使いやすさと美しさの融合、職人の手が生み出す日常に特別をもたらすグラス。
vol.12 |「fuwari」シリーズ誕生秘話
ライフスタイルに寄り添い、ダイニングを中心に食器や花器の展開を広げてきたKIKIMEですが、テーブルコーディネートをする上で欠かせないグラスの存在は長らく課題となっていました。ブランド誕生からちょうど5年の節目、KIKIMEらしく心地の良い”効き目”をもたらすグラスを作りたいというシンプルな発想がfuwariグラスのはじまりでした。
ー日常でも扱いやすい香り立つグラスへの挑戦
これまで酒用グラスのギフトといえば、脚付きのワイングラス、切子、薄づくりのグラスなど特別感のあるものが定番でした。自宅で非日常が味わえる魅力がある一方、繊細すぎて扱いづらかったり、特別なシーンでしか使えず出番が少ないなど、いざ使い手となると気になる面も。毎日の食卓に寄り添い、普段使いできる酒用グラスのあり方に目を向け、KIKIMEならではの使いやすさと美しさを兼ね備えたグラスを作りたいという思いで構想を広げていきました。
味覚と嗅覚をくすぐる形の追求
ーグラスの形状がもたらす味わいの深み
グラスによって飲み物の味が変わる秘密は、口径の広さと液体が舌先に落ちる滞留時間にあります。そこで私たちは、古来のワイングラスの形状を再分析し、それをデザインに活かすことにしました。
広口のボルドー型は、液体が舌全体に広がり、すっきりとした味わいと香りをもたらします。一方、狭口のブルゴーニュ型では、液体が舌先や裏に落ちることで香りが豊かに広がり、複雑な味わいをまろやかに整えます。
さらに、アロマがこもりやすく濃密に感じられるモンラッシェ型の特徴である大きく膨らんだボウル部分を踏襲し、日常で扱いやすい香りに着目した味わいの異なる二つの形状にたどり着きました。
250mLのグラスは、フルーティーで爽やかな白ワインや日本酒、普段使いのお水やお茶にぴったりで、軽やかさを楽しんでいただけます。一方、360mLのグラスはくびれた形状と狭い口径を持ち、複雑な味わいを得意とします。苦味のあるスタウトビールやタンニンの強い赤ワインと絶妙に調和し、香りが豊かに広がり、味わいをまろやかに整えます。
用途や贈る相手の好みに合わせて選ぶことができる、そんなグラスがfuwariなのです。
ー美しさと機能性の両立を目指して
美しさと持ちやすさを両立させるため、サイズごとに試作を重ねました。繊細すぎず、でもどこか特別感のあるガラスだまりの台座と、それが手にしっくりと馴染む感覚を追求し、どんなシーンでも使いたくなるようなグラスを目指しました。
また、普段使いのグラスといえば複数個購入をしたいというユーザーに寄り添う考え方から、異なる容量のグラスを一つの型で作り出し、上部のカット位置を工夫しました。一つの金型で絶妙なラインをデザインしたことで、製造コストを抑えつつ、2つの形状と飲み方のグラスの商品化を実現しました。
KIKIME初のガラス素材
コンセプトに合う形状を日本で一から作ることは予想以上に難しく、複数の工場から「型を作ることは難しい」と開発を断られてしまい、窮地に立たされることもありました。
そんな中、古くからガラス工業が盛んな小樽の地で深川硝子工芸と出会い、この出会いによりfuwariグラスを生み出すことができました。
ー小樽がガラスで有名な理由
小樽は漁業が盛んで、特に明治から大正時代にはニシン漁が全盛期を迎えました。当時は漁具として「ガラス製の浮き玉」が使用され、小樽では実用的な石油ランプや浮き玉の製造が盛んでした。実用性重視のガラス製品はデザイン性を見直され、ぬくもりや安らぎをもたらすアイテムへと進化し、インテリアや小物として広がりました。このようにして、「小樽といえばガラス」というイメージが定着しました。
ー 職人たちとの出会い
そんな小樽でようやく出会ったのが深川硝子工芸でした。明治時代に東京・深川で創業し、ガラス製品を製造。昭和に入り、さらなる発展を目指してガラス工芸が盛んな北海道・小樽市に拠点を移し、長きにわたりガラス食器の製造に真摯に取り組まれてきた会社です。小樽の豊かな自然と職人の技が融合することでより洗練されたガラス製品を生み出し、伝統を守りながら新しい挑戦を続ける職人と協業することで難航していた開発が大きく前進しました。
手仕事が生み出すガラスの美
ー 理想の形への試行錯誤
香りにフォーカスした鼻先を覆うコロンとしたまあるい形を実現しながら、日常で扱うために繊細すぎずガラスの美しさを際立たせるガラスだまりの台座のデザインは、取り組んでみると吹きガラスの製法としては難しいものでした。
当初は台座の部分をドーナツ型にして軽量化をはかる構想でしたが、ガラスがうまく入り込まず、飲み物を入れるボウル部分に影響が出てしまい、容量が減ってしまうという想定外の問題が発生。
そこから試行錯誤を繰り返し、最終的には台座のデザインをフラットに変更し、炉の温度や吹き方を変えることで、ガラスの柔らかさをコントロールし、同じ型を使いながらもサイズごとに異なる製法を駆使する職人技によって、形を実現することに成功しました。手作業での仕上げならではのガラスのゆらぎが、グラスの美しさをより一層際立たせてくれています。
ー手吹き製法で紡いだ口当たり
口元の厚みは、薄すぎると繊細すぎて扱いづらく、オートメーションで作製すると分厚くなりすぎて口当たりが悪くなってしまいますが、fuwariは職人の手吹きガラスならではの最適な厚みに。
fuwariグラスは飲み物との対話を楽しむ、そして手吹きガラスの製法だからこそ、一つとして同じ表情のない、特別な時間を提供するための形状に仕上げることができました。
アロマを包み込む形状と輝くガラスだまりが食卓に華やかさを添え、柔らかなフォルムがしっくりと手に馴染むfuwari。いつもの食卓にも溶け込むその佇まいは、特別な一杯だけでなく、暮らしのひとときに温もりをもたらします。吹きガラスならではのゆらぎは、日常にさりげなく趣を添えることでしょう。
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