイヤーでオリジナリティがない。構成もさして印象的でも新しくもないし。
ただ、そういう作品でも、力のあるこの二人が踊ると詩的に美しく見える。特にマチューの動きの美しさが印象的でした。上半身の柔らかい使い方、ルグリ様にそっくりになってきたではないですかー♥彼はぐいぐい大人のダンサーに脱皮中ですね。この作品は、あまりドロテに目がいかなかった。
■「ローレンシア」
振付:ワフタング・チャブキアーニ
音楽:アレクサンドル・クレイン
マリーヤ・アレクサンドロワ
ウラディスラフ・ラントラートフ
ローレンシア、全幕は2016年のミハイロフスキーバレエ来日公演で観ておりますが、かなり社会主義プロパガンダの色濃い作品です。そのときの感想はこちら→ http://kikoworld.blog.fc2.com/blog-entry-124.html
とはいえ、今回上演されたこの部分はそういうのは関係なく祭りにぴったりのパドドゥ。マーシャめっちゃ楽しそうだし、引退したのにも関わらずテクニック的にも絶好調だな!という印象でした。
このペアとタマラ&イサックのペアは、何を踊っても女性上位な感じが凄い。ウラドもいいダンサーだと思うけどマーシャのオーラにかき消される感じ・・・。
― 第3部 佐々木忠次へのオマージュ ―
第3部は佐々木さん追悼パート。冒頭でフェリによる佐々木さんを偲ぶスピーチがあり、その後彼の功績を讃える動画があり、それが終わってHAIKUが始まるという構成。
佐々木さんの功績は凄いと思うし感謝するべきなんだろうと思うのですが、彼を「神格化」しようとも見えることにちょっと居心地の悪さも感じてしまいました。過去の功績を強調することもあっていいけど、もちろん別の場所で構わないので、「佐々木さん後」の方針、彼が活躍していた時代とは違う環境でのヴィジョンをもう少し見せてもらいたいなとも。
■「月に寄せる七つの俳句」より パ・ド・トロワ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ
シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ
エドウィン・レヴァツォフ
七つの俳句からのインスピレーションからなる本編から、最後の2つを抜粋して上演。私、抜粋さえ生で観たことなかったので物凄く楽しみにしていました。
「小言いふ 相手もあらば 今日の月」(一茶)
「我をつれて 我影かへる 月見かな」(素堂)
この2つの月にちなんだ俳句をベースにした部分。シルヴィアとエドウィンが白い衣装で、彼らは月の光の精みたいなものなのか。サーシャはきっとそれを感じている人間の役。着物のような白い衣装をまとったシルヴィアが神々しいくらい美しかった。作品自体もとても美しいけど、一茶や素堂の句にあるような、日常の生活の中にある静かで美しい瞬間を表現しているように感じました。大好きなサーシャの柔らかい動き、これでしばらく見納めだと思って脳裏に焼き付けた。
■「リーフ(葉)」 世界初演
振付:大石裕香
音楽:アルヴォ・ペルト
ジル・ロマン
うーん、ジルが来るのかあ、ジュリアンをよこしてほしいのにー・・・と思っていたのですが、この作品は素晴らしく、さすがジルはそこにいるだけで語るものがあるなぁと。と同時に、元ハンブルクバレエのソリストで今は振付家として活躍中の大石さんの才能に感嘆。「リーフ」というタイトルで、時にひらひらと舞う木の葉が見えるような振付。世の中に置いていかれた人のような哀愁漂うジルの佇まい、今の彼にぴったり。ベジャールがまだ存命であれば彼にこういう作品を創ったのではないか、とまで思いました。大石さんは、自分のバックグラウンドとは全く違うそれを持つジルを理解し尽して彼のためにこの作品を創ったのだなと。
6月にベジャールバレエにKu(空)という作品を振付けていますが、そこでの経験がこの作品にも活きているのかもしれません。Kuの創作コンセプトを語る大石さん動画つきインタビューは、こちらをクリック
彼女、実は当日会場にいらっしゃいました。楽屋口で声をかけることができてうれしかった!2018年9月にサドラーズで上演されるオシポワの公演にも振付家として参加されるなど、その活躍の幅は留まるところを知りません(個人的に、オシポワと大石さんってテイストがとても合うような気がする)。とてつもない才能を持つ振付家だと思います。日本のバレエ団も、大石さんの作品、上演しませんかー・・・?
■「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:モーリス・ラヴェル
上野水香
東京バレエ団
佐々木さんが創設した東京バレエ団によるボレロ。生演奏でボレロを観られるのは嬉しい!オケも、ちょっと怪しいところもあったけど、頑張ってましたし!
上野さんのボレロを観るのは2回目。随分踊り込んだのでしょう、以前と比べると一つ一つのポーズがきれいになっているなというのが印象的でした。どなたかがネットでつぶやいているのを目にしたことがあるのですが、ボレロというのは本当に、踊る人の本性が出てしまう恐い作品だなとしみじみ。私がこの演技から感じ取った上野さんは、とても真面目で、そして永遠の少女。かつ、今もしかしたら、自分のアイデンティティというか、踊りで何を表現していくか、ということには迷いがあるのかな、ということ。
メロディとリズムの力関係でいくと、リズムが出てくるとややメロディの印象が弱まる感じもありました。そういうのが狙いならそれはそれでアリだと思うので、その方向で今後も表現を突き詰めて頂ければよいのではと(偉そうですみませんすみません)。
― 第4部 ―
■「ウルフ・ワークス」
振付:ウェイン・マクレガー
音楽:マックス・リヒター
アレッサンドラ・フェリ
フェデリコ・ボネッリ
あのウルフ・ワークスをついに生で観られる!と期待していた演目。ヴァージニア・ウルフのあの有名な遺書の朗読から始まるシーンでした。リヒターの音楽に重なる寄せては返す波の音、それに呼応するミニマルミュージックのようなパドドゥ。遺書の内容を思い起こしながら、これはウルフと彼女のパートナーの日常を表していたのかな、と思うなど。とっても地味なシーンなので、全幕をご存知ない方には、なんのこっちゃ、という感じだったかも。でもあの作品に感銘を受けたものとしてはなかなかの感激でした。
しかーし、復帰後のフェリには、ノイマイヤーもDUSEという作品を振付けているんですよ。いい出来だったら、バレエフェスで上演されたかもしれないのに・・・(ウルフ・ワークスの方が作品としてはるかに上を行ってます)。何となく、ノイマイヤーのDUSEはフェリのこれまでの功績にこだわり過ぎた感があるな、とこれを観ながら考えておりました。
■「マルグリットとアルマン」より
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:フランツ・リスト
アリーナ・コジョカル
ヨハン・コボー
デヴィッド・ホールバーグ
生音に乗せて上演されたこの作品、なかなかよかったです。ホールバーグが超素敵だった!!個人的に、彼のABプロは今一つしっくりこなくてまだ完全復帰じゃないんだな、と残念に思っていたのですが、これには全然そういう感じがしなかった。出てきた瞬間、うおおおお美しい―✨と驚嘆。マルグリットを想う心情にも溢れていて、初役(と噂で聞いたのですが)とは思えぬ完成度でした。出演時間は短いけどね。コジョカルが相手なので、このアルマンは彼女の少女性に惹かれたのだろうなと考えて観てました。
それにしても、アシュトンのこの振付を観るにつけ、ノイマイヤーの椿姫はアシュトンへのリスペクトとしてその中からいろいろな振付を借りているなぁと思います。アシュトンのこの作品なくしてノイマイヤーの椿姫もなかったのでは。
■「プルースト―失われた時を求めて」より"モレルとサン・ルー"
振付:ローラン・プティ
音楽:ガブリエル・フォーレ
ロベルト・ボッレ
マチュー・ガニオ
ガラの白眉はこれでしょう。世界でもっとも美しいモレルとサンルー。始まった瞬間の会場の集中度の高まりが半端なくて、そうみんなこれを待ってたんだよね!と一体感で嬉しくなった。
二人とももう美しいしか言いようがないんですが、ボッレってこういう作品を踊っていてもとても清潔感があるんだな。マチューの方が怪しい色気がある気がした。いやこれを拝めてよかったです。ありがたや。
■「アー・ユー・アズ・ビッグ・アズ・ミー?」
振付:ロマン・ノヴィツキー
音楽:ハズマット・モディーン
レオニード・サラファーノフ
ダニール・シムキン
ダニエル・カマルゴ
2015年のシュツットガルトバレエ来日公演のガラで観たときも楽しいと思った作品を、この豪華メンバーで!誰が提案したんでしょう、でもいつもと違う彼らの顔が出て凄くよかったと思います。(「バレエの王子様」でこの3人で上演したことを教えていただきました。私、ハンブルク遠征してて行かれず、存じ上げず失礼。)こういうお茶目なコンテを踊らせたらシムキンの右に出る人はいないな、と思っちゃった。抜群のリズム感とサービス精神たっぷりの演技。カマルゴもサラファーノフも頑張ったけどね!サラファーノフはコンテのくねくねした動きはあまり得意じゃないんだなと思った。けど、全力でやってくれてる姿が微笑ましくて、それはそれで○。3人の身体能力を活かした振付も随所に盛り込んでありお祭り気分を盛り上げてくれました。
■「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス
タマラ・ロホ
イサック・エルナンデス
タマラ、絶好調でした!彼女の代名詞であるバランスと回転をたっぷり見せてくれた演目。バレエとしての美しさはどうなのかってのはあるけど、でももう祭りの最後だからドンキは盛り上がればいいやって気分に。連続フェッテは、1-1-3、1-1-2、の繰り返しでしたよ。イサック、タマラと一緒にこういう古典を踊ると、線が細いんだなぁと思います。彼も素晴らしいワザを見せてくれました。
ファニーガラの感想に続く。
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