アルトラ(VIVE Ultimate Tracker)って実際どうなの?
こんにちは。きくじんです。
VRChatなどで使用できる高精度のモーショントラッカーといえば、VIVEトラッカー3.0などのLighthouse方式が定番ですが、新しい選択肢として、VIVE Ultimate Trackerというものもあります。なによりベースステーション不要!という点が特徴的です。
この記事ではそんなVIVE Ultimate Tracker(アルトラ)をレビューしていきます。
(最終更新:2025.01.19
PCVR Betaも終了ししばらく経ったので、全体的に修正しました)
VIVE Ultimate Trackerってなに?
VIVE Ultimate Tracker(長いので、この記事では通称としてアルトラとよびます。)とは、HTCから2023年11月29日に発売された、新型のモーショントラッカーです。
特徴はなんといっても、内蔵したカメラでトラッキングする、いわゆるインサイドアウト方式を採用していることです。つまり、Meta QuestやPicoのようなHMD本体と同じ方式を小型のトラッカーで実現しています。
これにより、ベースステーション無しで高精度のトラッキングが期待されます。
お値段はトラッカー3つ+ドングル1つのセットで91,900円です。
単品の場合は1つ31,000円、ドングル単品は6,100円です。
(↓公式リンク)
発売からしばらくはHTC製ヘッドセット専用(実質、VIVE XR Elite専用)でしたが、2024年2月1日にPCVR対応のOpen Betaが開始され、2024年9月30日に正式にPCVR 利用に対応しました。
Beta開始直後はトラブルも色々あったようですが、現在はほぼ普通に使えるようになっています。基本的に Steam VR対応のヘッドセットならなんでも使えます。
私の自己紹介
まず、レビューの前提として、私のフルトラ歴について説明しておきます。
使ったことある機材:
HaritoraX 1.0
VIVEトラッカー 3.0
Tundraトラッカー
(ベースステーション1.0 ×2)
検証環境:
HMD:Meta Quest 3
接続方法:Virtual Desktop
IMU(加速度センサ)方式もアウトサイドインのLighthouseもどちらも使用経験があります。
今回購入した理由としては、Lighthouseからの乗り換え候補です。
なぜか私の自宅環境では、電波のせいか赤外線反射のせいなのか分かりませんが、Lighthouse が安定しませんでした。腰飛びがよく起こり、解決できませんでした。
使っているベースステーションも1.0なので、増設するならベースステーション2.0を3台も買わないといけません。
そこで、アルトラなら理論上腰が飛びづらくなり、さらにシステムもシンプルになって良いんじゃないか、ということに期待して買いました。2024年3月に購入し、それからずっと使っています。
なお、VIVEトラッカーというとイマイチどっちのことを指してるのかよくわからないので、以降では既存のVIVEトラッカーはLighthouseやLighthouse式VIVEトラッカーなどと呼ぶことにします。ハリトラやユニモーションなどはIMU式と呼びます。
で、実際どうなん?
Lighthouse代替として、悪くないです。若干安定性など課題はありますが、少なくとも動きはとても良いです。
いまだにトラッカーのオフセットなどの問題が発生することはありますが、おおむね安定して使えるようになっています。
追従性
素晴らしいです。Lighthouseと比べても、遜色ないです。IMU式は明らかに精度が劣り、追従も遅いので没入感にかなり差がありますが、アルトラは Lighthouseと同等です。文句ないです。素晴らしい。もちろん、IMU式につきもののドリフトも皆無です。長時間使っても勝手にズレたりしません。
安定性(トラッキングロストのしにくさ)
トラッキングの安定性については、Lighthouseよりは劣ります。
それぞれ得意とするシチュエーションが異なるので平等な比較が難しいですが、例を挙げると、壁の近くや、明るさの足りない環境は苦手です。Lighthouseでは飛んでいないだろう状況で飛ぶことがありますが、逆にLighthouseより飛びづらい時もあります。
一長一短というところもありますが、やはり比較するときちんとセットアップされたLighthouseには及ばないと思います。
トラッキング飛びに関してはBeta時よりはかなり良くなりました。それでも若干安定しない時もあるので、やはりもう一歩、という感じです。
私の環境ではLighthouseの腰が非常によく飛んでいた、というのはありますが、それにしても腰は本当に飛びづらく、この点は素晴らしいです。
初期セットアップについて
初期セットアップは、やや面倒くさいです。
手順としてはそこまで難しいことはないのですが、最初に部屋をスキャンする必要があります。1つのトラッカーで、部屋の4面を、それぞれ上下と左右にトラッカーを動かしながらスキャンしないといけません。しかも、このとき作成されるマップ情報がトラッキング精度にモロに影響してくるので、重要です。やることは単純ですが、結構時間がかかります。
しかし、Lighthouseでのドングル1つずつのペアリングや、ベースステーション設置の手間、そもそも非 Lighthouse HMD環境での公式セットアップ手順がない点などを考えると、詰まる箇所、罠がないという意味でLighthouseよりはマシだと感じました。
セットアップ手順はしっかりまとまっているので、基本的に公式の手順に従っていればOKです。
Beta時点では、丁寧にスキャンしてもマップのクオリティが低い、と表示されることが多く、このマップ作成で苦労した人も多かったようです。
2025年現在では、同じ部屋を同じ動かし方でスキャンしても、マップ品質が上がっています。さらに、スキャン完了時に特定の向きだけ品質が低い場合、その方向にトラッカーをしばらく向けておけば自動でマップを修正してくれるようになっています。
そのため、マップ作成で詰まることはゼロではないかもしれませんが、少なくともBeta時の印象とは状況がかなり変わっているので、古いレビューなどを見る際は注意して下さい。
日常のセットアップについて
だいぶ良くなりましたが、安定性と絡んでちょっと惜しいところがあります。
日常的に少ない手間で使えるか、というのは普段使いの上で非常に重要です。
この点で言うとLighthouseは最強で、トラッカー(とベースステーション)の電源を入れる以外何もする必要性がありません。Questなど非LighthouseのHMDではスペースキャリブレーションが必要となりますが、頭にトラッカーをつけることで自動化できます。
アルトラはどうかというと、
VIVE Hub(専用ソフト)を起動する必要がある
最初の部屋認識がすんなりいかない時がある
と言う点がマイナスです。
HMDがLighthouse対応でもスペースキャリブレーションが必須、という点もありますが、これはQuestなど非LighthouseのHMDを使っていれば同じことなので省きます。頭にトラッカーをつけて自動キャリブレーションが可能な点も同じです。
1つ目、外部ソフトが必要でSteamだけで完結しない、と言うのは少々めんどくさいです。もっとも、HaritoraXやUni-motionなど、Lighthouse以外全部と同じ条件ではあります。
2つ目が少々厄介で、Lighthouseのトラッカーでは電源さえ入れたら勝手に位置を認識してくれるのですが、アルトラは分かりやすく手に持って掲げたりして部屋をしっかり見せてあげないとトラッキング状態にならないことがあります。
これはマップの品質や、認識しやすい部屋かどうか、という環境要因で結構変わってくるようです。Beta時代からかなり改善はしてきていますが、人によって、全然問題ない、という人もいれば、いまだにうまくいかない時がある、という人もいます。このあたり、部屋の環境に影響されやすいのは注意が必要です。
なお、IMU式のトラッカーと比べると、トラッカーを最低5個身体につける必要があるところが、3つで済むのでその点は楽になります。膝トラッカーまでつけるなら一緒ですが。
いいところ
なんだかデメリットばかりたくさん挙げている気がしますが、いいところももちろんあります。
お腹につけても腰が飛ばない!!!!!
腰飛びにつよいのは明確にアルトラのメリットです。しかも背中ではなくお腹側につけても全然飛ばないので、椅子に座ったり寝転がったりも気にせずできます。
クイックリリース機構がある!
これ、アルトラのかなり気に入っているポイントなんですが、専用のクイックリリース機構があって、バンドから本体だけを簡単に取り外しできます。
Questなどと使う時、Space Calibratorを使用して8の字キャリブレーションを行う必要がありますが、このときトラッカーだけを一瞬で取り外せます。Lighthouseでは、バンドごと頑張って手に持たないといけないので、キャリブレーションが結構面倒ですが、アルトラなら簡単です。
バンドごと外す必要がないということは、VRChat側のキャリブレーションはやり直さなくても良いということなので、プレイ中に再キャリブレーションが必要になっても、やはり一手間少なくて済みます。
さらに、上の動画でもやっていますが、普段は足に直接バンドで固定して、ダンスするときは靴にトラッカーを付け替える、なんてこともアルトラなら簡単にできちゃいます。
なにか調子が悪い時に、足トラと腰トラを付け替えてみる、とかももちろんOKです。ここはかなりの推しポイントです。
システムとして超シンプル
Lighthouseではベースステーションを設置する必要がある、というハードルがあります。また、ドングルもトラッカー1個あたり1つなので、USBハブで分岐して大量のドングルを生やす必要がありました。バスパワーだと電力不足の可能性があるので、USBハブの電源も取る必要があります。勿論ベースステーションの電源も必要で、さらに設置のためのポールを立てたりカーテルレールに固定してみたり、設置だけで色々と工夫が必要な場合が多いです。
一方アルトラは、PCにドングルを一つ繋ぐだけです。USB一本で済みます。圧倒的にシンプルで簡単です。
私はケーブル嫌いなのでこれだけでもアルトラにしたくなります。
Lighthouse同等の高精度低遅延
これは特別他より優れている部分ではありませんが、現状トラッキング精度では Lighthouseがずば抜けていて、ハリトラなどIMU方式は大きく劣っていました。アルトラは Lighthouseと同等の精度を実現しているため、Lighthouseの対抗馬となることができます。特にQuestなど非LighthouseのHMDを使っているユーザーからすれば、この選択肢がある意味は大きいです。
ベースステーションの位置を意識する必要がない
Lighthouse方式では、外からの赤外線で認識している関係で、どうしてもベーステーションからの向きを意識する必要があります。ベースステーション4台10万円のパワーで殴って解決する方法もありますが、基本的には座ったり寝転がったりさまざまな姿勢をとろうとすると、ベースステーションからの視界に入るよう、意識する必要があります。
一方アルトラはトラッカー側にカメラがついているので、比較的「上手くトラッキングされる動き」を意識せずに済みます。
もっとも、この点で言えばIMU方式が一番ストレスがないので、中間くらい、ではあります。
VIVE Hubから電源オフができる
細かい部分ですが、ちょっと便利です。
日常のセットアップの項で、SteamVR以外にVIVE Hubが必要な点がマイナス、と書きましたが、逆に良いこともあります。
VIVE Hubから個別のトラッカーに対して電源のオフ、あるいは一括で電源オフができます。これはSteamVRとは独立しているので、なにかトラブルが起きてSteamVRを再起動したりしても、再度トラッカー電源を入れ直したりする必要がありません。VRChatプレイ中にフルトラから3点トラッキングに移行したい時も、VIVE Hubから一括電源オフすればOKです。
デメリットと苦手なこと
重い(物理)
重量は各種高精度トラッカーの中でも一番重いです。カメラねじのメスがついたベースプレートまで含めると112gもあり、これはVIVEトラッカー3.0の1.5倍、Tundraトラッカーの2倍に当たります。
これは結構効きます。LighthouseのVIVEトラッカーに慣れていますが、身につけても明らかに重さを感じます。また、重いため身体や足に密着させないと揺れやすくなります。
特に腰トラッカーは、Lighthouseでは飛び対策のために浮かせている人が多いと思いますが、その調子で浮かせると揺れがすごいことになります。アルトラは腰飛びしづらいので、逆になるべく身体に密着させた方が良いです。
この辺りは慣れでなんとかなるレベルではあると思います。
また、頭にトラッカーを1つ付けて自動キャリブレーションする方法がありますが、この時も重量が効いてきます。頭の真上につける方法などもありますが、HMDの重量に+100g超はなかなかつらいところです。Tundraトラッカーと比べるとサイズもひと回り大きくなり、重量は2倍なので、便利とはいえ頭につけるのをちょっと迷うレベルです。
クイックリリース機構のおかげで8の字キャリブレーションもそこまで手間ではないので、私は頭トラッカー無しの運用に落ち着いています。
暗いところが苦手
アルトラは、カメラでトラッキングするという仕組み上、部屋の明るさが非常に重要です。公式にも、明るさはトラッキング精度に非常に大きな影響があると説明されています。
そのためアルトラを使う時は部屋の電気をしっかりつけておいた方が良いです。人の目から見て「ちゃんと明るい」状態がベストです。
Q. 赤外線ライトじゃダメなの?
同じようにカメラでトラッキングするMeta Questなどは、赤外線ライトをつけることで、暗所でも使うことができます。アルトラでもこれは可能なのか、試してみました。
A. 無理です
試しに赤外線ライトがついた状態で、部屋の電気を消してみると、電気が消えた瞬間に全ロストとなりました。部屋のシーリングライトと同等程度の明るさを持つ赤外線ライトならなんとかなるかもしれませんが、少なくともよくある赤外線ライト×2 + ベースステーション2台程度では、全く明るさが足りないようです。
壁(無地で目印のない壁)が苦手
よく言われていることですが、カメラでトラッキングしている関係上、目印のない広い壁は苦手です。
ただし、普通に使っている分には、カメラに映るものが一面無地の壁のみ、という場面はそこまでないはずなので、致命的な欠点というほどではありません。
この欠点が気になるタイミングは、壁に近づいた時です。
例えば、我が家ではベッドを部屋の角につけて置いています。この状態でベッドに寝転がると、壁側の足がトラッキングロストしてしまいます。
カメラ認識なので、目印が無いと位置を見失ってしまうようです。公式にも、これが影響してそうな場合は壁に付箋を貼るなどして確認するように、と言われています。(壁が原因と分かったら、ポスターやタペストリーを貼るとよい)
ただし、いまのところ立った状態で壁に近づいたり、腕立て伏せをした時などは意外と大丈夫なので、壁が近いと即ダメ、ということはないようです。我が家のベッドの場合、壁2面に接していることが影響しているかもしれません。
また、最初にセットアップしたときは壁から50cmくらいの距離で即ロストしてしまっていましたが、リセットしてマッピングし直したら全然大丈夫になったので、うまくいかないときは一回リセットしてみるといいかもしれません。
バッテリー持ちが少し短い
バッテリー持ちは公称7時間です。LighthouseのVIVEトラッカー3.0は7.5時間、Tundraトラッカーは9時間なので、高精度のトラッカーとしては1番短くなってます。(VIVEトラッカー2018は、もっと短く4時間ですが…)
プレイ中に見ている感じ、VIVEトラッカー(3.0)よりも明らかにバッテリーが減るのが早いので、実働だと0.5時間以上の差がある気がします。
また、細かいところですが、稼働中は充電ができません。しかし外部電源から直接動かすことはできます。
どういうことかというと、バッテリー20%の状態からモバイルバッテリーを繋ぐと、稼働時間はモバイルバッテリー分伸びますが、本体のバッテリー残量はずっと20%のままになります。
これはどうやら熱の問題のようです。実際使用中は結構暖かくなります。
狭い部屋に弱い(らしい)
これに関しては実体験ではないのですが、どうもいろいろなレビューを見ている限り、狭すぎる部屋ではトラッキングが安定しない場合が多いようです。公式にも、推奨スペースは1.5m × 1.5mとなっています。
壁のすぐ近くは安定してトラッキング出来ないので、動ける範囲が狭いという意味で狭い部屋に向かないのは確かです。
現状5個までしか使えない
今の所、トラッカーの個数が5個までしか使えないという制約があります。これは膝や膝なども追加して使いたい場合には大きなデメリットです。
将来的には対応するよう開発中らしいですが、今すぐ高精度な11点トラッキングがしたい!という場合はLighthouseを使う必要があります。
総じて、やっぱり部屋環境に影響されやすい(いまだに安定しない場合がある)という点が惜しいですね。ただ、Beta終了後もちょくちょくアップデートされているので、改善はされています。しばらくしたらもっと良くなるかもしれません。
アルトラの仕組みについて
アルトラの動作はちょっと独特な部分があります。
まず、初期セットアップ時に部屋のマップデータを作成して、トラッカー内に保存します。
トラッカーを起動すると、一番最初に起動した個体が「マスター」となります。
二つ目以降に起動したトラッカーは、マスターのマップ情報を自分にコピーします。
トラッカー同士も通信しているようで、この仕組みを使って、複数のトラッカーで同じ座標系を共有しています。HMDのように自動で部屋認識してくれ〜!と思いますが、使っているプロセッサの性能問題や、複数で同期する必要がある関係なんでしょうか…?
VIVE XR Eliteに繋ぐ場合は、HMD側の部屋認識や座標系をそのまま使えるようで、マップ作成や「マスター」周りのややこしい問題はありません。これはPCVR固有の話になります。
この辺の仕組みはトラブった時の対処などに大事になってきたりします。
セットアップ手順とトラブル対応について
セットアップ手順について、Beta時代は公式DiscordからBeta用のコードを入手する、などのハードルがありましたが、正式版になってからは特に難しいことはありません。
ドングルをPCに繋いで、普通にVIVE Hubを起動するだけです。アプリ内の手順に従ってセットアップできます。
VIVE Hubは以下のリンクからダウンロードできます。
トラブル対応に関しては、公式Discord「VIVERSE」にBeta時代のものがそのまま残っているので、今でも確認できます。
Beta用の専用フォーラムこそなくなりましたが、いまでも困ったら公式Discordで質問することができます。
もっとも言語は英語なので、公式Discordで聞くのはちょっとハードルが高いかもしれません。
そこで、私が個人的にいくつかよくあるトラブルについてまとめました。結構長くなったので、この記事の最後につけています。困ったら確認してみてください。
公式Discord VIVERSEの参加リンクは、以下の公式ツイートからどうぞ。
その他の情報
トラッカーの個数について
1つのドングルに繋げるのは最大でトラッカー5個までです。ドングルを2つ繋いだら10台、には現状出来ません。しかし、将来的に可能になるよう開発中らしいです。
(PCVR Betaも終わりましたが、HTCさん対応まだですか…?)
おそらくですが、この制約はマップ共有の仕組み上の問題な気がします。マスターの持つマップを他のトラッカーが共有する仕組みなので、6個以上使うためには別のドングルと繋がっているトラッカーとも通信する必要がありそうですよね。その辺がややこしいんじゃないかと私は勝手に想像してます。
ちなみにVIVE XR Eliteに直接繋いだ分はマップ問題の対象外なので、XR Eliteに5個、PCに5個、とすれば一応今でも10個使うことは可能らしいです。
Space Calibratorについて
VIVE Hubには、OpenVR Space Calibratorの機能が組み込まれています。そのため、公式手順に従うとVIVE Hub内からキャリブレーションするように促されます。
しかし、単体のSpace Calibratorでも同じことが出来るため、VIVE Hub側の機能を使わずSpace Calibratorをインストールして使うのがおすすめです。
SpaceCal周りは少々ややこしいのですが、オリジナル版にbd_さんが継続キャリブレーションを実装したバージョンと、それをhyblockerさんがバグ修正したものがあります。現在はこのhyblockerさんのバージョンだけがメンテされているようです。以下のリンクからダウンロードしてください。
Lighthouseとの共存について
Lighthouseとは完全に独立したシステムなので、両方起動して共存することができます。OpenVR Space Calibratorでは、LighthouseをQuestにキャリブレーションして、それからアルトラをQuestにキャリブレーションする、というように複数のシステムをそれぞれキャリブレーションする形になります。特にSpaceCalのアップデートなども必要なく、そのまま使えます。
単騎フルトラにも意欲あるらしい
HTC曰く、VIVE以外のヘッドセットにも対応する計画があるようです。これはPCVRの話ではなく、QuestのUSB端子に直接ドングルを挿して Quest単騎でフルトラするような話です。もしこれが実現したら、PC無しでも高精度なフルトラが(VIVEシリーズ以外でも)出来るようになります。今後に期待ですね。
マップのせいで部屋を移動するのは困難
少なくとも現状は、最初にマップ作成という面倒な手順があるので、いろんな場所で手軽にフルトラ、ということはできません。
ベースステーションが不要になれば、自宅以外でも持ち出して簡単に高精度フルトラができるかと思ったので、これは残念です。ただ、ベースステーションを持っていくよりはコンパクトに済みますね。
→実際に、実家に帰省する時にPCと一緒に持って帰ってやってみました。
やはりマップを作る手間はありますが、最初の10分ほどだけなので、しばらく滞在するなら許容範囲かな、と思います。
もしも真似する場合は、ドングルを持って行き忘れないように気をつけてください。(1敗)
ちなみに、部屋を移動してマップを作り直すと、当然元の部屋のデータが消えてしまいます。
しかし、もしトラッカーを4つ以上持っていれば、一つだけ残しておくことで、元の部屋のマップを温存できるという技があります。
固定用ベルトについて
なるべく専用のクイックリリースに対応したものを使用するのがおすすめです。ただ、市販品は選択肢が結構少ないです。私の知る限りでは、EoZとRebuff Realityの2社だけです。そこそこいいお値段がします。
アルトラ発売からしばらく経っても全然対応品が出てこないので、自分で作りました。うちのBoothで販売しています。とりあえず3種類ですが、もう少しバリエーションを増やす予定です。
ただ、素足につけるストラップに関しては、EoZさんのやつがとてもいいので、そっちがおすすめです。あれを自作するのは結構厳しいので、今後もおすすめし続けると思います。
ちなみに一般的なカメラネジを使うタイプも使用できますが、
ねじの分トラッカーが身体から離れる→揺れやすい!
ねじなので、締め付けるとトラッカーが変な向きを向いてしまう
というデメリットがあります。やっぱり専用タイプがおすすめです。
Lighthouse系のトラッカーより重いので、揺れ問題は結構影響が大きいです。
どんな人にオススメ?
さて、そろそろまとめに入りたいと思います。
私個人としては、買った目的である腰飛び対策はバッチリ実現できていて、その他の点も若干微妙なところがあるものの、許容範囲ではあるので今後はLighthouseではなくこちらを使っていく予定です。長期仕様で大きな問題がなければ、本格的にLighthouseを手放すのもアリですね。
→Lighthouseはもう手放してしまいました。今後はアルトラで生きていきます。
オススメな人
インサイドアウト式HMDを使っていて、高精度なトラッカーが欲しい人、その中でもLighthouse系のデバイスを使っていないか使う予定のない人にオススメです。
オススメじゃない人
近くで壁を向く場面が多い、部屋を暗くして使いたい、などアルトラが苦手な条件が揃っている人
Lighthouse対応機材を使う予定のある人
最高の精度と安定性が欲しい人
今Questなどの非Lighthouse系HMDを使っていて、高精度なフルトラをしたい、となれば、Lighthouseではなくこちらに来るのも十分“アリ”だと思います。ハリトラやmocopiなどとは全く別次元の精度が手に入ります。
PCVR版正式リリース後は、セットアップのややこしさもなくなっているので、だいぶお勧めしやすくなりました。
余談
カメラで認識する…といえば、Quest Proコントローラーってありますよね。実はあれ、セットで4万円なので、1個2万円。アルトラより安いんですよね。
しかも、コントローラーとしての機能までついてきます。なんなら、トラッキング精度や安定性も Proコンの方が上だったりします。
……あれ?Proコンをトラッカーにした方がいいのでは?
まあ、無理なんですけど……
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トラブル対応まとめ
ここからは、トラブル対応のページです。Beta時代に書いた部分も結構あるので、最近は困ることも少なくなっていますが、困った際は確認してみてください。
基本のトラブル対応
アルトラでトラッキングの問題が発生した場合、取るべき対応はだいたい決まっています。基本はこれを上から順に試してください。
部屋環境のチェック
トラッカーを1つずつ起動する
カメラを隠して強制ロスト
電源オンオフ
リセット
完全なリセット
マップの再作成
部屋環境のチェック
これは前提のような部分ですが、アルトラの動作には十分に明るく照らされた部屋が必要です。電気はきちんとつけましょう。薄暗い状況も、よくないです。また、公式にはある程度の広さも必要であると言われています。が、実際狭すぎてまともにトラッキングできない、という状態が起こるのかは分かりません。
トラッカーを1つずつ起動する
特に部屋認識などに問題がある場合、1つずつ順番に電源を入れることが推奨されています。
1つ目のトラッカーの電源を入れる
1つ目のトラッカーを「準備完了」にする
次のトラッカー1つの電源を入れる
(以下、繰り返し)
(※うまく動いているなら、一斉に電源を入れても問題はありません。うまくいかないときは1つずつの手順を試してみてください。)
カメラを隠して強制ロスト
トラッキングがおかしい時にまずやるべきことはこれです。カメラを両方とも手で10秒ほど隠し、一旦完全にロストさせてください。
その後、覆っていた手を外して再度部屋を認識させます。このとき、後述するオフセット問題が起きている場合などは、最初に見せる方向を変えることで状況が改善することがあります。いつも正面を向いて使っているなら、部屋の横や後ろを向いた状態で覆っている手を外すと、正しく部屋を認識できるかもしれません。
電源オンオフ
カメラを隠してもダメな場合、電源のオフ→再度オンを試してください。
注意点として、マスターになっているトラッカーの電源を落としてしまうと、他のトラッカーにマスターが移行することになります。このとき、一旦他のトラッカーも全てロストしてしまいます。マスターの移行は少し時間がかかるので気を付けてください。
リセット
電源オフでも解決しない場合、トラッカーをリセットすると解決する場合があります。
該当のトラッカーをUSBケーブルでPCに繋ぎ、VIVE Hubからリセットを選択してください。USB機器の着脱サウンドが何度か鳴りますが、VIVE Hub上で「セットアップが必要です」になっていたらリセットは終わっているのでUSBケーブルを抜いてOKです。
なお、先にUSBケーブルを繋いでしまうと電源ボタンを押しても起動できないようです。面倒ですが「電源オン」→「USBケーブルを繋ぐ」の順番を守ってください。繋いでいるのに「リセット」が押せないときは、USBケーブルを繋ぎ直してみてください。
完全なリセット
先のリセットは実は完全ではありません。他のトラッカーの電源が入っている(マスターになっている)と、リセット後すぐにマスターのマップ情報がコピーされるためです。完全にリセットを行うためには、以下の手順が必要です。
全てのトラッカーの電源を落とす
リセットしたいトラッカー「だけ」電源を入れる(マスターにする)
リセットしたいトラッカーをUSBケーブルでPCに繋ぐ
VIVE Hub上で該当トラッカーをリセットする
念の為、リセット完了後、もう一度リセットする
元のマップデータをそのまま使いたい場合、リセットしたトラッカーは再度電源オフし、リセットしていないトラッカーの電源を先に入れます。
また、1回では完全にリセットされない場合があるようで、念の為2回行うことが推奨されています。これはbeta時の情報なので今は改善しているのかもしれませんが、やっておいても損はないでしょう。
マップの再作成
最後はマップの再作成です。もっとも、何度もリセットを繰り返したりして疲弊するくらいなら最初からマップを作り直してしまった方が早いです。
アルトラは最初にスキャンしたマップをもとに、使うたびに学習して精度を上げていくらしいのですが、体感上段々部屋が散らかっていったり、部屋の様子が変わっていくと認識が怪しくなってくる印象があります。
正式版の今は部屋スキャンの作業も比較的楽になっているので、困ったらマップをリセットしてしまう方が良い気がします。マップ作成時、特定の方向だけ品質が悪かった場合はその方向だけ再スキャンしてマップを修正することもできます。
以前は相当気をつけてゆっっっくりスキャンしないとマップ品質が低いというメッセージが出ていましたが、今はそこまで意識せずにスキャンしてもきちんとマップ作成できるようになっています。もっとも、マップ品質はトラッキング品質に直結するのでゆっくり丁寧にやるに越したことはないです。
具体的なトラブルについて
起動時、トラッカーが部屋を認識しない/マスターが部屋を認識せず、他が「同期中」のままになる
まず、トラッカーを「1つだけ」起動します。
部屋が明るい状態で、トラッカーを胸の前に掲げる、床から斜め上に向けるなど、部屋をよく見えるようにしてください。
マップ作成時の「正面」に向けると良いかもしれません。
それでもダメなら、一旦電源を切り、別の個体をマスターにして試します。
諦めて放置したら認識していた時もありました。
マッピング時から部屋の状態が大きく変わっているとダメかもしれません。
全部ダメなら、マッピングからやり直した方がいいです。
アルトラの仕組み上、マスターが部屋を認識できないと、他のトラッカーは一生同期中から進みません。マスターが部屋を認識出来るなら、電源を切らなくてもいける時もあります。
トラッカーが起動後に「準備完了」にならない/トラッカーがロストしたあとトラッキング状態に戻ってこない
まず、トラッカーのカメラを手で隠して10秒待ち、完全ロストさせます。
その後手を外して部屋を認識させてみてください。
ダメな場合は、トラッカーを再起動します。
それでもダメな時は、トラッカーをリセットしてください。
あるいは、マップを再作成してください。
トラッカーがよく飛ぶ
マップ品質や部屋の明るさなど、セットアップか環境に問題があるかもしれません。Betaの頃ですが、マップを作り直したら劇的に改善したことがあります。詳しいマップ品質は
C:\ProgramData\HTC\ViveSoftware\ViveUltimateTracker\config\Calibration.json
から確認できます。同じ部屋でもゆっくりスキャンし直すとマップ品質が変わるため、Calibration.jsonを見ながら何度か試してみると結果が変わるかもしれません。複数のトラッカーを使えば、一時的に複数のマップを保持できます。
トラッカーがブルブル震える
まだ対策がわかっていません。公式Discordで調べて情報がなさそうなら質問してみます。対策がわかれば追記します。
→最近は起きていません。アップデートで直ったかもしれません。
スケーリング問題(scaling issue)
スケーリング問題は既知の問題です。Questとの互換性の問題で、まだ解決していないようです。
スペースキャリブレーションに関する問題で、Questの座標系とアルトラの座標系を合わせる際にスケールがズレてしまい、スペースキャリブレーションを行った場所から離れるとトラッカーがズレてしまう現象です。
→Ultimate TrackerのPCドライバー1.2.1から、VIVE Space Calibratorにスケールモードの対応が入りました。Questユーザーは公式のキャリブレーターを使用したほうがいいかもしれません。これで完全に解決してるのかは分かりませんが、使用感がわかればまた追記します。
ひとまずの方法として、SpaceCalibration(8の字)を行うときになるべく部屋の中で物理的に大きく移動しながらキャリブレーションを行うと、体感改善することが多いです。
また、マップを何度か作り直すと、正しいスケールでマップを取得できる場合があるようです。
その方法でうまくいかない場合や、もっと精度を求める場合は、スケールを手動調整する方法があります。ただし結構手間がかかるのと、HMDの電源オフで再設定が必要になってしまうようなので、あまりおすすめはできません。
手動スケール調整の詳細は下記discordのリンクを参照してください。
https://discord.com/channels/946305475467706419/1180030550476603493/1290318437691949099
ただし全て英語なので、下に翻訳しつつまとめておきます。
流れとしては大体以下の通りです。
Vive Hub側のSpace Calibrationをリセットする。
外部のSpaceCalibratorをインストールする
Space Calibratorでキャリブレーションを行う
Space Calibratorでスケールを手動で調整する
まず、Vive calibrator(VIVE Hubに含まれているスペースキャリブレーター)でキャリブレーションをリセットします。手順は以下の通り
ターゲットコントローラーを選択
ターゲットトラッカーを選択
この時点で前回のキャリブレーションが削除されます。8の字を描かずに別の画面に移動すると、リセット完了です。
スケールを手動調整するために、VIVE Hubに統合されたSpace Calibratorではなく、サードパーティのOpenVR Space Calibratorを使用します。下記リンクの「Releases」からダウンロード、インストールしてください。記事執筆時点での最新版はv1.5.1です。
SteamVRを再起動すると、自動起動するアドオンとして登録され、以降SteamVR起動時に自動起動してくれるはずです。SteamVRのダッシュボードでは、「Space Cal」という名前で表示されます。
インストールができたら、SteamVRを起動し、Space Calibratorで8の字キャリブレーションを行ってください。
その後、Space Calibratorのスケール調整を使用し、いい感じになるように調整します。
注意点
ヘッドセット側の位置リセット機能を使うとキャリブレーションがズレるので 使用しないこと。代わりにSteamVRの位置リセット機能が使えます。
Questの境界線を書き直さないこと
ヘッドセットの電源が切れないようにすること
Virtual Desktopを使っている場合、Center to play space をオンにすること
スケーリングがうまく調整できたら、Copy Chapterone bounds to profile を押す
この手順が面倒な場合、マップを何度か作り直すと、正しいスケールでマップを取得できる場合があります。
ここまで、ほぼ翻訳です。
ちなみに、面倒なので私自身は試していません。
オフセット問題
https://discord.com/channels/946305475467706419/1288703474195759184/1288703474195759184
トラッカがーが「準備完了」になっているにも関わらず、いくつかのトラッカーの位置がずれてしまう問題です。私の環境でも結構起きています。
ヘッドセットとのキャリブレーション時に全てのトラッカーが「準備完了」になっていない状態でキャリブレーションすると、起こる場合があるようです。
しかし、そうでなくても起きるときは起きます。やっぱりマップや部屋環境そのもの(壁や床に目印が少なくて認識しづらいなど)の影響が大きい気がします。
アルトラは使っていくうちに部屋を認識してマップを改善していくので、マップ作成直後はうまくいかなくても、そのうち良くなることもあります。
頻発する場合はマップを作り直すのが一番早いです。
私のトラブル対処手順
オフセット問題
ひとまずカメラを隠してロスト→再認識を試します。
最初に見せる部屋の向きを変えて何度か試します。それでもダメなら、そのトラッカーをリセットするか、マップを再作成します。
また、これは反則的ですが、私の場合はトラッカーを4つ持っているので、オフセットしている1つを放置して残り3つを使うこともあります。
とくにマスターがオフセットしているときは電源を落としてしまうと再度マスター移譲→部屋認識からやり直しなので、電源オフせずにそのへんに放置しておきます。
トラッカーが飛んでいく
オフセット問題の亜種のような感じです。結局のところトラッカーが部屋を正しく認識できていないことが原因ぽいです。
起動後、部屋をなかなか認識しない
おそらくマップ状態が良くないです。抜本解決はリマップになります。もしかしたら、そのまま使い続けたらマップ学習によって良くなる場合もあるかもしれませんが、頻発するなら作り直した方が早いです。
起動後、そもそも部屋を認識しない。
同上。この状態まで来ているなら大人しくリマップしましょう。
以上です。参考になれば幸いです。
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