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人の数だけ、まちの楽しみ方がある

西湘・・・西湘とは、神奈川県の相模湾沿岸部西の地域の総称。小田原市が中心都市として位置付けられる。(Wikipediaより)
初めて根岸さんの口から「西湘」という言葉が出たとき、即座にGoogleにかけた。
皆さんも好きなのではないでしょうか、西湘地域。小田原以外にも、箱根や真鶴、湯河原といったエリアが含まれます。
わたくし、出かけるのが好きで小田原には何度も行っています。海鮮丼をテイクアウトして海辺で食べるんですが、小田原の海辺は座りやすい。岩場がごつごつしてるから。
東京での疲れを癒したいときにふらっと出られる場所にあって、1日中海を眺めて、美味しいものを食べたら少し元気になっている。
それでも、それは私が知っている小田原の魅力の断片でしかありません。
小田原で生まれ育った根岸さんに、地元への「偏愛」を語ってもらいました。
(文:土谷優衣、影山莉央)
(語り手)根岸亜美さん・・・超帰省メンバーのひとり。小田原出身。早稲田大学教育学部地理歴史学科在学中、まちづくりブランディングと出会う。卒業後は広告会社へ就職。現在はプランナーとして大手企業でプロモーションに携わる。本業と並行し、西湘地方の楽しさをシェアしたいとの想いから「暮らしをそーぞーするツアー」を企画・実施。

「一般的な ”好き” から ”愛” へと変わったのは地元を離れてからでした」

私は大学入学と同時に東京で一人暮らしを始めたの。でも小田原からは遠いけど通える距離だから、親には実家を出ることを反対されていました。もともと地元は好きだったけれど、みんなと同じような「いいところだよね~」っていう程度の「好き」だったんだよね。大学を卒業して仕事をして、いつかは地元に戻るつもりではいたけど、「絶対戻りたい」って程ではなかったかな。

でも地元から1回離れるというのは大きいですよね。恋愛とか友達との関係と一緒なのかな、離れると大切さに気づくっていう。ってそうですよね。


うちの親はアクティブだったから、子どもの頃は土日はいつも外出してました。「今週はこっちの海」「今週はあっちの海が良く見えるカフェに行こう」みたいに。お父さんとふたりでいろいろなところに行きました。
地元を出て振り返ったときに、「街を楽しむ家族だったんだな」っていうふうに、自分の思い出に残ってましたね。

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初めて小田原ブランディングをした大学時代

高校生の頃は世界史が死ぬほど好きで、高校の世界史の先生になりたくて。でも受験して入った大学には”地理歴史学科”しかなくて。だからもれなく地理も勉強しなくちゃいけない。

最初はそれがいやだなって思ってたくらいなんです(笑)。でも大学では、「人の営みを地理的に」見ていくんです。私にとってはそれが新しくて、面白くて、実践的で。
そこに惹かれちゃって、ゼミも学位も地理で取っちゃった。


ある年、履修登録の抽選に落ちて、他の授業を探していたときにブランディングの授業を見つけたの。その授業では毎年テーマを変えてて。過去にはユニクロとか、芸人さんを対象にしていたり。
それが、その年の授業テーマが「小田原をブランディング」だったの。街のブランディングなんてテーマあるの?しかも小田原?!って。私のための授業だと思って取りました。

その授業で地元を根掘り葉掘り調べました。小田原をどう打ち出したらいいんだろうって、半年間の授業でメンバーと一緒にじっくり考える。広告会社の先生にも指導してもらって、市長の前で行ったプレゼンでは優勝しました。
「小田原のここはもったいないよね」「やっぱりここはいいよね」っていうのを本気で考えるきっかけになったのが、このときですね。

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地元を離れた自分だからこそ伝えられる、地元の魅せ方

社会人になってからも、何か地元を盛り上げることもできないかなって考えて。でも西湘には、地元を盛り上げる人たちがそれなりに多い。だから、自分で場所やコンテンツをつくるというよりも、一度地元から離れたからこそ分かる魅力や魅せ方っていう、入り口作りに特化しようって思ったんですよね。西湘には既にいろんな魅力的な要素がたくさんあるけど、それを編集して紹介していくっていう人はまだいないなって思ったんです。特に20代向けに。


そこで「暮らしをそーぞーするツアー」を始めました。

”この街を紹介したい。伝えたい。そして一緒に楽しみたい”
”無心で遊んでほしい。何も考えなくていい。最高の西湘と最高の仲間との出会いを味わい尽くしてほしい。だからこのツアーは旅程を公開しないししおりもない。何より次のことを考えちゃう状態であってほしくない。事前に行先の情報をネットで見てほしくない。ネットの情報はさまざま。真っ白で来てほしいから。だからツアー前に参加者の他己紹介企画がある。最高の体験には常に最高の仲間が不可欠。それには心を許し合う必要があるけれど、はじめましてでそんな関係になれることを目指すのだから属性から入る自己紹介してゆっくり打ちとける暇も、猫かぶってる暇もない。関係づくりのためのアイスブレイクは旅が始まる前から始まっている”
(暮らしをそーぞーするツアー@西湘 インスタグラムアカウントより引用)


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始めるまでは大変だった!私は考えるタイプだから、ベターよりもベストをやりたいという思いが強くて、構想しすぎちゃって。考えすぎてもキリがないし、ツアーの日にちを決めるところから始めました。考えれば考えるほど、なにがベストか分からなくなったから、まずは人を呼ぶところから始めようって切り替えて。
「暮らしをそーぞーするツアー」っていうタイトルも、いまだに(仮)って付けていて(笑)。それはベストではないって思いながら、3年が経っちゃった(笑)。


惚れたものをシェアしたい

自分が心から惚れ込んだものはシェアしたいってありませんか?自分自身が「本当に素晴らしい」と思うものたちを、嘘ひとつない自分の言葉でシェアしたいって思うんですよ。
私は親に、西湘のあちこちに連れていってもらったから、「西湘のいいところストック」を自分の中にたくさん持ってるんです。でもそれは世の中には全部伝わりきってないなって感じてる。そこがもったいないって思うんです。

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今西湘では、30代以降の方がたくさん活躍されているのに対して、20代はまさにこれからどんどん盛り上がるところ。20代の視点で「西湘のここがナイスだ!クールだ!」というモノを、同世代にシェアしたいなって。本気でいいと思ってるモノをシェアしたら、シェアされた側も絶対楽しめるんじゃないかって思ってるんですよね。

西湘はいろいろありすぎるんです。海も山も川もあって、海鮮も山菜も美味しい。梅干しやレモンも有名。都市でもあり、城下町でもあり、宿場町でもある。箱根や鎌倉も小田原も観光地として有名でしょ?おかず全部乗せみたいな街なんです。チョイスが多いからこそ、「何を推したらいいか分からない」っていうのが、何十年もの街の悩みでした。他の地域みたいに「これが名産です!」って絞るのが難しい。

でも、今の時代には合ってるんじゃないかと思ってます。これだけいろんなものがあるんです。人の数だけ楽しめる方法があるのが、西湘のいいところ。西湘はあなたにこたえてくれる。

趣味にしろ、生活スタイルにしろ、誰にでも応えてくれる環境に恵まれた街が西湘なんだっていうことは凄く伝えたいですね。

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地元をシェアする

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超帰省「地元愛シェアリング」っていうことばを大切にしてます。

今の時代は、都心や地方、どこにいても地元へ貢献できると思っていて。超帰省はそれを体現できる企画にしたい。超帰省アンバサダー(*)の中にもいろんな人がいます。例えば、普段は会社員として忙しい日々を送っている人。地元PRのきっかけづくりに悩んでいる人もいる。でもみんな「地元愛」っていうパワーはある。みんな地元が大好きなんです。そういう人たちに、超帰省を使って、地元に貢献してるっていう感覚を手にしてもらえればいいなって思ってます。

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意外と地元に貢献したいと思ってる若者は多いんですよ。
でもそれはなかなか可視化されない。
生まれ育った場所にずっといたら帰省っていう感覚もないし、一度離れたからこそ地元の良さが見えてくるっていうのはある。
だから「意外と地元を出た人も地元愛強いよ!」って思う。超帰省アンバサダーも、みんな地元を一度離れた人なんです。
超帰省が盛り上がることで、地元を離れた人たちが、生まれ育った場所に貢献しようと模索しているっていうことを可視化できればいいかなと思ってます。

超帰省アンバサダー(*):年1回以上の超帰省の実施と、活動PRを行うメンバーたちのコミュニティ。全国に散らばっており、年齢・性別・職業はバラバラ。地元が好きという共通点のもと、超帰省を盛り上げています。

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いろんなことにチャレンジできるのが今の時代のいいところ。だからこそ尻込みしてしまうことがあります。そんな私に、日々パワフルに進んでいる根岸さんがアドバイスをくれました。(影山莉央)


なにか新しいことを始める上で、絶対にやらなきゃいけない状態を作るっていうのが大事だと思う。まずは外側を決めて、自分を囲い込んじゃう。日にちを決めて、人を巻き込んで、引き下がれない状態にするの。
私もこんなに企画考えるのが好きで、こんなに西湘を紹介したいって思ってても、1年くらい踏み出せなかったんだよね。モチベーションがあったり、自信がある人のほうが「よりいいものを出したい」「みんなに評価されたい」って思うから、考えているうちに結局実施しないっていうほうに向かっちゃう。
一度行動に起こせば、その先には想像できない未来が待ってると思いますよ。描いた未来に向かっていくのもいいけど、予測できない未来も面白いって私は思う!「これやってみたらどうなんだろう?」っていうくらいで大丈夫だと思います。まずは1歩を踏み出すことが大事。最初は小っちゃく1歩出してみて、なにかあるから!笑

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(Photo by Chihiro Matsuda/ Haruka Gomi/ その他ツアー参加者の皆様)


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