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産業保健職に知って欲しい不妊治療のスケジュール編

こんにちは!産業保健師・不妊カウンセラーのきりんです。

先日、産業保健職の集まる会で
「不妊治療のリテラシー」についてお話がありました。

そこには、沢山の方々が(Zoomで見る限り、90名近い)参加されており、興味関心の高さに嬉しくなった、きりんです🦒
※一緒にがんに関するリテラシーも話があったので、ただ不妊だけではないですが、、、、

さて、その会でも少し話題になっていた
「不妊治療は突発的な休みが多いのが大変辛い」
これは、本人も会社の人もお互いに、辛い。

前回の記事でも不妊治療と仕事の両立でネックになっていた
「通院回数が多い事」

そもそも、通院回数がなぜ多いのか、どんな事をしているのか

今日はそのお話をしたいと思います。

(1)不妊治療のスケジュール【スクリーニング編】

以前の記事でも書いたかもしれませんが、私は不妊検査を始める所から不妊治療である。と思っています。

そもそも、不妊治療の病院って初めに何をするのか?
ってあまり知られていないですよね。


ここでは、不妊専門施設での不妊検査の流れについてお話します。

あら、この図、、、学生時代に見かけたわ、、、あんまり好きな方いませんよね。
皆さんご存知!ピンクの点が基礎体温を示しております。

そう。女性には月経周期と呼ばれるサイクルが存在します。
そして、不妊治療や検査はこの周期に鍵を握られているといっても過言ではありません。(ホルモン動態の事は別記事でたっぷり語らせて下さい!)

そのサイクルに合わせて、出来る検査が異なります。


上記の図が分かりやすいので木場公園CLからお借りしました。
(全く回し者ではございませんが、有名なクリニックの1つです)

図を見てみると、
①月経2~3日目頃  ➁7~8日目頃 ③12~14日目頃  ④17~20日目頃
にどうやら検査があるようだという事が分かりますよね。

不妊の原因は、妊娠の成立を妨げるものを探していく事から始まります。
上記の①~④はそれぞれ「月経期」「卵胞期」「排卵期」「黄体期」と呼ばれています。


この4つの期間に1つでも問題があると妊娠の妨げになり、治療が必要になります。

この流れを作っているのが、卵巣から放出されるホルモンの為、
不妊原因の中の【内分泌因子】と言います。

それ以外に、【卵管因子】【子宮因子】があり、こちらは閉塞、狭窄、奇形や子宮筋腫などの疾患によるものが不妊の原因としてあります。

また、【男性因子】【頸管因子】というものを加えた5つが検査で分かる不妊の原因です。(それぞれについては、また別記事で!)
※因子の分け方は様々ありますが、今回は不妊・不育診療指針より引用


話がそれてしまいましたが、ここでお話したいのは
不妊の原因を調べるのには時期が決まっていて、検査だけでも結構な回数病院に行かないといけないんだという事です。(しかも、その時期を狙っていかないとダメ!)


因みに、初診は月経中じゃないとダメ?という質問が多いですが端的に、
《いつでも良い!思い立った時が吉日!》です。


というのも、上記を見てもお分かりのように、いつでもできる検査と限られた時期にしかできない検査があり、全部コンプリートするには、約1か月の時を要します。
周期の始まりを待ってたら、治療のスタートが遅れますし、そもそも月経のない方や稀発月経の方もおられるので、治療自体が始まりません。


(2)不妊治療のスケジュール【タイミング法編】

では、あらかた検査が終わり、さあ!治療開始!

となった時、どんなスケジュールになるのでしょうか?

まず、基本的なスタンスは、『目指せ!自然妊娠』です。

というのも、不妊症全体の21~27%、女性不妊症の30~47%が【内分泌因子】の中に含まれる【排卵因子】によるものなので、きちんと排卵するお手伝いさえすれば高度な治療をしなくても妊娠出来るからです。
(生殖医療ポケットマニュアルより)


高度な治療には、リスクも伴います。
いきなり、リスクも料金も高い治療は絶対にしません。

その観点から、最初はタイミング法と呼ばれる方法からスタートします。

タイミング法とは、読んで字の如く、排卵にタイミングを合わせて夫婦生活をすることです。

先程の図と同じようなものですが、上記がタイミング法のスケジュールです。(岡本ウーマンズCLさんより画像をお借りしております)

①月経中に薬を貰い
➁10日目頃に1回卵も発育を確認する。
③必要であれば、その数日後にまた卵の発育を確認。(必要な人多い)
 ⇒排卵しそうな大きさ(18~20㎜)になっていたらGO!
 ※この時、採血や尿検査でLHというホルモンを測り、排卵の準備が出来ているか確認することもあります。
※また、この日に排卵を起こすための起爆剤【HCG注射】(LHサージを起こし、排卵の手助けをする筋肉注射)を打つこともあります。
④黄体期のチェック(妊娠の維持に必要な黄体ホルモンの測定などをする)
※④は割愛するCLもあります。
また、卵の成長がゆっくりだと➁と③の間に何回か卵の発育チェックが入ることも、、、、

という事で、ファーストステップのタイミング法だけでも1か月に最低3~4回も病院に行かないといけないんです(泣)

※その殆どが月経サイクルの前半に集中しています。

そして、卵の成長は一律ではないので、受診のタイミングも目安です。
いつ卵が育ってくるかは分かりません。

また、排卵誘発剤(卵の成長を手助けする薬)には、内服だけでなく注射もあります。年齢やホルモンの状態によって注射の量は微調整され毎日病院へ注射の為に通う人もいます。

『臨床の両立支援では、この注射の回数を減らすために自己注射指導をし、自宅や職場で注射を打つことで通院回数を減らすという取り組みもしています』

■ここで一息【実は排卵日が一番妊娠しやすいというのは間違い?】■

上記のデータ。面白いですよね。実は、排卵日の2日前が一番妊娠しやすいんですって。これは、卵子の受精可能な時間が非常に短く、精子の受精可能時間が長いことが関連していると考えられています。
妊娠って本当に奇跡の連続なのですね。

(3)不妊治療のスケジュール【人工授精編】

正直な所、人工授精と言っていますが、ほぼタイミング法と通院回数や内容は変わりません。そして、妊娠率もほぼ変わりません。

少し妊娠率について見てみましょう。

上記は京野アートCLからお借りしました。
不妊症カップルにとって、人工授精の妊娠率はほぼ自然と同じ6~15%です

なぜか?下記が人工授精のスケジュールですが、ほぼタイミングとやることは同じで、精子を注入する日だけが追加になるだけなのがお分かりになるかと思います。

そう。やっていることがほぼ同じなのです。
精子の注入に関して、元気な精子を集めて注入するだけなので、男性側と子宮頸管因子に問題がないカップルは通常の夫婦生活とほぼ変わらないのが現状です。ただ、全くやらないよりは少し確率を高めることも表から読み取れるかと思います。
ですので、体外受精のワンステップ前に取り入れるクリニックが多いです。
(そもそも一般婦人科では、ここまでが限界の為、まずは自院でできる最大限の治療をしていると捉えるのが良いかもしれません)

人工授精がタイミングと違って大変なのは、精子を注入する日はフレッシュな精子を病院に持って行く事病院によって精子を受け付けてくれる時間が限られてしまい、朝イチの受診が必要になる場合が多い事です。

(4)まとめ

今回は、不妊治療のスケジュール把握を目的として、

不妊治療の始まりとタイミング法、人工授精について簡単に治療の内容をご紹介しながら、一般的な通院スケジュールについてご紹介させていただきました。

仕事をしながら、病院の開いている限られた時間にこの回数通院すること。
とても大変だという事
が少しでも知って頂けたら嬉しいです。

しかし、これは不妊治療の中でも【一般不妊治療】という段階、、、、

え、高度不妊治療(生殖補助医療:ART)ってこれ以上に通院するんですよね?
そして、なんだか色々痛みも伴うって聞きますけど、、、、

はい。そうなんです。

このシリーズ!
次回は、体外受精のスケジュールについてお話したいと思います!

【卵子の話】もしたい今日この頃のきりんです。

今回もありがとうございました!


【今回の参考図書】
「生殖医療ポケットマニュアル」吉村泰典監修
「データから考える不妊症・不育症治療」
竹田省、田中温、黒田恵司 編集
「不妊・不育診療指針」柴原浩章

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