たっこちゃん、齢ほぼ80歳 #30 原付バイクを廃車した
たっこちゃんの原付50ccバイクを廃車した。
これまで4台の原付を乗り継いできた。最後の相棒となったジョグと2ショット写真を撮って、馴染みのバイク屋さんに引き取りに来てもらった。
たっこちゃんは免許をとってから、行けるところなら遠くても雨でもどこでも原付バイクを走らせた。通勤も買い物も。父が入院していた大学病院までも。
菜の花が綺麗だと聞けば河川敷の畑まで、桜が咲いた、薔薇が咲いた、ダリアが綺麗だ、そう聞くたびに、コンビニでおにぎりとお菓子を買って友人たちと原付バイクを走らせた。
踏切不停止で取り締まられたこともある。
「おくさん、またですか!」
「去年もですよ!?」
同じ踏み切りで、同じお巡りさんに2回もつかまった。
「お兄ちゃん、許してつかぁーさい」
岡山弁で言ってもお巡りさんが許すわけがない。
混雑を避けてお盆の早朝に山の上の墓地に向かう途中では、幽霊らしきおばあさんに遭遇し、それからはひとりでお墓には行けなくなった。
原付バイクには思い出がいっぱい。
原付に乗らなくなった今はバスや電車をつかっている。
駅までのバスは平日のみでバス停も近いとはいえず、しかも1時間に1本しかなく行動範囲が狭まってしまった。
地域に土日祝日関係なく、本数多く、コミュニティバスが走っていたら便利なのに、そんなのはない。
あまりに不便で「あと2~3年乗ればよかったわ」と言ってる。
私にしたらここ数年原付に乗るたっこちゃんがいつも心配だった。転倒しても重い原付バイクを起こす力はない。目も悪くなっている。若いつもりでも反応は鈍い。
廃車してやれやれなのだ。
3輪の電動自転車なら安心なんだけど、本人いわく
「あんた知らんやろ」
「カーブが難しいねんで」
試乗したことがあるらしい。
「お猿みたいやん」
ああ、そこか。
それが一番の理由か。お猿さんが三輪車に乗っている絵面が思い浮かぶようだ。
町中に電動三輪自転車に乗った高齢者が溢れても、たっこちゃんは絶対に嫌らしい。