たっこちゃん、齢ほぼ80歳 #7 たっこちゃんが転んだ
コロナ前のはなし。
人口関節置換術後、それまで無理だった距離を歩けるようになったたっこちゃんは、嬉しくてしょっちゅうひとりで歩いていた。
そんなある日、たっこちゃんはこけてしまった。
こけるって伝わるかしらん。転ぶこと。
コンビニの入り口に向かっていたら、駐車場の車止めにけつまずいて、勢いよく、ダイブしてこけてしまったのだ。
イタタタタッ。
たっこちゃんは腕にも脚にも腹にもまったく筋力がなく、重い体重のせいで、自力で起き上がることは難しい。
目の前はコンビニで、ガラスの向こうのレジカウンターにはスタッフがいるというのに、まったく気づいてもらえない。
気づいていたけど、変な人だと知らんぷりされたかもしれない(本人談)。
平日昼間のせいか、お客がこないどころか誰も歩いていない。
余談だけど、そんなだからか閉店しちゃって今はない。
自動車は走っているけど、とまらない。道路を挟んだコンビニの向かい側には消防署があり、こちら向きの受付に消防士が座っているのに、たっこちゃんの姿に気づかない。
大ピンチのたっこちゃんに救世主が現れます。「大丈夫ですか?」
若いお兄ちゃんが声をかけてくれたそう。
「起こしましょうか」
そう言ってくれる親切な若いお兄ちゃんの体型を見て、彼には無理だと瞬時に判断たっこちゃん。
「申し訳ないけど、掴まらせて貰えたら自分で起きますから、そのまま立っていて下さい。」
そうお願いして、親切なお兄ちゃんの脚に掴まって、支えとしてなんとか立ち上がったらしい。
後日、怪我はないものの、何日も酷い筋肉痛に悩まされたのは言うまでもない。
いま思ったんだけど、困った時に「手を貸してください」って伝えられるカードがあったらいいかも。
消防士やコンビニスタッフにも気づいてもらえたかも。
人工関節が入っているから「ヘルブマーク」は交付してもらえるけど、まだまだ認知されていない。
もらえない高齢者も手に入れられる“助けが必要です”って伝えられるなにかがあって、普及すればいいなあって。