140字小説(秋)
星々という140字小説コンテストに投稿しているけど、10月と11月はメンタルが終わっており書かなかった。9月の分だけ記録しておく。9月のお題は「実」だった。メンタルが終わっているときの「実」、健全な連想ができないな〜という発見があった。いや逆に健全な連想をしてるからそれと比して我が身を振り返り終わるのか……。「人の不幸を祈るようにだけはなりたくないと願ってきたが」ですね。
https://note.com/hoshi_boshi/n/nee278aa6ef6e
父の誕生日は秋で、毎年祝いの席には秋のご馳走がならぶ。茸、栗、鮭。実りの秋とはよく言ったものだ。対面で機嫌よく杯を傾ける父。冷酒のラベルには十四代とある。父の十数年は結実しただろうかと考えながら銀杏を箸で摘まもうとして、つるつる滑らせる。この年になっても箸を正しく持てもしない種。
花が咲いたのは今朝が初めてだった。もう30年と何年か蕾だったのに、突然に先端が綻んだと思ったら、みるみるうちに満開になったのだ。1日頬杖ついて眺めていたが、夜にはまたくるくると閉じてしまった。また30年と少し眠るだろう。枯れることもないし実をつけることもない。色も名前もない。花らしい。
姉は最期に、小さな果実を飲み込んだ。「復讐の種」と呟いて。火葬の後、白い骨になった姉の、骨盤の上あたりに小さなそれが燃え残っている。ひそかに拾い、骨壺に放り込んだ。やがて埋葬された姉の墓の下から、白くて光る巨大な生物が這い出て、墓を破壊し、空を覆った。雷鳴。やってしまえ、と呟く。
私たちには実体がない。地球が滅びてしまうって時に、一部のお金持ち以外は全員、脳を機械に移してしまったから。元の体は酸の海に溶けちゃってる。庶民用の安い機械は少しずつバグってきて、最後に友達とふざけてしたキスの感触と、ひるがえる二人のスカートの残像だけが、何度もリピート再生される。
サービス終了のお知らせ。膨大な時間をかけてスマホをタップするとアイドルのカードがもらえるという、努力が実るのか実らないのか判然としないゲームだったのだけど、心に穴が開いたようだ。開いた穴に花を生けてみたら蕾から小さなお姫様が生まれた。おきれいですね。これ私の名刺です。アイドルにご興味は?