ネタバレいっぱい海神再読第十一回 二章5.亦信は何故犠牲となったか?
あらすじ:妖魔の大きいのに会うため郊外に誘い出された六太。だが随身の亦信は妖魔に殺され、更夜は拐ってきた赤子を人質に取る。更夜は斡由に遣わされた誘拐犯だったのだ。
●亦信
六太の護衛官で、もともと成笙の麾下。成笙が投獄されると麾下の多くが辞職を願い、自宅に謹慎して成笙が牢を出るまで一歩も外に出なかった。その何割かは惨殺されたが、生き残った者もかなり居て、亦信もその一人。
…つまり梟王末期から尚隆が王になるまで五十年近く、大勢の優れた仙が妖魔も倒さず災害とも戦わず閉じこもってたということで。
この世界ではそれは正しいことで、普通なら次の王が決まるのはもっと早いから、実害だってそんなになかったかもしれないんだけど、五十年近く外の世界で自分たちよりずっと弱い民が妖魔に喰われたり、飢え死にしないために子供を捨てたりしてたことを思うと…この人たちも民の命より自分が正しくあることを選んだ、ということではないか。
作中にはこの人たちを非難する表現は一切ない。でも、やったことと状況を単純に並べるとそう思っちゃうんだな。
ところで梟王は抗議の辞職をしようとした成笙麾下を全員は殺さなかったんだね。民は不満を口にしただけで一族皆殺しにしたのに…梟王は元々軍人とかで、軍には成笙以外にも結びつきが強すぎて命令に従わなくても殺せなかった者がいた、ということだろうか。
●更夜
ここでの更夜はとてもクールにヒール。
ずっと笑ってるんだから。
亦信にも抵抗しないよう言ったけど、別の妖魔を呼ばせていたってことは亦信が従わないって予測済だったってことだね。
亦信にとって、麒麟は絶対に守らなくてはならないもの、王の命そのものだから。王を待ち続けた者がそうするのは当然のことで、更夜にもそれは判ってたんだろうね。
天意に従う者、王の臣・王の民としての亦信は、更夜・斡由たち元州と対立する者として、この物語内の最初の犠牲者となった。
●麒麟と血の穢れ
麒麟は慈悲の生き物だから、血の臭いに耐えられず病んでしまうくらい、と更夜は言い、使令は迷わず亦信の血糊から六太を庇う。六太は亦信の血には物理的には触れていない。でも影響がないわけではないのは次章で明らかになる通り。
●斡由またまた名前だけ登場!
そしてまたしてもラストに名前だけ出てくる斡由! ゴジラか!