ネタバレいっぱい海神再読第二十二回 五章2.尚隆は何故、宣戦布告に来た白沢を引き止めて時間を稼ごうとしなかったのか。
あらすじ:尚隆は三官吏に自分の策を説明する。
●尚隆は何故、漉水の治水の裁可を下さなかったのか。
王宮。白沢を返した後、三官吏に怒鳴られる尚隆。
帷湍の策はこう。
①使者をできるだけ引き留めて時間を稼ぐ。
②その間に軍の準備をする。頑朴城を攻めるには元州師の二倍から三倍の兵力が必要だから、兵をそれだけ掻き集めてちゃんと戦えるよう訓練するにはかなり時間がかかるから使者を引き留めとけばよかったのにー!
③用意ができたら全軍で元州へ進撃だ!出発から到着まで一ヶ月!
…他の二人の反応も見るに常識的な策なんだろうね。
斡由もおそらくこう来ると思ってたから、こうしてたら負けただろう。
対して尚隆の策はこう。
①使者はすぐ帰す。
②イメージ戦略で大量の民を志願兵として集める。訓練は不要。
③靖州師は首都防衛に残し、元州攻略は王師だけで行う。民を集めつつ即出発だ! 出発から到着まで一ヶ月は変わらないけど訓練とかしないから準備期間はできるだけ節約して急げ!
④同時に、国府での地位を餌に光州上層部を王側に引き込む。
①③は開戦時期を雨季の初めにあわせる為だし、
②は堤を頑朴城を水攻めできる場所に造らせる為だし(だから戦闘訓練はいらない)、
④は光州対策、その為に前章で六官三公を首にしておいた。冢宰も遂に首にして
…っと、段取りのいいとこからして計画通りだったんだなと思う。
この策の為には国府の高官がいてはいけないし(クビにする時間がもったいない)、堤もあってはならない、て事からして、治水妨害もこの為だね。
そして②のイメージ戦略の為に、民の求めるベタな名君のイメージをばら撒く。ここ、痛快かもしれんけどヒヤッともする。尚隆は良い事も沢山やってる。王宮の飾りを売払ったり下界に降りて自分の眼で民を確かめたり。でも民を動かすのは「王」のイメージで自分のやった事じゃないと思ってる。三官吏でさえ求めてるのは天意という道理だろう、と。自信のなさ、というか、真の自分を認めてはくれないだろうという暗い確信にヒヤッとするんだ。
●麒麟誘拐事件
さて、元州の真の兵力も探り済の尚隆が(「一万がやっとだ」実は一万一千だったけどもね)、唯一想定外なのは六太。
『斡由が六太を殺せば、目の前の王も死ぬ』
『戦いが王に有利に進めば、焦った斡由は麒麟を殺しかねない』
…人質だもんね。尚隆は苦笑する、俺に運があれば切り抜けられるだろう、と。尚隆にとってはこの乱も(治水の事も)運試し、天意試しってこと?