犬上郡や東近江市の忘れられた社
私の趣味の神社巡りで一応あちら方にはたまに行く。滋賀の神社好きなら知っているであろう筒井神社や大皇器地祖神社、他にも霊仙山なんかは犬上郡や東近江市辺りだ。
あの辺りは廃集落が多いことでも知られていて下のクチコミが書き込まれた今畑集落なんかも廃集落だ。
https://goo.gl/maps/QuGo5dyNkLhDJNUf7
クチコミの内容を要約すると霊仙山に登る途中に存在する集落、名を今畑集落というのだが登山を始めて集落に着くまで姿が見えず声だけが聞こえるという現象が続いたというもの、ゾッとするような恐ろしい体験だ。しかし、この怪談はここに集落があり、人々の温かさがここにあったという事を後世に伝えてくれるという役割を持っているのである。この話が伝わることでこの場所に集落があったことも伝わっていく、怪談は歴史を残すのだ。というのは半分宇津呂鹿太郎さんの受け売り。まぁ前述の通りここらには結構そういう忘れ去られた集落が残っていて他にもいくつかある。
と、その前に今畑集落の話の続き、今畑集落の近くには役行者が祀られる𡚴原の口権現(あけんばらのくちごんげん)と呼ばれる場所が存在する。ここを数キロ進んだ先には奥権現と呼ばれる場所が存在し、冬の積雪のため奥権現に行けない時のために集落の近くに作ったのが口権現だと言われ奥宮と里宮といった感じだろう。修験道の祖である役行者が祀られる社というのは少なく、また、役行者の修行の地という話が残っているような貴重な地はもっと少ない。
さて、別の集落の話をしよう。大萩集落という集落が大皇器地祖神社へ行く道の途中に存在する。近くを通るとギョッとするような場所だ。というのも巨大な仏像や石像が今も残っており中には3mはあろうかという金色の仏像も存在する。この集落はある年に来た台風の被害が激しく集団離村に至った経緯があり、ほとんどのものが残ったまま存在する。その異様さたるや、ここを通る時は仏像の目線を感じながら集落を抜けることになるくらい仏像だらけだ。集落内にある萩神社はそこだけがやけに小綺麗でそれがまた異様である。
また別の場所、落合集落は今畑集落の近くに存在する集落で心霊スポットであるとされることもある。中央には林があり落合神社という磐裂神と根裂神という珍しい神が祀られる神社が存在するようだ。ちなみにこの付近ではどうも死体遺棄が頻発しているようで警察の捜査がなんどもおこなわれている。
また別の場所、男鬼集落(おおりしゅうらく)という場所はまだ部分的に管理がなされさて、滋賀大学が使う建物もあるようだ。8世紀頃に建てられた男鬼寺(だんきじ)から集落は始まったとされ、大正の頃、集落にある比婆神社に「うた」という霊能力者が訪れたことで集落が有名になり信者が増加した。現在も比婆講と呼ばれる信仰者の集まりが残っているとのこと。比婆神社の祭神は伊邪那美命とされるが元は山の神を祀る山岳信仰の社であったという。また、伊邪那美命を埋葬した比婆山がこの場所であるという説が唱えられたことがあるようだが出雲の比婆山の方がそれらしいという見方の方が現在は強い。
そしてこの比婆神社の対とされるのが大杉神社、または北原竜宮(きとらりゅうぐう)と呼ばれる社。私の苦手な龍神好き達にはかなり好まれる社で表の祭神は伊邪那岐命だが琵琶湖の龍神である皇帝金竜も祀られるとされ神木が凄まじいものがある。是非とも神木探偵こと本田不二雄氏に文章として残して欲しいものである。
まとめると霊仙山の麓にある廃集落には独自の信仰が根付いており、大皇器地祖神社に祀られる惟喬親王を始めとして役行者、磐裂神、龍神など珍しい祭神や霊能力者「うた」氏のような超常による比婆神社の再興などの面白い信仰の形を残している。