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あ〜ずるい〜

まぁちゃんが10歳、あっちゃんが8歳のときに、のんちゃんときこちゃんは結婚したんです。

 結婚したら結婚指輪をつけるっていう儀式があって、普通それは結婚式でやるんだけど、のんちゃんもきこちゃんも結婚式はしてないの。

 そこで渋谷に出かけて小さいお店で指輪を買って、近くの喫茶店の中で指輪をお互いに付け合ったの。指輪の箱代の方が絶対に高そうなほど安い指輪だったんだ。お店の人が、丁寧に包装してくれようとしたのに「すぐ使うからいいです」って、今考えると穴があったら入りたくなるようなことを言って。きっと店員さんにあきれられたかもしれないんだけれど、のんちゃんは経験がないからわからなかったんだね。

 家に帰ってから、まぁちゃんとあっちゃんに見せびらかすようにお互いの指輪を見せたの。

 そうしたら。

         あ~ずる~い

 って。

 のんちゃんもきこちゃんも、まさかそんなことを言われると思っていなくって、どうしたらよいかわからなかったんだ。まぁちゃんやあっちゃんにも指輪を買ってつけるわけにはいかないもの。

 そこでのんちゃんは考えた。

 どうしてずるいのか、何がそう言わせたのか。

 きっとまぁちゃんもあっちゃんも、のんちゃんがきこちゃんを取ってしまうんじゃないかって、自分達が邪魔者じゃないかって心配だったんだと思った。

そしてそれには、4人がみんな家族である証(あかし)が必要なんではないかって。

 のんちゃんは、さらに考えた。

 そうだ、あの手がある。(ポンッ)

 のんちゃんはみんなの誕生月を調べ始めたんだ。

  2月:アメジスト 石言葉は「誠実・心の平和・高貴」

  5月:ひすい  「清麗・夫婦愛・幸福・永遠」

  8月:ペリドット 「幸福・平和・夫婦の愛」

 11月:トパーズ 「友愛・潔白・希望」


  4月生まれがいなかったのは幸いでした。

 そして4人で原宿に出かけて、直径が5mm足らずの石の玉を4個ずつと皮の小さい袋を4個買ったの。

 もちろん、4つの袋にみんなの誕生石を1つずつ入れたよ。

 まるで八犬伝でしょ? 八犬士がそれぞれ持っている、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌のような文字は刻まれてはいないけど、この石の玉が入った皮の袋を持っていることが家族の証なんだ、ということ。

 まぁちゃんも、あっちゃんも納得してくれたよ。

 今でもみんながちゃんと持っているかどうかはわからないけど、のんちゃんは自分の財布に入っている布の袋を見て、時々触って、みんなの幸せを祈っているんだって。


* 2013年6月15日 記載