ネタバレいっぱい海神再読第二十四回 五章4. 小松尚隆は何故腹を括ってしまったのか
あらすじ:二十年前小松で迫りくる戦いの気配を感じる六太。尚隆の予測通り小松は破滅の危機に立たされる。
●国を望むということは
現在、元州城。斡由の言に動揺した六太。
六太)尚隆は国が欲しいと言ったんだ。王になりたいとも、位を極めたいとも言わなかった。
…それが単に王になりたいとか偉くなりたいとか、そういうこととは違うように感じた。だから尚隆に玉座をくれてやったんた。
尚隆は確かに正しい意味で民のための王になりたかったんだろうと思う。六太の判断は正しかった。
ただ…尚隆の事情を考えると、もらっても直ぐ受け入れられなかったんではとも思う(また説明していきます)。尚隆の事情とは小松尚隆の物語のこと。
で、二十年前の小松の回想が始まる。
●小松尚隆の現状認識
・村上氏に狙われてて勝ち目は無い。
・村上の傘下に入れと父に勧めてるが、多分聞き入れられない。
・頼りの同盟国大内氏は後退してて、他にあてはない。
・肚は括った(=勝ち目のない戦いで死ぬ覚悟をしてる)。
なんと、尚隆の小松氏も同盟者である大内氏に見捨てられてたんた。つまり、かつて同盟者に見捨てられた尚隆が、やり直しとして敵である斡由が同盟者である光州に見捨てられるよう仕組んだって事?うわー。
●小松尚隆の対策
さて尚隆が当時やった事。
・父に村上の傘下に入れとか後背に気をつけろとか忠告する(が聞き入れられない)。
・戦が近いと噂を流し流民が出ていくよう仕向ける。
・流民に他所へ行く路銀をやる。つまり許される範囲で出来る事をした。流民は小松の民じゃないのに、助けようとする尚隆は優しい。
…小松の民は父の民で自分は手出し出来ないから、せめて流民を助けたのか?いやでも、優しさにはかわりない。
流民としてその優しさに触れた六太が尚隆を王に出来ないのは、余程権力者への不信が強い?天意への反発?尚隆が受け入れないから? それでも使令に尚隆の守護を命じたのは天意?己の意志?
●小松尚隆は何故腹を括ってしまったのか
戦が始まり、父と妻子が死んで尚隆は国を継ぐけれど、戦の前の時期に肚を括ってしまった事を尚隆は後々悔やんだのではないかな。勝ち目のない戦を回避できる最後のチャンスを活かせなかった(上手くいくかどうかは兎も角、試みさえもしなかった)わけだから。
勿論、回避するには父を退けなければならないけど…尚隆は父の事を好いていたかどうか。 戦に疎く、矜持だけは高く、倅の忠告は聞き入れず、なのに前線で戦わせておいて連歌の会までに戻れなんて言う。息子の妻に子を産ませるって崇徳院の様に内乱の火種にもなる所業だ。尚隆はなぜそんな父の命令に従順だったのか?
ひょっとして、父の命令に従った尚隆が先に死んで、その後の破滅に晒された父が尚隆の言う通りだったと後悔するのを期待してたとか? だって小松が滅びるって事は尚隆も民も家臣も妻子も、父だって滅びるんだよ。父が好きで生き延びて欲しかったら、むしろ実権を奪うんじゃないか?
実際は父が尚隆より先に逝き、尚隆が国を継いで、父が晒されるはずだった国と家臣と民と自身の破滅に直面する事になった。尚隆は絶対後悔したと思う。
(余談だけど、主のまちがってるとわかってる命令に従って先に犠牲として死ぬ事を納得してるって、まるで更夜だよ…どんだけ補助線引いてるの…)