たっこちゃん、齢ほぼ80歳 #25 心斎橋をゴム長靴で闊歩
今日の話はたっこちゃんの若い頃のほろ苦い思い出ばなし。
たっこちゃんは高校を卒業後、田舎から大阪に出てきた。
半年ほど経った頃、同じように大阪に出てきた者たちで集まろうってことになったらしい。
その日はあいにくの雨だったけど、久しぶりに同郷の友に会え、土地の言葉でおしゃべりするのがめちゃくちゃ楽しくて、男女数名ワイワイしながら心斎橋を歩いていたらしい。
そして一行は洒落た喫茶店に入ったそうだ。
そこは洒落た店内に大きな鏡がたくさんはってある喫茶店だったそうだ。
たっこちゃんはそこに映った自分の姿を見て愕然としたらしい。
黒いゴムの雨靴(!!)をはいた自分の姿があまりにもカッコ悪かったそうだ。
「なんで雨靴はいてったん?」
「だって雨が降ってたもん」
「田舎では雨が降ったら雨靴ははくもんや」
「今みたいな長靴ちゃうで、漁師さんがはくようなダブダブのやつやで」
「それ見た瞬間から恥ずかしくてはずかしくて、帰りたかったわ」
「同級生も一緒に歩くの恥ずかし買ったと思うわ」
この話はたびたび聞かされているんだが、毎回そのシーンを想像するとおかしくてたまらない。
背の低いたっこちゃんがはいた長靴は膝まで届きマジンガーZみたいだったろう。
「でもな、それから一年くらいしたら私もあか抜けてん」
いやいや自分で言われてもなあ。
でもまあ、負けず嫌いなたっこちゃんのことだから、あか抜けた大阪の女になるために、出来る限りの努力はしたんだと思う。