一緒に頑張った仲間がいる。
※こちらの記事は「聞き書き甲子園」事務局による連載となります。
(聞き手:聞き書き甲子園事務局 大谷)
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◎聞き書き作品づくりの思い出
大谷:取材後におこなう書き起こしや編集といった、作品づくりについても思い出などを教えてください。
↑ 名人を取材した後は、録音を聞きながら一言一句書き起こしを行ない、聞き書き作品づくりに取り掛かります。
たかぽん:作品づくりについては、全部大変だった、ということが最初に出てきます(笑)。自業自得なんですが、僕は直前になって一気に仕上げるタイプだったので、締め切りギリギリ、本当にギリギリでした。あとは、録音したデータを書き起こしたあと、どう編集すれば読み手にうまく名人の魅力が伝えられるか、当時の僕には少し難しいところもありました。
ようちゃん:私は当時パソコンが全然使えなくて、手書きで全部書き起こしたので、ほんとにすごく大変でした。ただ、一文字一文字書いたことで、名人の思いがより深く自分の中に入ってきたので、今となっては良かったな、と思っています。むしろ、名人の言葉がどれも良くて、作品としてまとめるにあたっていくつか削らなければならなかったのが、一番大変でした。
↑ 聞き書き作品は「聞き書き作品集」として毎年一冊の冊子にまとめられます。
うさちゃん:やっぱり書き起こしはみんな大変だよね…。私の場合は、取材の時やむを得ず、少し周囲がにぎやかな場所で話を伺った場面があって、録音に環境音がかなり入ってしまったんですよね。それで書き起こしの際、その部分は聞き取るのにけっこう苦労しました。
大谷:どのエピソードも想像するだけでも大変さがよくわかります。個人差はあれど、数分の録音でも書き起こしにはその何倍もの時間がかかりますからね。
↑ 夏の研修で行なっていた、グループ毎に聞き書き作品をつくる実習のひとコマ。水色のポロシャツを着ているのは学生スタッフのべにちゃんです。
◎学校生活との両立のリアル
大谷:そもそもみんな、普段の学校生活と並行して、作品づくりをしていたんですよね…?どんなふうに両立していたんですか?
うさちゃん:やっぱり平日は勉強とか部活があって、ほとんどできなかったです。なので私は土日にまとまった時間をとって、この日はやるぞ!って決めた日に、それはもう、めちゃくちゃ頑張る、という感じで進めていました。私の場合、書き起こしのような根気がいる作業は、30分とか、ちょっとだけやる、というのは難しくて、ある程度まとまった時間、本腰をいれて作業するというのを何回か繰り返しました。
たかぽん:僕はどちらかというと気持ちで乗り越えていました。というのも、こんな大規模のイベントに参加させてもらってるということが、自分にとってはすごく大きなことで、「聞き書き甲子園に参加している自分はすごいんだぞ」って自分を鼓舞していました。締め切りが近づいてきて、焦る気持ちもありましたが、先生や事務局の人、担当してくれた学生スタッフさんがサポートしてくれて、そういう誰かに相談できる環境があったのも大きかったです。
↑ 夏の研修にて、学生スタッフのたかぽん(右端の水色のポロシャツ)と、グループの高校生たち。研修はあっという間に終わってしまいますが、その後も助け合える仲間がきっと見つかるでしょう。
ようちゃん:私は1回目の取材に行ったあと、その書き起こしは次の取材までに絶対終わらせる、2回目の取材の時は書き起こしを名人に見せる!と決めて、計画を立てていました。なので2回目の取材までの期間は、高校の宿題は学校で全部片づけて、家ではもう勉強そっちのけで(笑)、夜の時間に毎日作業していました。2回目の取材が終わってからは、その分を取り戻すべく勉強を頑張って、作品の最後のまとめは勉強が落ち着いてから、また集中して取り組みました。
たかぽん:ようちゃん、めちゃくちゃえらいと思う。ほんとに。
うさちゃん:まじですごい。
ようちゃん:私のグループを担当してくれた学生スタッフさんが、そういうふうにした方がいいよって教えてくれたんです。それで、計画すればあとからしわ寄せが来ないんだってわかったので、やってみた、という感じです。
大谷:いやいや、計画をたてることももちろんですが、それをしっかり実践できるというのはすごいですね。アドバイスした学生スタッフも喜んでいると思います。
↑ 2019年度(第18回聞き書き甲子園)の学生スタッフたち。聞き書き甲子園の卒業生を中心に構成されていますので、何か困ったことがあれば気軽に相談してください!
◎フォーラム(成果発表会)について
大谷:では、そんな大変な聞き書き作品づくりを乗り越えたあと、活動の集大成でもあるフォーラム(成果発表会)はどんな場でしたか?
↑ コロナ禍で行なわれた第18回聞き書き甲子園フォーラムでは、オンラインで全国の高校生を繋ぎ、発表やトークセッションを行ないました。
ようちゃん:私は聞き書き作品を優秀賞に選んでいただいたので、表彰式登壇のため、みんなより1日早く参加したんです。そのとき、学生スタッフの皆さんと一緒に過ごしたりもして、準備の裏側が見れて面白かったです。あと、久々に同じグループの子と再会できたことや、一緒に表彰式に出るために名人が東京まで来てくれて、またお話できたのがすごく嬉しかったです。
↑ ようちゃんと名人によるトークセッションの様子。聞き手は、文筆家の阿川佐和子さんと、作家の塩野米松さんです。
べうさちゃん:私も、久しぶりに同じ班の子と再会できたのが一番でした。夏の研修後、連絡はとりつつも、それぞれで活動していて、最後作品を完成させて再会できたことが、お互い頑張ったねって感じで嬉しかったのを覚えています。
たかぽん:僕はもう5、6年前の話でちょっと記憶が薄れてきている部分もあるんですけど(笑)、それでも印象に残っているのが、グループのみんなで担当の学生スタッフさんにサプライズでプレゼントをあげたことですね。みんなで相談して用意して、フォーラム当日にありがとうございましたって渡したときに、その人がとても喜んでくれたのをみて、自分もみんなも頑張ってよかったな、って気持ちになりました。
大谷:みんなのつながりの深さを感じます…!
↑ フォーラム会場では、名人からお借りした道具や作品などを展示することもあります。
◎聞き書き甲子園の仲間
大谷:ちなみに、聞き書き甲子園に参加する高校生って、住んでる地域とか、学年とか、高校の種別とか、みんなバラバラだったと思いますが、お互いにどういう存在なんですか?
↑ 第18回聞き書き甲子園 参加者集合写真がこちらです。全国に仲間が出来ることも、聞き書き甲子園の魅力の一つかもしれません。
うさちゃん:横の繋がりは結構強く感じます。参加後も含めてですね。一人ひとり名人に取材して、頑張って作品を仕上げたってことが共通している、みんな頑張ってたことを知ってるからこそ、何かあれば相談もするし、支えあうという雰囲気があると思います。
たかぽん:同期もそうだし、サポートしてくれた学生スタッフさんもそうだし、みんなすごい良い印象しかないんですよね。なんでかって聞かれると難しいですけど、たとえ短い期間だったとしても、同じ目標を持って、みんなで一緒に頑張ったという経験がそこにつながってるのかなと思います。
ようちゃん:私も、普段の学校みたいな縦の関係性は全然ないな、と感じていて、歳が同じでなくても、何々ちゃん、と呼び合って一瞬で仲良くなれたこともありますし、参加期が違う人であっても、心を開くことができるのは、やっぱり聞き書きという共通項があるからこそなんだなって。普通の先輩や後輩、クラスメイトとは違いますね。
ーーーーーー(鼎談ここまで)ーーーーーー
卒業生3人の体験談はまだまだ続きます!
ありがとうございます。 列島ききがきノートの取材エリアは北海道から沖縄まで。聞きたい、伝えたい、残したいコトバはたくさんあります。各地での取材にかかる交通費、宿泊費などに使わせて頂きます。そして、またその足跡をnoteで書いていければ。