06_文通_たわいもない話を。
久しぶりに、編集長と高校2年生・道前さんの文通を更新します。(1つ前の更新はこちら)前回の更新から2か月ほどが経ちましたが、ゆるく続けられるのが文通のいいところ。これからも自分たちのペースでやっていきます。
道前さん
こんにちは。お笑い、いいですよね。僕も大好きです。
イヤホンで漫才を聴きながら眠るくらい好きです(笑)。芸人がやっているラジオも好きで、アルコ&ピースのD.C.GARAGEって番組をよく聴いています。
道前さんが言うように、M−1って漫才コンテストってだけではなく、泥だらけの青春っぽくてグッときます。テレビで見る芸人はM−1とかの賞レースとか漫才大会で「勝った」人たちだと思うんですけど、「負け続けて」最後まで陽の目を浴びずに、芸人をやめていく人もきっとたくさんいて。
そういう芸人の日陰に焦点を当てた「火花」(又吉直樹・作)が何年か前に評判になったけど、僕はNetflixで配信されているドラマ版の「火花」もすごく好きです。
叙情的、情緒的、刹那的。そんな感情が溢れる作品で、映像の美しさと音楽の表現と登場人物の切なさが混然としています。
何人か、本物の芸人が出演していることでドラマにリアリティも増して、「この世界はノンフィクションなんじゃないか」と、虚構と現実すら混ざっていくような作品です。
主人公は最終的に芸人を辞めていくけど、その時に尊敬する先輩から言葉をかけられるんですね。実際言ったこととは少し違いますが、僕の解釈としては、“芸人という職業を引退しても、芸人という生き方はずっと続けられる”
っていうメッセージが込められていると思っていて。
芸人って人を笑わすことだけが純粋な目的だから、きっとテレビや劇場に出ることがなくなっても死ぬまで芸人なんですよね。すごくかっこいいなあと思います。
どん底にいる時に出会った趣味や友達、本当に尊い。自分がどんな状況でも、接し方が変わらない友達ってすごくありがたいなあと思います。そういう人が片手で数えるほどですが、確かに自分のそばにいてくれるということに励まされます。
僕は気分が沈んだり元気がない時は、お笑いを見る以外に、本を読んでいます。漫画、小説、エッセイのどれか、本棚からお気に入りを選んで飽きるまで。
道前さんは最近どんなことに元気をもらっていますか。
工藤大貴(5月21日、芝浦より)
工藤さん
お返事が遅くなってしまいました…。学校や塾のオンライン授業が再開しだして、日常がだんだんと戻ってきました。
休校期間中、ほんっとに勉強していなかったので、授業についていくのに必死です。来週末には期末テストもあるので頑張らないといけないんですが、なかなかそんな気にもなれません…。
マスクを着けて過ごすのもしんどくなってきましたね。学校が山の上にあるので、毎日マスクを着けて山を登るのが本当にしんどいです。
工藤さんのお手紙にあった「泥だらけの青春」っていう言葉、まさしくそうだと思いました…!話は少し変わってしまうんですが、数年前にめちゃイケの最終回で、ある芸人さんが「自分は学生のときにいじめられていて、いわゆる青春っぽいことができなかったけど、めちゃイケという番組を通して青春を経験できた」といったことをおっしゃっていて、すごく感動したのを覚えています。
毎週めちゃイケを見ていたわけでもなかったんですが、出演していた芸人さんやタレントさんが、めちゃイケをただの仕事だと割り切っていなさそうな雰囲気が伝わってきて、そんな居場所が作れるなんて、バラエティっていいなあ、テレビっていいなあと思いました。
芸人は死ぬまで芸人、って考えるとほんとかっこいいですね…。お金なんて関係ない!自分がやりたいことをして生きるんだ!なんていうと、あまりにも綺麗ごとすぎるかもしれませんが、やっぱり学生時代も社会人になってからも、自分の一番したいことをして生きていたいです。
高校2年生になって、私の学校では受験勉強に本腰を入れる子が多くなりました。きっとみんなは休校期間中も勉強を頑張っていて、段階的に受験モードに入っていったんだと思うんですが、私はうまくその波に乗れなくて、何だか私だけが取り残されているような気がします。
そんなに勉強を頑張れてすごいなあ、私も頑張らなやばいかなあと思う反面、勉強最優先の生活をしている子たちを見て、その子たちに失礼なのはわかっていますが、少し寂しさや空しさを感じてしまいます。
この感情の所以が、ただ単に勉強をしたくないからなのか、勉強に友達をとられてしまっているような感覚になっているからなのかは分かりませんが、何だか最近生きづらいです。
ですが、このことを学校の先生に話していたら、「焦ったらあかん。自分は自分やから。人に流されたらあかんで。」とおっしゃってくれて、だいぶ気持ちが楽になりました。
こうやって文字にすると、ありふれた言葉のように見えてしまうかもしれないのですが、すごくスッと心に入ってきて、自分の生きたいように毎日を過ごそう!という意思に自信を持つことができました。
言葉の良さってきっと、その言葉がどれほどかっこいいかとかではなく、言葉の形が、受け取る人の心に空いた穴にどれほどフィットするかで決まるんじゃないかなあと思います。そんな言葉を発信して、もっと周りの人の苦しさを和らげることができる人間になりたいです。
最近私は元気がないとき、平井堅さんの曲を聴いています。好きな曲を挙げ出すときりがないんですが、「君はス・テ・キ♡」の「内回りで追い越して足かけられつまづき膝すりむいても Try 砂をはらい立ち上がり獲物を探すんだ 髪振り乱して走ってる君もす・て・き」という歌詞がとても好きです。
ズルをした人の方が称賛されたりする理不尽な社会の中で、真っ当に努力する人を全肯定してくれるようなこの歌詞を聞くと、元気が出ます。何かに対して努力しているとき、その努力の意味や本質を忘れない人間でいたいですね。
道前結(7月5日、西宮より)
ありがとうございます。 列島ききがきノートの取材エリアは北海道から沖縄まで。聞きたい、伝えたい、残したいコトバはたくさんあります。各地での取材にかかる交通費、宿泊費などに使わせて頂きます。そして、またその足跡をnoteで書いていければ。