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子供のころの夢

さっきまで、昨日のお盆の朝に見た妙にリアルな夢を思い出していた。

それである夢を思い出した。

子供のころ、何度も繰り返し見たファンタジーな夢だ。




夜中になった。

近所はすべて寝静まり、シーンとしている。


そして、そんな夜中に、私はまたひとりで目覚めてしまった…

犬のゴン太が耳をピクリとし、
私がモゾモゾ起き上がるのを、そのこぼれそうな黒目で、しっとり濡れた黒豆がふたつ、じっと見ている。

吠えるな…
静かに…


気づくと私は外にいて、

ある道の真ん中にあるマンホールのそばに立っている。


深夜のしんと静まった中、
マンホールは少し蓋がずれていて、

そこから黄色く明るい楽しそうな色が三日月みたいに漏れている。


私はいつもの如く、
その色合いに惹きつけられるようにマンホールの中へ入ってゆく。


眩しいまでの光と音と、
異形な、でも楽しそうな物やなんやがたくさんパーティーをしている。ように見える。


私は子供で、パジャマで、少し肩身が狭い。

けど、
そんなパジャマ姿の子供の私を彼らは仲間に入れてくれる。
楽しい。本当にすごく楽しい!

具体的に、
どんな音楽で。とか
どんな食べ物が。とか
どんなものがいて。とかは説明出来ない。

ただ、そこにあるものは人ではなく、食べ物ではなく、音楽のような、でもただの音のような、美味しそうだけど味がわからないもの。

すべてが眩しく、目がチカチカする。

例えるなら…
楽しいことの後、目を閉じてもその裏に残像が残って目がチカチカする感じ。


そして、私はいつの間にかまた深く眠り、
朝、気だるく目が覚める。




その頃、学校で、
自分の生活習慣を発表する。と言うのがあった。たしか小学1年生とかだった。

「何時に起きて、何時にどんな朝ごはんを食べ、着替えて。帰宅したら何時に夕食を食べ、何時に寝ますか?」

普通によくある宿題である。


でも私は困った…

なぜなら、私は夜中、たびたびマンホールに行ってるからである。

下手にマンホールのことを抜かして発表してしまったら、もしかすると先生に怒られるのではないか?先生なら、私が夜中、マンホールへ行ってることを知っているのかもしれない。

子供ながら、
冷や汗ダラダラで生活習慣の発表に臨んだあの日のことは忘れない…
すごく怖くて、その日、朝一番に仲良しの由里子ちゃんに相談したほどだ。

彼女は優しく「ほんなら、私の真似しとき」と、彼女のプリントの起床と睡眠時間を真似させてくれた。


それほど、
あの地下での出来事はリアルで、
何度も繰り返し見た夢は、今でも夢だったのか?本当に行ってたのか?正直分からない…


そのあと私は引っ越し、転校し、小学3年生から通い出した新しい学校で、友達にセンダックのかいじゅうの絵本を教えてもらった。

「私と同じ子がいた!」と思ったが、それは固く心の奥に終い、誰にも今の今まで言っていない。

引っ越して、もうあのマンホールの近所には住んでいないのだから…



そして今から5年前、
叔父が亡くなり、そのお墓参りで、子供の頃住んでいたあの町へ行くことになった。

そこに本当にマンホールがあるのか?あったのか?気になったが、それを確かめるのは怖いような、残念なような…


そんな気持ちのままでいる私に、
一緒に故郷へ帰った母とその友達や私の幼馴染が、車で、懐かしい場所をぐるっと巡りに行こう!と話をつけてしまう。


やばい。
あのマンホールのある道、絶対に通るやん…

その途端、
幼い頃のチビの私が、大人の私の隣に鎮座し、車の後部座席でふたり、ドキドキと胸を高鳴らせる。


そして幼馴染にこう言ってみる。
「この坂な、みんなで遊ぶ時、自転車で通るの怖かってん…あのマンホールのとこが…」


すると彼女はこう答える。
「なんか言うてた気ぃするわ…」

ええー!
なんですとー?

誰にも言わず固く秘密にしてたつもりが、
あの頃の私は、結構簡単にみんなに話してたのかもしれないことが呆気なく発覚。

子供のころのミステリーが塵と消えた瞬間、ある事を思い出されられる。

「そういえば、あんた一回、居なくなったことあったな。みんなで夕方暗なるまで探して。怖かったわ〜」


…忘れてた!
私は家出をしたことがあった。


そんなこんなで、
あまり人には言えないが、
大人になった今でも、
なんとなくマンホールがあると、
軽く両足で踏みしめてからその上を通ってみる。

おとなになったのに馬鹿なことやってんな!と、我ながら…思う。

こうして可愛げのない子供は、
屈折した大人になった。笑

これが私のファンタジーな子供のころの夢である。

なんであんな夢をよく見てたのか?
知りたいような…
ファンタジーとして心に留めたままにしたいような…

淡いグレーな思い出である。



扉写真
エドワード・ゴーリー「うろんな客」

異次元な世界観のゴーリー、大好きな絵本作家。

charARさんの記事で久々に読んでみたら、やっぱりよくわからん笑
そこが良い!

よろしかったらゴーリーの世界観をどうぞ

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