松竹座小

七月大歌舞伎 夜の部 @松竹座

2017/7/14土 16:15- 松竹座

真山青果 作
真山美保 演出
元禄忠臣蔵
一、御浜御殿綱豊卿(おはまごてんつなとよきょう)
徳川綱豊卿 片岡 仁左衛門
富森助右衛門 市川 中車
中臈お喜世 中村 壱太郎
小谷甚内       片岡 松之助
上臈浦尾       上村 吉弥
御祐筆江島 中村 扇雀
新井勘解由 中村 歌六

二、   二代目松本白 鸚
十代目松本幸四郎 襲名披露
口上(こうじょう)
幸四郎改め松本 白鸚
染五郎改め松本 幸四郎
     坂田 藤十郎
     幹部俳優出演

近松門左衛門 作
片岡仁左衛門 監修
三、女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)
河内屋与兵衛 染五郎改め松本 幸四郎
七左衛門女房お吉 市川 猿之助
山本森右衛門    市川 中車
芸者小菊     市川 高麗蔵
小栗八弥       中村 歌昇
妹おかち       中村 壱太郎
刷毛の弥五郎 大谷 廣太郎
口入小兵衛 片岡 松之助
白稲荷法印 嵐 橘三郎
皆朱の善兵衛 澤村 宗之助
母おさわ       坂東 竹三郎
豊嶋屋七左衛門 中村 鴈治郎
兄太兵衛       中村 又五郎
河内屋徳兵衛 中村 歌六

夜の部はかなり見応えがありました。

御浜御殿綱豊卿。動きが少なくセリフで見せる作品なのに、全く眠くもならず世界に引き込まれました。さすが仁左様・・・!

仁左様の演技は本当に緻密、かつ、こういうお役でも、舞台の上にいるのは片岡仁左衛門ではなく綱豊卿なのだと思わせてくれるリアルさがあるのが好き。綱豊卿は単に慈悲の人ではなく、武士道への強い想いを持つ人物として、時に厳しくはあれど、基本的には器の大きな温かい人物に見えました。

その仁左様と森右衛門演じる中車さんとの緊張感ある掛け合いが実に素晴らしかった。中車さんの演技にも赤穂浪士の魂があって、その熱い魂を仁左様が受け止めながら高みへリードしている感じでした。昼の部の富樫のときも幸四郎さんの弁慶を受け止めつつサポートしているように見えた仁左様。歌舞伎界や後輩に対する想いが伝わってくるようで、その包容力に胸が熱くなる。

壱太郎さん、本当に可愛くて男性とは信じられない。演技もとても細やかで艶っぽくて好きだなあ。

口上を挟んで、女殺油地獄。これ、生で観るのは初めてでしたが、よくできた芝居ですね。ひどい話なのですが、面白い!

幸四郎さん、与兵衛はとても合っているお役だなぁと思いました。本当は悪人じゃないけど甘ったれで気の弱いボンボン。物凄く真剣に仁左様に教わったのだろうなぁ。与兵衛がそこにいる、というところまではいかなかったけど、与兵衛の弱さ・可愛さ・狂気など、とてもうまく演じていらしたなぁと。

・・・でも仁左様の与兵衛、生で観たかったなぁとつくづく思ってしまった(泣)

そして、猿之助さんのお吉が素晴らしかったー。与兵衛ほどエキセントリックな役ではないのだけど、まさにそこにいるのはお吉だなぁという役作り。結婚して子供がいて、美人だけど所帯じみていて、与兵衛には兄弟のような感覚と、でも実はちょっとだけ男性として惹かれている部分もある。大仰なことはしないのに、そういうのがすっと心に伝わってくる。猿之助さんのファンがこういう地味な役をお好きかどうかは分からないのですが、私はとっても感銘を受けました。

ところで殺しのシーンの油は、何を使ってるんでしょう。滑っているシーンを見てて、ただの水ではなくちょっと何か滑るものを入れているように思ったのですが。あれを毎日やるって大変だなあ・・・。幸四郎さんも猿之助さんも、千穐楽までお怪我ありませんように!

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