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卵子も年を重ねるんです....


こんにちは!
不妊カウンセラー保健師のキリン🦒です。
(いつの間にか名乗り方変えてるって突っ込みが欲しい)

本日のお話は、タイトルの通り....

【卵子も年を重ねる】という内容にしました。

卵子凍結と少し繋がる部分があるかと思います…。

【卵子が年を重ねると無くなってしまう、卵子も体と一緒に年を重ねる事】について、誰も教えてくれなった…..。

不妊治療の臨床現場では、沢山の方々がそのようにお話をされ、「もし、卵子に寿命があることを知っていたら、もっと早く子どもを迎える準備をしていたかもしれない。そして、子どもを授かることが出来たかもしれなかった…」と涙を流す患者さんが沢山いらっしゃいました。

学校の授業で、そんな話を聞いたことのある方はいらっしゃいますか?

「卵子が年を重ねていく事、精子と異なり新たに産生されない事、卵巣年齢と呼ばれる卵巣予備機能の事」

今日はそこを一緒に学んで行きましょう。
(ただ、私が学び直したかった....)

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1.   始まりは「卵子老化の真実」という本の存在

この本の存在によって、多くの方が初めて”卵子は老化するのか!”と衝撃を受けたのではないでしょうか?

私も、「卵子の老化について」大学で学んだ覚えはありません。
(私は全く勉強していないダメ学生だったので、忘れてしまっているだけかもしれませんが(苦笑))

「卵子老化の真実」は河合蘭さんというジャーナリストが2013年に書いた本です。

この本は、
「外見は若くなっても卵子の老化は止まらない。」

という衝撃の一文から始まり、卵子の老化について、日本の体外受精の現状、高齢出産、出生前診断について細かく丁寧に書かれています。


今回はこの本の一部で紹介されている卵子の老化について、最近若い女性の間で流行っているAMH(抗ミュラー管ホルモン):卵巣予備機能という部分に焦点を当てて書いていきます✍。


2. 卵子が一番たくさんある時期っていつですか?


卵子(実際にはその過程で名前が変わりますが、今回はひとくくりにこう呼びます)はいつ作られるか知っていますか?

卵子は、女性が胎児(お母さんのお腹の中にいる時)の時に作られます。
そして、その後新しい卵子は作られないのです。

胎児期に作られる卵子の赤ちゃんは、神様からのお土産と思って頂くと良いかもしれないです。
(私はそう思って卵子ちゃんを愛でております🦒)

上記でもお話した通り、女性が将来赤ちゃんを産むための準備は、お母さんの子宮の中で始まります。

卵子の赤ちゃんは専門用語で「原始卵胞」と言います。

「原始卵胞」は、妊娠5~ 6カ月に700万個まで増加します。

その後、胎内で消えてしまうものもあり、残ったモノたちが一人前になる前の段階まで辿り着きます。(一次卵母細胞さん:以下卵子と表現します)
そして、一旦成長が止まり深い眠りに入ります

そこまで、無事に到着出来る卵子は約200万個ほどと言われています。

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こちらのグラフは良く目にするものだと思います。

そう、卵子が一番多いのは、胎児の時で成長と共に失われ閉経という時期をもって、ほぼなくなってしまうのです。

3.卵子が年を重ねるという事

私も含め、女性が年齢を重ねると共に、卵子も一緒に年齢を重ねていきます

生まれてきてから初めての月経を迎えるまで、卵子は卵巣の中で眠り続けて目を覚ますことはありません。

しかし、その間にも卵子は自然に消えていきます

生まれたときに約200万個あった卵子は、月経が始まる思春期の頃には約20~30万個ほどになってしまいます。

思春期以降は、排卵や月経の有無に関係なく、1ヶ月ごとに約1000個ずつ減っていき、35歳のときにはおよそ2〜4万個になってしまいます。これは、生まれたときの数の約1〜2%に相当します。

数が減るだけなら、排卵さえきちん出来ていれば問題なく妊娠出来る気がしますよね。

ですが、卵子は、生まれてから深い眠りについており、年齢が高くなれば、眠りについている期間が長くなります。この間に細胞自体がも年を重ね、染色体や遺伝子に異常がおこりやすくなります。

その結果として受精しにくくなったり、受精がおこっても染色体異常が発生しやすくなったりします。

そして、妊娠が成立したとしても、流産してしまう確率が高くなります。

45歳前後になると、月経が規則的にあっても排卵がないこともあります。

月経がなくなることを【閉経】と呼びますますよね。

大体ですが、卵巣に残っている卵子の数が、1000個以下になると閉経を迎えたことになると言われています。
(卵は卵巣にあるのに!?と思いますよね…でも、排卵も月経もなくなってしまうのです)

ここまで、卵子は性を受けた時に、神様から与えられたものであり、年齢と共に年を重ねてだんだんと消えていく事についてお話させていただきました。

次は、卵巣年齢(卵巣予備機能)という言葉について勉強して行きましょう✍


4.卵巣年齢ーAMHーってなぁに?

よく、ブライダルチェックや女性向け雑誌で見かける【卵巣年齢】という言葉、皆さん何者かご存知でしょうか?

卵巣年齢や卵巣予備機能と呼ばれている物の正式名称は

AMH(抗ミューラー管ホルモン:anti-Müllerian hormone)」と言います。

このAMHとは…卵子の何を測っているのでしょうか?

下記の図はフランスのDewailly氏らが2014年にHuman Reproduction Update誌に発表したレビュー論文です。

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詳細は飛ばしますが、この図ではAMHの卵巣における働きについて書かれています。

上記の図から、眠っている卵子(厳密には一次卵胞~小胞状卵胞)の顆粒膜細胞から分泌されるのがAMHだということが分かります。

すっごく簡単にすると、血液中にあるAMH(血清AMH)の値を測定することで卵巣内に眠っている卵子の数を予測するというものです!

ここで、とても大切な事をお伝えします!

『AMH=妊娠率』ではないということです。
AMH値が低い=(イコール)妊娠率も低くなると思われる方が多いのですが、AMHはただ残された卵子の量を予測するだけの数字です。

卵子が年を重ねると、どうしてもこの世に赤ちゃんとして産まれてくるのが、難しいというお話をしましたよね。

卵子の妊娠しやすさは、年齢が大きく関わってくるのです。
ですので、卵子が少なくても良質なものであれば妊娠するという事は知って頂けると良いかと思います。

ただもうひとつお伝えしたいのが、若くしてAMHが低い方は、妊娠の期間に限りがあるかもしれないという事です。

ここでは詳しくお話しませんが、早発閉経と呼ばれ、20代や30代で閉経を迎えてしまう方も中にはいらっしゃいます。

ですので、若くしてAMHが低い方は、早めに妊娠を考えるという事も実はとても大切なのです。

※勿論AMH低いだけでは、診断はつきません。FSH、E2などのホルモンやエコーなどの画像情報、卵巣刺激への反応で確認していきます。

下記は年齢別のAMHの値の目安です。
(出展Seifer. Age-specific AMH values for U.S. clinics. Fertil Steril 2011)

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医師の中には、AMH測定は意味をなさないという方もいます。

実際に、日本生殖補助医療標準化機関(JISART)でも個人差が激しいという共同研究結果が出ていますし下記のような報告もあります。

平成 27~28 年度生殖・内分泌委員会 生殖医療リスクマネージメント小委員会報告の報告。

1.AMH は卵子の質とは関連しない.
2.AMH の測定値は個人差が大きく,若年女性でも低い場合や高齢女性で
 も高い場合があり,測定値からいわゆる「卵巣年齢」の推定はできない.
3.測定値と妊娠する可能性とは直接的な関連はなく,
  測定値から「妊娠できる可能性」を判定するのは不適切と考えられる.
4.測定値が低い場合でも「閉経が早い」という断定はできない.

ただ、今回は【生殖医療の観点から治療方針の決定】や【将来子どもを持ちたいと考える女性】が出来る検査の選択肢の一つとして、知って頂きたいということで紹介しております。

また、正しい情報が分からないまま受けた結果をどのように扱えばよいのかを知るきっかけになればと考えています。

その他にも、AMHが高値を示す場合は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断補助になる事や、以前に卵子凍結でお話しした、抗がん剤治療後の卵巣予備機能の評価(妊孕性温存療法を行う際の参考指標)、子宮内膜症やその手術(ここでは主にチョコレート嚢胞)による卵巣予備機能の評価に使用することは有用性が期待されており、AMHそのものの存在は、女性医療にとって欠かせない存在であることは確かだと考えられています。


5.まとめ

さて、今回は卵子も年を重ねるということ、卵巣予備機能について非常に簡単にお話させていただきました!

卵子は神様からの贈り物であること、一緒に年を重ねていく事について少しでも知っていただけたらと思います。

よく「老化」という言葉で表現されますが、私はあんまり好きでないのでなるべく使いません。

年を重ねることは素晴らしい事だと思いませんか?

いつまでも若々しくも素敵ですが、年を重ねて色んな経験をし、人生は豊かになるのだと私は思います。
(良いことも悪いことも勿論両方あるとは思いますが....)


年を重ねた卵子で無事に妊娠出産に至った時は

「強い子だなぁ~、皆首を長くしてあなたを待ってたよ」と心の底から思います。
(もちろん、若い方の妊娠出産も奇跡の重なりなのでとっても嬉しいですよ!)

ただ現実問題、人という生き物は生殖年齢という限られた時期にしか妊娠はできません。

それは、新たな命がこの世で生きられない場合に自然淘汰されてしまうこと(染色体異常などでの流産)、年齢を重ねてからの妊娠・出産は若い人よりもどうしても命に関わる合併症が出やすい事などがあるからです。

女性の社会進出が進む中、限られた期間に次の世代を産み育てていかなくてはならない現実。

とっても難しいですよね。

これは、個人の問題を越えて社会の問題なのですが、
妊娠・出産は個人が選ぶものです。
必要以上に、個人のプライバシーに入り込むことのないよう
十分な配慮をし、必要な人に必要なタイミングでサポートができるのが
理想の形です。


パートナーがいないとできませんし、パートナーが居たとしても産まないという選択肢も勿論あります。

ただ、知らなかったことで赤ちゃんを迎えられないという事のないように、これからも性教育を大切にしていきたいですね。

そして、妊娠準備・妊娠・出産・育児と仕事の両立支援。大切にしたいですね。

本日は以上です!

不妊治療とキャリアの継続、産むという事、産む産まないの選択について、またどこかの機会でお話したいと思います☺️

最後までありがとうございました!

【参考図書】
「卵子老化の真実」 河合蘭
「不妊症・不育症治療」竹田省・田中温・黒田恵司
「生物試料分析:〈新技術特集〉AMH」西村和子
「臨床婦人科産科2021Vol.75No.1 p32-36」小林未央 岩瀬明

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